第28章 総督の決断

フロレンティーナ

  第二十八章 総督の決断


「何だと? ザイデルD-15部隊からの通信が途絶えただと?」


「ザイデル部隊長も生死不明です。司令部に敵の航空機から放たれた爆弾の直撃がありました」


 デュアン総督は総督府地下のシェルターで、刻一刻と変化する戦況を歯を食いしばりながら見守っていた。……ザイデル麾下の男女混成部隊が結集してきたB級奴隷達にどんどん押されている。男どもはロクな武器も装備せずに戦っているらしいが、数だけで成し遂げた戦果が今だに信じられない。

 どう見ても状況が不利と見越した彼女は足早に、なおかつ気品が崩れないように総督府からの脱出を図った。非常時に使用する埋没式の秘密経路を使って追手を撒く。そして特別頑丈に造られた緊急脱出区画にあるエマージェンシールームの扉を閉め、立て篭もりを決めた。


「性懲りもなく、男どもが反旗をひるがえしたか。ここは支配階級である女性の力の見せどころだな」

 

 デュアン総督は追い詰められていたが、迫りくるB級奴隷達には全く恐れを見せず堂々としている。


「今だかつてない大規模な反乱だな。あの地球人二人の仕業という訳か。……そう言えば、あのシュレム姉妹はどうした」


「申し訳ありません、混乱に乗じて逃走したようです。二人共見失いました」

 

 側近の中年女性が、やや伏し目がちに報告する。


「ええい、せっかくの人質を……役立たずの無能共め!」


「近衛兵指揮下の足軽も多くが男側に寝返り、こちらに攻撃を仕掛けてきます」


「私の力を見くびっているようだな。ずいぶんと舐められたものだ」


「総督、もしや……あれを出すというのですか」


「今出さないで、いつ出すというのだ」

 

 

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