エウノミア

「あの巨大生物も、かば焼きにして食ったら意外に美味いかもしれないぜ!」


 カクさんが信じられない。あの気味の悪い黒太チューブに食欲を感じるとは!


「黒くて細長いというだけでウナギを連想するのはよせ」


「では、泳ぐ100メートル級のチクワだと思えばいいのだ」


「思ってどうする……」

 

 カプセルの中で、料理法をあれこれ考えるカクさんには呆れた。


「確かにもし、食用にできるのなら、開拓移民の食糧問題は一気に解決できるかもね」


 うそだろ、スケさんまで……。僕は腹が減っても、あれは絶対に食わないぞ。きっとゴムタイヤみたいな味がするに決まっている!


 興奮冷めやらぬまま、宇宙飛行は終わりを告げようとしていた。カプセルから二頭が飛び出し、揃って伸びをする。ベンチャースター号を湖面に静かに着水させ、できるだけオーミモリヤマ市に近い岸に向かわせよう。ビワ湖岸は見渡す限りの赤茶けた砂浜で着岸には御誂え向きだ。

 朝日の眩しさに順応する頃、お馬鹿なアニマロイドはいきなりシャトルの天井ハッチを開放した。


「おいおい大丈夫なのか。お前達と違って俺の体の造りは、とてもデリケートなんだぞ」


「あら、平気よ。事前に船内を同環境に設定しておいたから」

 

 スケさんの言う通りケプラー22bはマスクなしで自然に呼吸できる。酸素濃度は地球より若干高いらしいが。……しかも暑からず寒からず、大体セ氏22度ぐらいの温暖な平均気温だ。


「ううむ……にわかには信じられん」

 

 宇宙服を脱ぐのにも、ひと手間かかり時間を要するのだ。その間に微速前進するシャトルを砂浜に乗り上げさせよう。そのうち船底に腹に響くような鈍い振動を感じた。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る