第十八話

 大陸暦100年7月25日、早朝


 ラヴィーヌ国周辺にある、とある森林地帯の中に、三人のある冒険者チームがいた。

 名前を『ヴォルフラム』といい、チームランクBのそこそこ凄いチームだ。


「ベラ〜、そろそろいいんじゃないのー?もう帰ろうよー」

「まだよ。チア。我慢してね。私達はこの問題を解決しなくてはならないの。」


 生活費のために。と付け加えたことは誰も知らない。

 このベラという人は、ギルドランクAの凄腕冒険者である。

 そしてチア。この人はギルドランクBのベテラン冒険者である。


「いいじゃないか、明日でもさ。」

「誰のせいで金がなくなってると思ってるのよトミー!」


 この『明日でいいじゃん』とダメダメな発言をした男はトミーといい、金を使ってしまった張本人でもある。ちなみに使用用途は、女遊びとでも言っておこう。


「だ、誰だろうねー」


 ちなみに自覚はしている。最も、こんなやつでもギルドランクAの凄腕冒険者なので、尚更質が悪いのだが。


「はあ……全く、チアからも何か言ってやってよ…………チア?またどっかに……」


 チアの返答が急に無くなったので、どこか迷子になったのかと振り向く。

 そこには確かにチアがいた。

 …………上半身が無くなった状態で。

 小柄な身体があったであろう部分からは、今はただ血が吹き出ているだけであった。

 そして、そのまま足はバランスを崩して倒れる。


「ち、チア!?」

「ベラ!動くな!」


 何かを察知したトミーが咄嗟に羽交い締めにして止める。


「……!」


 そしてベラも気づく。


「…………ベラは先に戻れ。俺が時間を稼ぐ。」

「でも……!」

「行け!このままだと国が危うい!早く伝えにいけ!」

「……っ!……絶対に生きてね。」

「ああ。」


 そしてその場からベラが去る。


「さて……なんとかして……」


 その瞬間、極細のナニカが亜音速で飛んでくる。

 それに気づけなかったトミーは全身を消し飛ばされる。

 そして………その延長線上にいたベラもまた、上半身だけとなり、しばらく這いずっていたが、そのまま息絶えた。


「……なんとか目撃者は全員消せたか…。」


 そんな声が、チームが全滅し、もう誰もいないはずの森林に響いた…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜優太視点〜


「さて、ヒナの冒険者登録をするか。」


 朝ごはんを食べていると、メアが突然そう切り出した。


「いや、急にどうしたんだ?」

「??だって、明日旅立つんだろ?」


 …そういやそんなこと言ってたな。忘れてたぜ。


「で、ヒナも一緒に行くと言っているし、冒険者登録をして、ついでにチームも組んでおけば楽だろうと思ってな。」


 なるほど。


「んで、いつ行くんだ?」

「朝ごはん食べたら早速行こうと思っている。ユウタも一緒に来いよ?」

「やだ。」


 やだよめんどい。


「来てくれるのか。ありがとう。」

「いや、俺断った……」

「来てくれるのか!ありがとう!」


 行かないという選択肢はないようだ。なら聞くなよ。



 そして、懐かしい冒険者ギルドに俺達は今いる訳だが…


「あ、ユウタさん!お久しぶりです!」


 アリッサ。相変わらず人いないんだな。


「アリッサ久しぶり。コイツの冒険者登録を頼みたいんだが。」


 そういって陽菜を指差す。


「…あ、はい。そうですか。ならこの紙にいろいろ書いてとっとと提出してください。」


 え、なに、アリッサさん急に不機嫌になったんだけど。


「あ、わかりました。」


 陽菜は気づいているのかな?と、陽菜の方を向くと……


「………(カリカリカリ)」


 黙々と書いていた。

 気づいていないようだ。


「はい。これでいいですか?」

「あ、えー……はい。これで大丈夫です。ヒナ、さんですね。ところで、ユウタさんとの関係は………まさか、恋人同士ですか?」


 おーおー、陽菜の顔が赤くなってくる面白いなぁ。


「ちちちちち違うわよ!?」

「ですよねー。ユウタさんにそんな甲斐性あるように見えませんもん。」


 おいアリッサ。俺をいじめたいのか。…ん?アリッサの機嫌が良くなったな。


「………それもそうですね。」


 おい陽菜。同調するな。

 あ、ついでに頼んどくか。


「あとアリッサ。ついでにチームも組んでおきたい。」

「……ヒナさんとですか?」

「ああ。」


 あれ?また少し不機嫌に…


「ならここに必要事項を書いてください。そして提出してください。」


 パパッと書いて渡す。


「チーム名は煉獄パーガトリー理想郷ユートピア、ですか。」


 カッコいいだろう!


「厨二ね。優太。」


 バカな!?


「かっこいい……!これでいいですか?」


 フッ、アリッサは解ってるな。


「それで頼む。」

「はい。ではこれでチーム登録は完了です。頑張ってくださいね。」


 こうして、後に名を轟かせるチーム『煉獄パーガトリー理想郷ユートピア』ができたのであった。


「んじゃ、帰るわ。」


 そう言うとアリッサは、


「あれ?ゴブリン倒しに行かないんですか?」


 お前の中での俺の立ち位置がよく分かった。


「いや、べつにゴブリン倒す必要もないしな。」


 と、帰ろうとした時に、面倒事の予兆がギルドに響き渡った。


「大変だ!西にある森から魔物が一斉に攻め込んできた!」


 とっとと逃げよう。そうしよう。としようとした時、


「なんだと…聞け!私はギルドマスター、メア=ディーネだ!今この場にいるものは全員西の壁の外に行け!職員共は全依頼を一時的に撤去し、来た人を西の壁へ連れて行け。いいか、国には絶対に入れさせるなよ!行け!」


 おお、これがギルドマスターの威厳か。じゃなくて!


(おいメア!なんで今すぐに指令だした!)

(ユウタが逃げる気がしたからだが?)


 ぐうの音も出ない。仕方無い、行くか。


「おい、陽菜。今から転移して範囲攻撃で減らすから、俺に掴まれ。」

「わ、わかったわ。」


 そういって陽菜は俺に抱きついてきた。

 …なんで?


「ま、まあいいや、【転移】。」




 所変わってここは西の壁の上。森の近くに土煙が見える。


「あれか……大群は」


 とりあえずは、他の冒険者が居ないうちに減らしておこう。


「【フレイムアロー】!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


フレイムアロー

消費魔力:20

指定範囲(直径100mの円形)に炎の矢を降らす。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 土煙の一部分に炎の矢が降り注いだ。が、魔力強化で目を良くして見たところ、避けているものも結構いる。これだと効率が悪いので、


「【ファイヤーストーム】!」


 いつだったかに洞窟にはなった魔法を放つ。


「うーん………」


 これでもあんまり効率よくないなぁ……


「どうするか……」


 隣では陽菜がフェアリーソングを自分にかけながら、さっき見たフレイムアローとファイヤーストームを連発している。

 もはや固定砲台だ。


 …………これならどうかな?


「今作った魔法だけど………【エクスプロージョン】。」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


エクスプロージョン

消費魔力:150

任意の範囲(直径1km)の周囲に、中の衝撃を外に出さない結界を張り、その中を爆発させる。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ドドドドド……


 耳んつんざくような爆発音が聞こえてくる。


「なんだなんた!?」

「もうここまで来たのか!?」


 お、冒険者達がようやくついたか。

残りは……数えられる程しか、しかも殆どが重症だ。これなら大丈夫だろう。

 ちなみに、死体はほとんど残らなかった模様。


【レベルアップしました。】

【レベルアップしました。】

【レベルアップしました。】

【レベルアップしました。】


 まあ、こんなに倒したらレベルも上がるわな。


 その間にもどんどん倒されていく。これはもう大丈夫。そう油断していたのが、間違いだとわかった時には既に遅かった。


「グルオァァァァ!」


 俺の前300mほどの位置に、ドラゴンのような魔物が出てきたのだ。


「!?か、【鑑定】!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ワイバーン Lv85


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 わ、ワイバーン、だと!?


 なんでここに……!

 ……!そうか。


「あの魔物らは、このワイバーンを恐れて、逃げてきただけだったのか……!」


 そのまま、ワイバーンは下を向いた。


 何をする気だ……?



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


名前:ユウタ ジンノ

種族:人間族、異世界人

ステータス


レベル54


体力…730/730

魔力…680/680

筋力…228(+50)

敏捷…230(+50)

耐久…236(+3)

器用…176

精神…240

意志…225

幸運…7


装備

神野優太の日本刀

革の鎧



スキル

鑑定Lv2


詠唱破棄Lv1



魔法

光魔法Lv1

 ヒール

 ハイヒール

 聖域サンクチュアリー

 フェアリーソング

 フラッシュ

 ホーリーソード

炎魔法Lv4

 フレイムアロー

 フレイムランス

 フレイムウォール

 ファイヤーストーム

 ファイヤーボール

 エクスプロージョン

水魔法Lv2

 記憶操作

 ウォーターボール

風魔法Lv2

 エアーカッター

 

木魔法Lv1

 ツリーカーニバル

 ドレインシード

雷魔法Lv2

 ライトニング

 サンダーボルト

 トールハンマー

 スパーク

時空魔法Lv5

 転移門

 転移

 アイテムボックス

 召喚魔法

 フィジカル・アクセラレーション

闇魔法Lv2

 ダークボール

 ダークエクリプス

 ブラックドレイン

 


複合魔術

 風+光:閃光弾

 

 

 

称号

異世界人

武術の心得



残金:558540


ギルドランク:D

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