ソフロシネ

 ホテルの予約を終えた後、青ざめた顔のまま僕は、スタリオン高機動車に戻ってきた。するとスーパー銭湯の入場口から、湯上りでピカピカになったアマゾネス達に混じり、ホカホカの茹でオオカミとなったカクさんも出てきた。

 スケさんは不思議に思ったのか、訊いてみるのだ。


「あらら? 何でカクさんも一緒に? オーミチャンポンを食べに行ったはずじゃなかった?」


「いやぁ……食欲をなくしてね。代わりに風呂に入る事にしたんだ……」


 

 濡れた髪がまた色っぽいシュレムは、意味ありげな質問を投げかけてきた。(ここでも白衣……)


「オカダ君は、今までずっと何をしていたの?」


「何って……スケさんと今晩泊まる宿の予約に行ってたんだが」


「ふう~ん……」


 意外と、それ以上は追及してこなかったが、共犯の疑いが掛けられている事は明白だった。いやだね~、確かに見ちゃったけど。



 

 ホテルはオーミヒコネ城が見える結構いい部屋を選択した。車での移動距離も大した事がない。

 ルーフで夜風に当たって、湯あたりを冷ましているカクさんから脳内通信テレコミュが入った。


『オカダ君、スケさんが戻ってきたのは分かるが、少しは助けてくれよ』


「すまない。スーパー銭湯のセキュリティを元に戻したり、パニックを鎮めるのに忙しかったのだ」


『それで……ある意味、命がけでゲットしてきた露天風呂の映像記録は?』


「あれから色々と考えたのだが……」


『まさか……』


「そのまさかだ。何だか、お前を含めて彼女の裸が他人に見られるのが……衆目に晒されるのがイヤになってきてな」


『晒すつもりなんて、毛頭ないよ……彼女って誰の事だ?』


「誰ってはっきりとは言えないが、彼女らの尊厳を傷つけるような……イヤがりそうな事は、止めとこうぜ!」


『映像は消去しちまったんだな』


「ああ、全部。きれいさっぱりと全て」


『オカダ君らしいや。好きな人ができたんだね』


「君のおかげで、一生忘れえぬインパクトのある映像が見られたよ。ちょっと大げさかな?」


『一回こっきりだけどな。だが、これで俺達の心の中で永久に輝きを放ち続ける幻影へと昇格した訳だ』


「表現はカッコいいけど、動機が不純すぎるな」


 男達の宴は、青春時代の苦い思い出のように爽やかで、ちょっぴり切ない印象を残して終わりを告げた。

 だが、カクさんが内に秘めている湧き立つマグマのような底知れぬエロパワーは、汲めども尽きぬ無尽蔵を思わせる。これからどうなる事やら……。


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