ヒルダ

 スタリオンより出撃してから、凄まじい連続射撃の的になってしまった。すぐ目の前の着弾に、足がすくんで転びそうになる。ちょっと出るのが早すぎたが、もう後の祭りだな。

 スケさんとカクさんにはリーダーのビルショウスキーを捕捉するように指示を出しているので、援護は基本的になしである。

 ガソリンスタンドの柱に身を潜めながら、徐々にパリノーが隠れているトイレに向かって前進する……薄い扉の前までくると前触れもなく内側から発砲があり、もう少しで撃たれそうになった。


「パリノー! 撃つな! 俺だ俺!」


 ガスマスクを外して大声を出すと、パリノーは自ら足でドアを蹴破った。ガタガタと震える肩にステアーAUGを握り締め、足元には空薬莢が大量に散らばっている。


「どうしてここが分かったの?」


「それより一旦、車に戻ろう。こんな所にいても湖賊に捕まるのは時間の問題だぜ……」


 その時ちょうど、湖賊の一人が盛大にガラスを割って室内に侵入してきた。

 ずんぐりむっくりとした黄ヘルメットの男だ。


「ぐがぁ! その女は俺の物だ!」


 撃ってこないだけマシだったが、男はパリノーの胸を背後から鷲掴みにした。更にカーゴパンツの細いベルトも引きちぎり中に手を入れ、いやらしく弄ったのだ。


「! ! !」


 声にならないパリノーの叫びは、怒りのキックと化してデブオヤジの股間にまともに入った。黄色いヘルメットが宙を舞う。


「ぶぶぶ……」


 湖賊のオッサンは無言で股間を押さえたまま、息ができないほどの苦しみを抱えて床に沈んだ。何だか見てる方が痛いな。


「こいつの武器を奪ってしまえ」


 パリノーと協力してオッサンをボコボコに袋叩きにした後、AK-47自動小銃も奪ってやった。


「ふう~ ……うわ! オカダさん! 急に目がしみて開けられなくなった! 痛い! 何も見えないよ」


 やっと催涙ガスの濃度が上がってきたのか。

 僕はパリノーを背中に抱えると、急いで道路まで出る。煙幕の濃度も上がって遠くが見通せなくなっていた。

 それでも何とかスタリオンまで帰還すると、合図して彼女を車内に押し込む事に成功したのだ。アマゾネス達から歓声が上がったのは言うまでもない。

 フルオート運転でスタリオンを安全圏まで脱出させると、僕はAK-47を手に煙幕の中に一人引き返した。……湖賊どもと一気にケリを付けるため。

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