ムネモシュネ
大して時間もかからず目的地には着いた。無人の時に一度来たことがあるオーミモリヤマ市役所である。別に何という事もない、至って普通の建物だ。
地球人の男が来るという情報が通達されているためか、役所内でのオバ様達の好奇の視線が妙に痛く感じられる。メイクがすごく濃ゆくてステキ!(皮肉)
二人と二頭は、案内された二階の応接室にさっさと逃げ込んだ。シュレムは白衣のままだが、良いのだろうか……まあ、ケダモノのアニマロイドが二頭もいるし、そこの所はかまわないんだろうな。
……ほどなく姿を現したオーミモリヤマ市長は、若くて美人な女性だった。
栗色の髪に碧眼を眼鏡の下に覗かせる。綺麗だなぁ、北欧のゲルマン系かな? 本当にケプラー人は美女ばかりだなと感心する。見た目だけの判断だが、シュレムと年齢はそう変わらないんじゃないかと勝手に推測する。ぶっきらぼうな彼女と違い、物腰が柔らかで終始笑顔を絶やさず、何だかふんわりとした大人の雰囲気を醸し出すのはいいな。
友好の印に彼女と固い握手を交わした。幸いなことにマスコミ関係者は呼ばれていない。
ミューラー市長は、知的な眼鏡美人だが、この若さで市長にまで登り詰めるとは……見かけによらず、したたかで有能なんだろう。
「……あなた方がここに来たという事は、月面に設置されたワームホールゲートが30年ぶりに稼働したという事かしら」
さすがはミューラー市長。的確に状況を把握しておられるようだ。僕はネクタイの歪みを直した後、挨拶もそこそこに促されるままソファに座って答えた。
「おっしゃる通り専用プラントにて約30年かけて、やっと反物質が貯まったのです。巨大宇宙船をワープさせるには想像を絶する瞬間発電力が必要なのですが、月面の対消滅発電所は予定通りの出力を発揮したようです」
スケさんも畏まって答えた。
「日々技術革新が進んでいるので予定より早かったぐらいです。ただ昔と違い予算不足で“トゥールビヨン発電所”のプラントは老朽化し、規模は縮小の一途をたどっているのが現実ですかね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます