アブンダンティア
強気で狡猾、ワイルドな美しさを持つビルショウスキーは、廃ビルの路地から携帯端末で若い方の兵隊くずれに訊いた。
「あの車は何だい? 結構な火力があるじゃないか。デュアンの軍隊は、あんなのを持ってたのかい?」
「いえ、新型かもしれません。でも単独なら制圧可能ですぜ」
黄メットのデブが興奮して路地まで入ってきて、汗まみれで状況を報告する。
「若ぇ美人な女が、ガススタの方に逃げて行きましたぜ! その後、何かデカい犬みたいなのが続けて車から飛び出てきて、どっかへ行きました」
「犬? 何言ってんだいアンタ」
「いや、本当ですぜ。 へへへ、女は俺がいただきますよ」
埃と煙でかすむ地上。湖賊達は統率が取れているようで、適度に散開した。
湖賊のメンバー、蛇顔の男はAK-47のマガジンを交換すると、サングラスをかけて隣の漁師風の男に声をかけた。
「ヒヒヒ……見たか? 車内にはカワイイ学制服の娘がいたぜ。それに白衣のナースもだ。俺の制服コレクションが更に充実するぜぇ……血で汚さないように気を付けて脱がせないとな」
「お前、本当に目がいいな。俺は女よりやっぱ車だ。最高にクールでしびれるぜ」
「そういやお前はボーイズラブな奴だったな。興味のない女より車にぞっこんかよ……変質者め!」
「てめえに言われたかぁないぜ」
瞬発力に優れるスケさんが、市役所の窓に陣取っている理知的眼鏡男に背後から忍び寄り、音もなく襲いかかった。
「うわぁー! 右手が……助けてくれ!」
「止めろ! 俺まで撃つな―!」
この場にいた若い兵隊くずれに眼鏡男が叫ぶと、一瞬だが兵隊くずれはAK-47のトリガーを引くのを躊躇したのだ。次の瞬間、今度はカクさんが兵隊くずれの首根っこに食らいつき締めあげる。
「ぐぐぐ……」
兵隊くずれは、カクさんの顎を左手で掴んで床に倒れると、右手の銃を暴発させた。
「今、銃声がしたわ。何とか二頭を助けられないの?」
シュレムが銃を手に取った。
「今、外に出ると狙撃されるぞ……しばらくこのままだ」
……どうする? パリノーを見捨てて、この場から逃げるか?
僕は必殺トール・サンダーの使用を刹那に考えたが、強力すぎて使用できない歯がゆさを感じたのだ。パリノーがどこに身を潜めているのか分からない今、衛星軌道上からのレーザー攻撃は彼女の命を脅かす。
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