第十六話

 大陸暦100年7月24日、お昼前


「で、これが陽菜のステータスだ。」


 陽菜とメアに、陽菜のステータスを見せる。え?知りたいって?前回のラストの方にあるから、それを見てくれ。………何を言ってるんだろうな、俺。


「ああ、陽菜。自分のステータスは『ステータス』と念じれば出てくるからな。これからはそうしな。」

「それを早く言いなさいよ!」

「それは置いといて、だ。このステータスは、陽菜でも異常だと思うよな?」


 言われなかったら悲しいぞ。


「ええ、異常ね。」

「…………ユウタ、これはどういう事なんだ?勇者を召喚しようとした王族がただの異世界人であるユウタを召喚し、そのユウタが勇者を召喚したという事なのか?」

「恐らくはそうだと思う。」

「では何故……」

「陽菜にとっては一昨日のことだから覚えてると思うけど、向こうの世界で魔法陣が出てきたのは、陽菜の足元なんだ。」


 十日前の事でも鮮明に覚えているんだ。陽菜が覚えていないはずがない。

 ああ、向こうとこっちの世界の時差みたいな話は、ご飯の間に既に済ませている。


「ええ、あの時は本当に……何でも無いわ、忘れて。」


 陽菜が何故か顔を赤くしている。カワイ……じゃなくて。うん、眼福眼福。


「つまり、俺というイレギュラーが召喚を妨害したことによって『勇者召喚』に、失敗した。と、こういうことだろう。多分。」


 まあ、俺もちゃんとは理解してないけどね。

 恐らくはこういうことだと思う。


「ふむ………そういう事か。なるほどな。」


 メアは理解できたようだ。


「…………わ、わかったわ。」

「まあ、難しい話だから、徐々に理解していけばいいぞ。陽菜。」

「だから!わかってるって!」


 うん。そうだねー。


「で、このLv??なんだが………」

「もうこれは。」

「チートで済ませよう。」


 何が悲しゅうて訳わからんモノ説明せなあかんのだ。面倒くせえ。


「で、俺も実は陽菜に聞きたい事がある。」

「?なによ。」


 これは、結構重要なことだからな…


「俺がいなくなってから、学校行っただろ?」

「ええ。行ったわね。」

「どうだった。」

「!………悲しまない?」


 何を心配してるんだ?こいつは。


「安心しろ。余程のことがない限り、泣いたりしない。」

「そう……皆、普通・・だったわ。優太居ないことを普通だと思ってるように、ね。あ、でも、何故か私の両親は覚えてたわね。」

「あー…あの人たちはもうなんか人間じゃないから、気にしちゃダメだ。」


 と、ここでついていけて無かったメアが聞いてくる。


「ちょっと待ってくれ。どういう事なんだ?」

「つまり、召喚された奴はこっちに来た時点で居ない扱いになる。と、こういうことだ。」

「じゃあ何故陽菜は覚えていたんだ?」


 …………なんでだろ…


「……ああ、そういや、種族のところ見てみるとわかる。」


 種族:勇者、異世界人


「?わからないぞ?」

「陽菜、人間だけど、人間じゃ無いんだ。」


 あ、メアがこんがらがり始めた。面白い。


「ちょっと待ってよ。私は人間よ?」

「そこん所も説明するから、待っててくれ陽菜。まず、陽菜は異世界で生まれた人間だ。だけど、こっちの世界では人間である前に『勇者』なんだよ。」


 …………まだ理解できてないな。


「陽菜、悪気はないから怒らないでくれ。メア。よく考えろ。こんなステータス持つ奴が人間か?」

「違うな。」

「な? 人間じゃ無いんだよ。」


 陽菜がプルプル震えてる。

 ……フォロー入れないと殺されるな。


「まあ、でも、『人間』である事には変わりない。ま、難しいこと考えちゃダメだ。面倒くさいからな。」


 さて、ここらでやめるか。


「難しい話はここで終わり! んな事より、メア、腹減った。」


 ………みんなの視線が痛い…


「ハァ………しょうがないな、ユウタは。リリィ、飯作るぞ。手伝え。」

「え、師匠。でも…」

「いいから来い。」


 リリィが引き摺られていく。

 そして台所に消えていった。

 俺も部屋に戻ろうとした時、誰かに袖を引かれた。いや、一人しかいないんだけど。


「あ、あの、優太、その…」

「どうした?」

「あ、ありがと!」


 そう言うと陽菜は走ってどっかに行ってしまった。

 うん。ほっこりした。

 と、また袖を引かれた。

 ……………誰!?


「私ですよ。」

「メイドさん!?」

「はい。ここには私も居たのですが、気づきませんでしたか?」


 そりゃもう。


「……フフッ。」


 そう笑うと、メイドさんはどこかに消えた。…………何がしたかったんだ。


 お昼ごはんは、シチュー(もどき)だった。少し焦げてた。

 ………覗いてたな?



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「さて、戦闘訓練だ。二日後に旅立つのだろう?それまでに私に勝てるといいなぁ?」

「今日勝つさ。」


 いつも通り、手の内が見られないように言った。


「…………ほう。遂に勝てる可能性を見出したか。」


 …………なんでバレるんだろう。


「顔見りゃわかる。本気で行くぞ。」


 ……顔に出やすいのかー…


「じゃーはじめー」


 リリィの、気の抜けるような開始の合図とともに、魔法を発動する。


「【フィジカル・アクセラレーション】!」


 これで時間は止まったも同然、すぐに決めにかかる……って。


「どうした?何呆けてるんだ?ユウタよ。」


 なんでメアは普通に動いてるの?


「対策が無ければ、時空魔法の有無で試合が決着してしまうではないか。きちんと対策はあるのだよ。」


 な、なにー!?


「まあ、とりあえず、一旦負けてから説明しようか。」


 バチッ…


 あっははー……これで勝てないのか、化物だなメアは。


「ほう……?あと5回ほど負けてから説明を受けたいと。」


 し、しまった………


「そこまでー。瞬殺だねー。」


 さて、お仕置きの時間だ。


 メアの声が、聞こえた気がした。


「グフッ」

「ガバッ」

「ラカマカタヤ!?」

「ホゲャアフォ!?」

「パンナコッタ!?」


 ………フザケてないからね。


「で、対策ってのはなんだ?」

「1つは同じような魔法を自分にかけること。もう一つは、相手に時間を遅くする魔法をかけることだ。さっきのは一つ目だな。で、難しい技として、魔法干渉がある。」

「魔法干渉?」

「そうだな、試しにファイヤーボールを撃ってみてくれ。」


 ………覚えてない。


「ちょっと待って今……作った。オーケー。」

「………お前も十分人間やめてると思うぞ。」


 あんまりだ。


「まあいい、やってみろ。」

「いくぞ…【ファイヤーボール】。」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ファイヤーボール

消費魔力:5

火の玉を対象めがけて放つ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 スカッ


 ……あれ?発動しない?


「これが魔法干渉だ。まあ、ほんの一握りしかできないがな。」


 ドヤ顔ですねありがとうございます。


「これは、凄いな。」


 まあ、凄いとは思うので言っておく。断じてだ。断じて怖いわけではない。


「ふふん。」


 機嫌が良くなった。

 ここで、陽菜が、


「ねえねえ!私にもファイヤーボール撃ってみて!」


 などと言いよった。


「……はあ?」

「いいから!優太!早く!」


 はあ……


「いくぞー」


 そいっ。て、あれ?


「やったー!出来たー!」


 ………………勇者の力の一片を見た気がした。

 隣のメアとリリィも、呆気にとられている。俺らの心が一つになった。そんな気がした。


 陽菜は、十分人間では無いと。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


名前:ユウタ ジンノ

種族:人間族、異世界人

ステータス


レベル50


体力…670/670

魔力…610/610

筋力…210(+8)

敏捷…215

耐久…218(+3)

器用…178

精神…220

意志…210

幸運…7


装備

アイアンソード絶

革の鎧



スキル

鑑定Lv2


魔法

光魔法Lv1

 ヒール

 ハイヒール

 聖域サンクチュアリー

 フェアリーソング

 フラッシュ

 ホーリーソード

炎魔法Lv3

 フレイムアロー

 フレイムランス

 フレイムウォール

 ファイヤーストーム

 ファイヤーボール

水魔法Lv2

 記憶操作

風魔法Lv2

 エアーカッター

 

木魔法Lv1

 ツリーカーニバル

 ドレインシード

雷魔法Lv2

 ライトニング

 サンダーボルト

 トールハンマー

 スパーク

時空魔法Lv5

 転移門

 転移

 アイテムボックス

 召喚魔法

 フィジカル・アクセラレーション

闇魔法Lv2

 ダークボール

 ダークエクリプス

 ブラックドレイン

 


複合魔術

 風+光:閃光弾

 

 

 

称号

異世界人

武術の心得


残金:558540


ギルドランク:D

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