イルマ
「このヤドカリ野郎! オカダ君を放せ! 鍋にして食っちまうぞ!」
助けに来たカクさんが飛びかかり、僕を締め付けるハサミに噛み付くが、あっさり牙が折れたようだ。カクさんも他方のハサミで尻尾を掴まれてしまった。
「わわわ! 放せ~!」
そのままヤドカリの口元まで運ばれたが、アニマロイドの人工素材は不味いと判断されたのか、地面にポイと捨てられた。
「……! カクさ~ん!」
腕を挟んだ万力のようなハサミを辛うじて、こじ開ける刀は今にも折れそう。
スケさんも相棒がやられた姿を見て、唸り声を上げながら加勢する。
「オカダ君、何とかがんばって! カクさんもまだ生きてるわよ」
カクさんの返事が遠くから確かに聞こえた。
「そう簡単にくたばるか! ……俺なんか食ってもマズいっての!」
スケさんは上手くヤドカリの注意を逸らすように腹部の無数の触手腕に爪を立てて噛み付きまくる。
一瞬、腕を締め付けるパワーが少しだけ緩んだ。すかさず背中に回したAK-47自動小銃の弾丸をハサミの関節部に数発叩き込む。左腕はちぎれる前に何とか外せたが、皮膚が裂け骨にひびが入ったかもしれない。
「ちょっとー! どいてーっ!」
フルオートで走行中だったはずのスタリオン高機動車をマニュアル操作するのは、何とあのシュレムだ。車なんか運転した事もないはずなのに、すばらしい勘の持ち主なんだろう。
サバクオニヤドカリの住み家の殻に車ごと体当たりすると、薄い殻は地滑りのように半壊し崩れた。
……意外と脆い構造だな。殻の中はアワビの貝殻の裏側のような虹色の滑らかな空間で、何とも言えない不気味さを醸し出していた。
それはそうと車内の女の子達は大丈夫なのだろうか……すごい大きな衝突音がした。岩に激突するようなもので、そのショックはハンパないはずだが。
スケさんとカクさんが無事を確認しに走った。どうか全員無事でいてくれ。
連携攻撃が効いたのか、やっとのことでヤドカリは追撃を放棄した。何だか周囲も一斉に弱腰となり、オアシスの方へと撤退し始めたようにも見える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます