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 ここで、小説は止まっていた。題名の意味や考えようがあるが、しかしこれが本当の日記であるならこのノートはどうしてここにあるのか。郵送して送ったのか。郵送してまで……そもそも、あの男が郵送したのを律儀に机の中に置いておくかな。平然とゴミ箱に行きそうだ。駅のシーンだってこれは……いつの時代だこれは。suicaだって、彼女の時代にあったのかな。無駄な思考を巡らせる。駅自体がこのような場所だったかも分からない……車で来たから。

 ……いや、何かが空想であっても、死のうとしたことは本当のように見える。

 しかし、中々死ねなかったのだろう。死ねなかったのだろう。

 手首を切ろうにも、肉が邪魔して切れなくて。

 首を吊ろうにも、意識が失う前にロープを切ってしまって。

 煙草を飲んで死のうにも、意外と三本くらい飲んでも死ねなかった。

 いつのまにか、僕は泣いていた。何故だろう。気持ちが分かったのか。どういうことなのか。

「小説を書くということは、雪山で一人全裸になってその映像を誰かに見せるということだ」

 誰かに、僕は言った気がする。

 感情に酔っていたせいもあってか。かなり可笑しいことを言ってしまった。

 何を言ってるのだろう……僕は。


 ……少し、憂鬱になった。

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