私と彼の恋模様

辰野

1章 私の出会い

1.

今日は一段と混んでるなぁ

 こんなことなら寝坊なんてしなければ良かった

 いつも乗ってる電車ならここまで混まないのに一つ電車を遅らせるだけでこんなにも違うとは


 海音みおんちゃんも先に行っちゃってるから話し相手もいないからすごい暇じゃん

 学校に行くのに電車で1時間というのも考えものだよ


 朝7時に家をでないと間に合わないなんて中学生の私にとってすごく辛い

 特に勉強して夜1時とかに寝たときなんてもう、眠くて眠くて

 授業中に寝ないようにするのも大変なんだよね


 それにしても…………このおじさんちょっと近くない?

 確かに混んでるけどここまで距離を詰めなくてもいいような


 「おっと、ごめんねぇここから動けなくて」

 電車がカーブしたらおじさんがもっと近づいてきた

 そんなに急なカーブじゃないし確かにおじさんの後ろに人がいるけど動けないって訳じゃないし……


 もしかして痴漢……みたいな?


 海音と一緒にいるときも変なおじさんとかに話しかけられることあるんだよなぁ

 めんどくさい


 「あっ、じゃあ私が動きますんで」

 「そうはさせないよーーん」


 あまりにも気持ち悪くてここから移動しようとしたらいきなり手を掴まれた

 腕を振り払おうとしてもたかだが女子中学生の腕力、一般男性にかなうわけがない


 えっ、この状況って本当にやばくない!?


 別にまだお尻とか触られたわけじゃないんだけどこれは明らかに痴漢…………だよね

 ここで大きな声出したら目立っちゃうし、恥ずかしいし…………

 でもでも、このままだったらもっと恥ずかしいことされるかも……


 って、既に股に足を押し当てられてさっきからすごい気持ち悪いんですけど

 恥ずかしいなんて言ってる場合じゃない


 「ちょ、やめてください」


 僅かな抵抗をしたところでこいつが手を止めてくれるはずもない

 幸いにも私が立っているところはドアの真正面だ


 次の駅まであと10分くらいあるけどそれまでなんとか我慢して……

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