アストラエア

 モニター画面を拡大し、雲の隙間をよく観測するとオーストラリア大陸に似た歪な形をした陸地が、申し訳程度に存在しているのが分かる。後は細々とした島嶼が散らばっているに過ぎない。カクさんが意気揚々と言う。


「あれが植民惑星の拠点、中央大陸か……開拓移民が建設した首都もそこにあるのかな? 屯田兵募集中だったりして……ひょーっ! 待ってろよビキニの処女たち」


「おまえオオカミだろ……それにアニマロイドだろ。何で人間様に欲情しているんだ?」


「ええやんか~! はよニオイ嗅ぎたいわ」


「しかも時々関西弁になるのは、なんでやねん?」


「主に関西地方で三匹の子豚の家を吹き飛ばしたり、七匹の子ヤギを騙したり、赤ずきんちゃんの祖母を襲ったりしてたんや」


「おまえ、そこまで悪事に手を染めて恥ずかしくないのか……」


「昔はちょっとヤンチャしてたのさ」


「何がヤンチャだ! すでに犯罪レベルだろう」


 スケさんは僕たちの仲がいいのに少し嫉妬しているのか、一歩引いているのか、極めて冷静な口調で会話に割って入った。


「地球と比べて自転速度が速いとはいえ、重力が地球の1.2倍近くあるみたいよ。仮想環境で慣らしてはいるけど、大地に降り立った瞬間、体が重くて身動きがとれないかもしれないわ」


 僕は精一杯の強がりを口にして、白い作業服の下に隠された筋肉を持て余すように引き締めながら植民惑星査察官のあるべき威厳を示した。


「……体が鍛えられていいじゃないか。あの狭くて小さな陸地をめぐって植民惑星の開拓移民とケプラー22b土着の生物群が睨み合い、しのぎを削る生存競争を毎日のように繰り広げているらしい」


 だらしなく舌を出していたカクさんは急に眼光が鋭くなり、獣だけが持つ近寄りがたい殺気をオーラのごとく周囲に放ち始めたのだ。


「弱肉強食の世界だと!? ……それより心配なのが、あまりに重力が強すぎると、デカパイ娘の乳が垂れるのが早くなることだ。それは残念!」


「ええ加減にせんかい! (一同)」


 僕は何だかワクワクしてきた。男の冒険心を大いに刺激してくれる。これからどんな世界が我々を待ちかまえているのだろうか、乞うご期待。

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