第二十話

 大陸暦100年7月25日、昼


 メアの計らいで、他の冒険者にメアが優しく(ここ重要)口止めをして、メアの屋敷にそのまま(強制的に)連行された。


「さて、説明してくれるんだろうな?」

「ああ。俺が別の世界から来たことは知っているな?」

「知っている。」


 それなら話が早くて済む。楽だ。


「そこである人……いや、人なのかな……?いや、まあそこはいい。ある人(?)に師事していたんだ。」


 そう。俺の父親は陽菜の父親と中が良かった。そして陽菜の家は昔から道場を継いでいた。

 小さい頃から俺はその道場に入れられていた。

 俺の師匠、陽菜の父親は常軌を逸していた。

 何故か斬撃を飛ばしたり急に別の所に現れたり……

 いや、その話は今は関係ないな。

 そして、そこで俺は色々鍛えられた。


「基礎体力を身に着けたあとは、色々な格闘技を覚えた。」


 当然、居合とかもだ。


「まあ、詳しく話すと長くなるけど、そんなとこだ。」

「……その詳しいところを知りたいんだが。まあいい。だいたいはわかった。しかし、驚いたぞ。ワイバーンの皮を砕いて足場を作るとは。」

「ああ、切り傷作ってたしな。それを広げた感じだ。」

「……いや、生身の体で砕くなんてこと、私にもできないんだが。」


 ……マジか。


「ま、まあ、頑張ったらああなったんだ。うん。」


 メアと、そして何故かリリィのジトーっとした視線が俺に突き刺さる。


「許してくれよ。信じてないんじゃないんだけどさ。身内でも、あまり手の内を晒したくないんだ。」


 これは、本当だ。


「むう……そう言われちゃうとこれ以上追求できないではないか。」


 スネたメアの顔、可愛いねぇ。じゃなくて!


「すまん。」

「なに、いいさ。それより、昼ご飯にしようか。明日旅立つんだろう?ワイバーンも倒したんだ。今日はもうゆっくりとしよう。あ、ちなみにワイバーンの肉は旨いらしいぞ?」


 それは楽しみだ。



 ワイバーンの肉はとても旨かった。旨いんだけど。


「とろけてて、食べてる感覚が無いんだよなぁ…」


 だから、満腹なのにどこか空腹を感じてしまう。


「でも、また食べたいなぁ。」

「そうね……。」


 陽菜も同意見か……ってすっごいとろけてるな。顔が。なんだろう。すっごいエロい。


「ユウタぁ……また獲ってきてくれぇ……」


 うわっメアもとろけてる。理性吹っ飛びかねないな。こりゃ。てか、そうそう出会わないだろ。ワイバーンに。


「お兄ちゃん……。」


 ……うん。なんだ。リリィだとあれだな。ベソかいてるようにしか見えないな。


「お兄ちゃん……。」


 おっと。リリィも読心術使えるのか。同じ台詞でも、心が震わされるぜ(恐怖で)。


 と、なんだかんだと他愛無い話をしていくうちに、外が暗くなっていく。


 この、召喚されてからの10日間、いろいろなことがあったなぁ……

 勇者だと思ったら違うし、追い出されるし、ゴブリン殲滅したかと思えばスライム一匹に殺されかけるし。なんか変な奴に誘拐されるし。

 向こうの世界じゃ絶対に経験できない事だらけだ。


 そう、物思いにふける。

 明日から長い旅が始まる。

 その為にも、今日は早く寝なければならない。

 俺達の旅はまだ始まったばかりだ!


〜fin〜

































 として次回に回したかった……何言ってるんだ俺?……早く寝たかったのに、メアがとんでもない提案をしてきた。


「さて、ユウタ。最後に一戦してみないか?」

「……は?」


 いや、ゆっくりするって……


「これは遊びの範疇だ。」


 メアはドヤ顔でそう言った。


「明日旅立つんだろう?その前に……さ。」


 ……そう言われちゃうと何も言えないな。


「……ハァ。わかったよ。」




 で、今俺は庭でメアと相対していた。

 ワイバーンを倒したことでレベルアップし、今の俺のステータスはメアとほぼ同等。日本刀を装備すれば筋力と敏捷で上回る事ができるが、あくまでも『格闘』だ。ここで抜いてはいけない。


「これで最後の戦いだ。まあ、最後くらいいいものを見せてくれよ?」

「ああ、わかってるさ。」


 流石にボコられたりはしない。筈だ。


「じゃあ、はじめ!」


 リリィの合図と共に、メアとの初めての戦いの火蓋が切って落とされた。

 え?初めてじゃ無いだろって?……今までのはどう見ても遊びじゃないか。じゃなくて、そんな覚え俺にはない。少なくとも俺は忘れた。


 ゴウッ


 そして、その合図と同時にメアが、周りの木や草を薙ぎ倒しながらこちらに突っ込んで来る。

 …………これ、直すの俺なんだよなぁ……


 そして俺は、メアの目の前に転移門を開く。もう一つはメアの後ろに。向こう側を向いた状態で。


 メアは転移門に気づくが、勢いを殺しきれずにそのまま転移門を潜り、向こう側に出てくる。こちらに背を向けて。


「……!?急に景色が……」


 そして、メアに重大な隙ができる!

 俺はメアの真後ろに転移した。


「今だ!【スパーク】!」

「!?クッ……!」


 メアに至近距離から電撃が襲いかかる。が、これをメアは回避する。……電撃って回避できるっけ?

 再度俺とメアが相対する。

 そこでメアが口を開いた。


「フッ。ユウタ。成長したな。」

「ああ。メアの厳しい修行のお陰でな。」

「ああいう厳しいのは私としては辛いものなのだがな。」


 いやいや、喜々としてやってたじゃないか。


「フッ。さて、魔法はもう使いこなせているな。後は格闘殴り合いだな。遠距離魔法は互いに使用禁止だ。かかってこい。」


 メアのセリフは裏があるからな……

 この場合は、『遠距離使用禁止』か……


「ならば……【ブラックドレイン】。」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ブラックドレイン

消費魔力:10/1秒

手を闇の魔力で薄く覆い、攻撃力を上げると共に体力と魔力を触れている間だけ吸収する。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 俺の手が黒く染まる。と、同時に、魔力枯渇を防ぐ為に【フェアリーソング】を無詠唱で自分にかけ続ける。

 これで、ブラックドレインの時間が長くなる。


「ほう……先程の言葉の意味を理解したか。」


 そうメアがつぶやく。


 俺とメアは同時に構え、そのままメアは魔力強化を自身にかけた。


 互いに動かずに、挙動を見つめる。1秒がとても長く感じる。

 そして……「クチュンッ。」という陽菜の可愛らしいクシャミと共に俺とメアは同時に……ズッコケた。そりゃそうだろう。緊迫した空気をクシャミ一つで壊されてしまったんだから。

 辺りを気まずい空気が支配する。


「「「「…………。」」」」


 ……はぁ……。


「メア、もうやめないか?なんか戦う気が失せちまった。」

「奇遇だなユウタ。私も同じことを考えていた。」


 さて、張本人陽菜は……うわ〜顔真っ赤だ。


「……さて、もう夜遅いし寝るとするか。ユウタ、ヒナ。明日から気をつけて行ってきな。ユウタ、連絡水晶1番は持っているな?」

「ああ。」


 しっかりアイテムボックスに入れてある。その時肉は捨てた。腐ってた。


「何かあったら連絡してくれ。飛んでいくからな。」


 この人なら文字通り飛んで来るだろう。


「まあ、何かあったらな。そっちも気をつけろよ。」

「うむ。そうする。」


 そして、四人で笑いあった。


「まあ、君達に危険など無いと思うが油断はするなよ。特にユウタを誘拐した奴らには気をつけろよ。ヒナ。彼らは勇者を狙っている。バレないようにな。」

「おう。わかった。」

「はい。」

「良い返事だ。」


 そういい、メアは頷いた。おばあちゃんみた……ごめんなさい。


「アリッサに馬車を頼んでおいたから、行く前にギルドに寄るといい。じゃあ、言う事も無いし、寝るとするか。」


 そう言ってメアは自室に戻っていった。


 リリィは……いつの間にか寝ていた。部屋で。いつの間に……。

 残された俺と陽菜は互いの顔を見たあと頷いて、それぞれの自室のベッドに入った。


 そんな平和な夜があけていった……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


名前:ユウタ ジンノ

種族:人間族、異世界人

ステータス


レベル60


体力…750/750

魔力…700/700

筋力…238(+50)

敏捷…240(+50)

耐久…246(+3)

器用…185

精神…250

意志…235

幸運…7


装備

神野優太の日本刀

革の鎧



スキル

鑑定Lv2

詠唱破棄Lv1


魔法

光魔法Lv1

 ヒール

 ハイヒール

 聖域サンクチュアリー

 フェアリーソング

 フラッシュ

 ホーリーソード

炎魔法Lv4

 フレイムアロー

 フレイムランス

 フレイムウォール

 ファイヤーストーム

 ファイヤーボール

 エクスプロージョン

水魔法Lv2

 記憶操作

 ウォーターボール

風魔法Lv2

 エアーカッター

 

木魔法Lv1

 ツリーカーニバル

 ドレインシード

雷魔法Lv2

 ライトニング

 サンダーボルト

 トールハンマー

 スパーク

時空魔法Lv5

 転移門

 転移

 アイテムボックス

 召喚魔法

 フィジカル・アクセラレーション

闇魔法Lv2

 ダークボール

 ダークエクリプス

 ブラックドレイン

 


複合魔術

 風+光:閃光弾

 

 

 

称号

異世界人


武術の心得


残金:558540


ギルドランク:D

チームランク:E

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