アガーテ
黄土色の埃にまみれた車で直接、ラスボスのいるケプラー22b総督府まで向かう算段を立てる。
オーミモリヤマ市内を改めて観察すると、他のコロニー都市と比べても上品で落ち着いた街だったんだ。再び僕とスケさん、カクさんの最初期メンバーで市内をうろつく事になろうとは。
植民惑星査察団はKR線の高架向こうに霞む、ケプラー22b総督府を見据えた。
「スケさん、そろそろ運転を代わってくれ。カクさんには無理だろうから」
「ええ、オートマチックのCVTよね」
オーミモリヤマ市民ホール前の路肩に停車する。車外に出たスケさんはモデルのようにTシャツを被って着た。歩くだけで人々の視線を集めるとはね。
「いきなり運転なんか、できるのかよ?!」
後部座席のカクさんはちょっと不安そう。
「ふふ……だてに100年も生きてないわよ」
アクセルとブレーキを踏み間違えた。もしDレンジだったら前を歩いている着物の婆さんは、お墓の中に入っていただろう。それでもケプラー22b総督府に着くころには立派に乗りこなせるようになっていた。
「総督府周辺は車の乗り入れ禁止、駐停車禁止です……」
黒ジャケットに白ライン入りのズボンをはいた近衛兵が汚れた営業車の行く手を阻む。
「打ち合わせ通り、ここからは俺一人だけで行く。そこの荷物をくれ。後はよろしく頼むぜ!」
ケプラー22b総督府は、その名が語るように各コロニー都市を統べる、この惑星の中枢機関である。名のある建築家による四角錐の台形ピラミッド型のデザイン。下層は時計台付きの前時代的で古風な石作りだが、上階に行くにつれてガラス張りの幾何学的構造になっていく未来的コンセプトの説明しがたい外観だ。
総督府の門前で、あっという間に銃剣で武装した近衛兵に囲まれた。アイロンを当てたばかりのような折り目正しい制服から漂わせる清潔感と威圧感。それに女性とは思えないほど体格のいいメスゴリラばかりを揃えていやがる。縛られはしないものの半分拘束されるような形で建物内に連れて行かれた。
僕は前後左右、衛兵に囲まれながら応接室まで移動する。通路では、小奇麗な奴隷の男達が掃除にいそしんでいた。
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