第19話 評判のつくりかた

製造については、目途がついた。

あとは売り方だ。


「とは言え、こっちも目算(アイディア)はある。


「そうなの?なんか、あんたもう・・・なんだかねえ。」

サラは、半分呆れた声を出す。


「そうだな、お前は弓兵(アーチャー)だから聞くが、

 いい弓って言えば、どこの弓だ?」


「そりゃあ、クワンの合成弓(コンポジットボウ)よ!

 あ、アーガネルの長弓(ロングボウ)もいいかな? 


 森の中でも、真っ直ぐ狙えるし、弓勢(ゆんぜい)が違うのよ!

 なんか、特別な膠(にかわ)使ってるみたいで、

 サイズの割に、すごく強くて、でも力のこめ方に無理がないっていうか・・・。


 それに弓弦(ゆづる)にドラゴンの髭を使ってるって噂があるのよ!」


サラのいうクワンやアーガネルってのは、製作所の名前だ。

どちらも100年以上の伝統があって、軍隊や王宮にも卸しているという噂だ。

 

ドラゴンのひげを弦に使ってるなんてのは嘘に違いないが、

それぐらい品質が優れている、ということだろう。


「こないだね、キンバリーとも話したの!いつか買えたらいいね!!って。

 でも、冒険者だと即金でしか売ってくれないし、予約しても2年は

 先になるとかいうし・・・。」


「それだよ、サラ。それが評判(ブランド)ってやつだ。

 王宮や軍隊に卸してる、という信用があるから高く売れる。 


 買いたい奴が多いから、ますます高く売れる。

 使った奴も値段相応の性能だと思うから、ますます評判があがる。

 そうやって売るんだ。」


「え・・・でも、王宮や軍隊には売らないんでしょ?」

 

「そうだ。だから、冒険者に売る。極端なことを言えば、この街のトップ冒険者達にタダでやってもいい。そうして、宣伝してもらうのさ。」


「じゃ、剣牙の兵団、か、駿馬の暁ね!」とサラ。

 

どちらも、この街を拠点とする冒険者の大手クランだ。

30名近い団員を抱えている、ちょっとした傭兵団なみの規模がある。


最近の客に、駆け出しから抜け出して入団した奴の記録があったはずだ。

大手クランは街に事務所もある。


少し作戦を考えたうえで、接触することにしよう。

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