僕は9ボルト
大友 鎬
プロローグ
「スタンブレイド!」
L.E.D.から射出されたミクロの箱を握ると、9Vスパークはそう叫ぶ。
箱から変形したスタンブレイドを握り締め、そのまま目の前の怪人に切りかかっていく。
切りかかられた怪人はエアマルチプライアー――羽のない扇風機のような腕を前に出し、それを受けとめる。
エアマルチプライアーの両腕に、ボックス扇風機の胴体。左右に首を振る量産扇風機の顔。それが怪人――扇風機人グルマワールの容貌だった。
「そんなの効かないグルマー!」
スタンブレイドを受けとめたグルマワールはそのまま背中についた、天井に設置されているような囲いのない扇風機を回転させ、空を飛ぼうとした。
「無駄っ!」
9Vスパークは吼え、スタンブレイドのスイッチを入れる。フランベルジュのような波打つ刃に電流が走り、それがグルマワールへとほとばしる。
ほとばしった電気が、グルマワールを構成する扇風機へと感電。電子回路のコンデンサなどが高電力によって過負荷となり、グルマワールはショート。
そのまま倒れる。
爆発はしない。
――世界には八百万の悪の組織が存在する。
だが、陰があるところに光があり、光があるところに陰がある。
正義と悪は表裏一体。
そう、世界には同時に八百万超の正義の味方が存在する。
9Vスパーク。
彼もまた、正義の味方だ。
変身するのは吾妻光輝。
ふとしたきっかけで、9Vスパークへと変身することになった高校生だ。
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