ホノリア
「アディー、今まで俺達を騙していたのか! 一緒に旅をした仲間なのに何で……」
紺色の通年服にネクタイを締めたアディーは上司と二人で来ていたが、僕の剣幕に恐れをなしたのか、その場から数歩引き下がった。
「ご、ごめんなさい」
「パリノーと違って違和感が全く感じられなかった。シュレムの幼馴染みとして心から信用していたのに」
アディーは両手で顔を隠して泣き崩れてしまった。隣の真面目そうな切れ長の目をした上司にたしなめられる。
「私、確かに無断でビデオ撮影していたけど……ひっく! あなたの華々しい活躍を記念するために……ズーッ! 記録しておいて欲しいと頼まれていただけなのよ。まさかこんなことになるなんて……」
……彼女は本当に巻き込まれてしまっただけなんだろう。まだ短い付き合いだが、言動に裏があるようには思えない。
「アディー……今ので分かったよ。説明は十分だ。もう責めたりしないよ。すまなかったな」
「ここから出られるように努力してみるけど、B級奴隷と同様の扱いになるのは避けられないわ。このケプラー22bで秩序を保つためには、男は奴隷の身分である条件が必ず必要なの」
「そうか、そうなのか……」
「いいニュースもあるの。スケさんとカクさんもすぐ捜査線上に挙がったけど、あの奴隷長のゴールドマン教授に保護されていったわ。ホントは逮捕・捕獲予定だったのに、オカダ君のコンタクトレンズを調査する見返りに教授が回収していったらしいわ」
「何をするつもりなんだ。それにナノテク・コンタクトを使いこなすには特別な訓練とコードが絶対に必要で、解析はおろかコンタクト・ドライブシステムにアクセスなんて、とても無理なレベルだぜ」
「教授が何を考えて行動しているのか分からないわ。私も警察官という立場から、あなたにこれ以上の情報を与えることを許されていないの。ごめんなさいね」
「ありがとう、わざわざ色々伝えに来てくれて」
「どういたしまして」
アディーは、ムスッとした表情の上司に軽く会釈すると、一緒に留置場を立ち去った。
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