コロニス

 男奴隷解放宣言……実際アマゾネス達にはどう感じたのだろうか。シュレムやアディーはどちらかと言うと保守的だ。ここは新世代に訊いてみよう。


「ボクは父のヒコヤンの事を尊敬している。男女は同権であるべきだ」


 ブリュッケちゃんは、相変わらずイイ子だね~。こんな娘が欲しいよ。


「ん~……奴隷制度なんか、なくしちゃってもいいんじゃない? 何だかねぇ~、男がかわいそうだし。ていうか男も女並みにがんばってカッコよくなって欲しいよ、マジで」


 今日も制服がよく似合うマリオットちゃんは、黒髪ロングヘアーをいじりながら皆の前でそう言ったのだ。


「若い世代はこう言ってるぜ! どうするビルショウスキーさん?」


 僕が湖賊のリーダーに向かってニッコリすると、彼女は小馬鹿にするように鼻で笑った。


「ふん、どうせ自分に都合がいいように無理矢理言わせてるんだろ! どうやって手なずけたんだい?」


 ……この派手女め! 色々と、ひねくれていやがるな!


 シュレムとアディーはノーコメントだったが、奴隷解放について一体どう思っているのだろうか。アディーは警官という立場から、表向きは反対の立場を取らざるを得ないと思う。シュレムは僕とのやり取りから考えて、心が揺れ動いているのは確かなのだが……。

 ちなみにパリノーには、はっきりと反対と言われてしまった。



「おい、スケさん・カクさん。あれを……」


『はは! オカダ査察官』


 僕はビルショウスキー一家に二、三日分の食料を分け与えてやった。受けた傷もできるだけ治療し、医薬品も置いて行く事にした。


 メガネと名乗る湖賊の一人は、医師免許を持っていない闇医師であった。B級奴隷として生まれたが、隠れて女以上に死ぬほど努力し、医学を独自に学んだらしい。当然デュアン総督から迫害される身となった。そして辺境にまで逃げ回り、湖賊の一員となるまでに落ちぶれたのだ。


 メガネの医学的知識と経験、治療技術の高さは看護師のシュレムでも舌を巻くレベルだった。

 スケさんに襲われた時に受けた右腕の傷も、左手で器用に自己治療した後、何と仲間の傷の治療まで始めたのだ。


「メガネさんは内科から外科まで幅広く手掛けていたみたい。ここまでデキる人は女でも中々いないと思うよ」


 シュレムはメガネの医師としての腕を高く評価した。


「いや、それほどでも。あんた達の医療器具と薬がいいんだよ」


 Dr,メガネは額の汗をハンカチで拭うと、謙遜して恥ずかしそうな表情を作る。



「ひひひ、看護師さん……アンタいい尻してるなぁ」


 チビデブオヤジは全身打撲の治療中、シュレムのお尻を撫でて更に打撲を増やしたのだ。まるでカクさん並みにスケベ野郎だ。


「ん? オカダ君、オイラに何か言ったかい?」


「いや、何でもないよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る