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脳みそは、小説で疲れている。小説を書くのは他の人には分からないかもしれないが、それなりに九鴉するものだ。体は椅子から一歩も動かないのに、脳みその中では宇宙戦争が起きたり、誰かが死んだりも可能なのだから仕方がない。短編とは言え、人が何人か死んだ物語を書いた僕は、何もない虚無の心で天井を見上げる。きっと、短距離を全力で走りすぎて今は膝を地面につけて倒れているのだろう。
数分。くらいだろうか。
そのくらい休憩していた。天井を、ずっと眺めていた。星空を眺めるかのように。しかし、何の興味湧かないかのように。遠くの星、何光年もあるから同じ時間を共有しない映像に。興味はないかのように。
僕は、天井から目を逸らす。そして、顔を元の位置に戻した。後頭部を背もたれに預けていたのを、起こした。
彼女は机の前にいた。
何も言わず、ただ悲しそうな目をしていた。どうしてそんな悲しい顔をしているのか。聞いてみたかったが、言おうとした瞬間にはもう、彼女は消えていた。
最初から恐怖を感じてはいなかったが、しかし非日常的な現象ではあった。僕は日常的に幻影を見るほど、非日常的な人間ではない。だが、それも今は日常として成立している。今では、大して驚きも見せない。
でも、何か空しい気がする。それとも寂しいのか。悲しいのか。分からない。
小説家のくせに、僕はこの心にある感情が何なのか分かっていない。言葉に出来ない。
気が付いたら、もう一つの短編に手を付けずにネットを開いていた。グーグルを開いて鈴野千香の名前を検索する。彼女の名前はやはり有名で、何百件というリストが表示された。その中で一番先頭に来たウィキペディアという辞書サイトにアクセスし、彼女のプロフィールを見る。
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