敵か?味方か?マスク・ド・ドリアン!!

 この日桜花はマッタリと授業を受けていた。

 この所カンキョハカーイが現れず、悪臭漂うラフレシアンに変身する機会が無いのだ。

 それに加え、来栖川 珊瑚や三千院 紅葉という、人気の有る女の子とも『外見上』仲良く振る舞っていた為、神宮寺 桜花は人気の高い同性とはつるまない。とか(実際その通りなのだが)、自分が一番人気者であると自惚れている(実際そう思っているのだが)とか、やっかみ(同性)からを受けていたが、そのやっかみも軽減しているようだ。桜花はこの状況に安堵していたのだ。

(根暗に猟奇趣味のどーしよーもねークズ共だが、ツルんでりゃ、それなりに役立つんだなー)

 とか腹の中では思っていたが、「珊瑚と紅葉は私にとって、とても大切で無くてはならない大事なお友達よ!!」と、周りに公言していた。

 実際にある意味大切で無くてはならない存在なのだが。おかげで脇乃 役子の出番が無くなりそうだ。

 ともかく、桜花は束の間の平和を堪能していた。

 その日のお昼休み…桜花と珊瑚は『紅葉専用部室』にご飯を食べに向かっていた。

 紅葉は今まで誰も自分専用部室に招いていなかったが、桜花と珊瑚だけは入れるようになった。

 紅葉も、同性の風当たりが強い。むしろ桜花以上にやっかまれていた。だが、珊瑚とツルむようになると、風当たりが弱まった。

 珊瑚は同性にも人気があったので、珊瑚の友達なら紅葉も悪い子では無い、との評価を得たのだ。

「ま、待ってなんかいないんだからねっ!!は、入りたければ入ればっ!?」

 頬を赤らめ、プイッとそっぽを向きながら招く。

「お邪魔しま~す」「サラダ持って来たよ~!!」と、和気藹々と『紅葉専用部室』に 入る桜花と珊瑚。キャッキャキャッキャと笑っている。

 入った刹那、ガチャッ!!と紅葉が施錠した。

「っぶふぁ~!!おー紅葉、珊瑚、これ田中から貰ったシュークリームだが、食うか?」

 同時に思いっきりタバコをふかす桜花。桜花は毒だけじゃなくタバコも吸う女なのだ。

「いらないのら。私は甘いモノがキライなのら。スルメとかシシャモなら食べるのら」

 こっちは酒の肴の焼き鳥を焼いていた。ちなみに砂肝だった。

「…ブツブツ…そのハイカロリーなシュークリームを食べさせて…ブツブツ…私を肥やそうとしているのね…ブツブツ…私なんか豚になればいいと思ってるんだわ…ブツブツ…」

 体育座りで一点を見つめながらブツブツ呟いている珊瑚。お弁当を食べる気が無いのだろうか?

 ともあれ、紅葉専用部室は、それぞれが地を出せる場所になっていたのだ。

「そーいや、珊瑚のクラスに転校生が来たみたいだなー」

 桜花はビールのプルトップをプシュッと開けた。持ってきたのは紅葉である。

「…ブツブツ…転校生…ブツブツ…あんな格好いい人…ブツブツ…私が話し掛けられる訳無い…ブツブツ…私に話し掛けられたら迷惑だろうし…ブツブツ…」

「つまりイケメン転校生が来たって意味なのら。クッチャクッチャ」

 ビールのあてに砂肝を噛む紅葉。既に空き缶が三つ転がっている。紅葉はこの年で酒豪だったのだ。

「ゴキュゴキュ……イケメンかぁ…金持ちなら言う事ねーがな。ゴキュゴキュ…ゲプ」

「プシュッ!!そんなに興味も無いくせに、よく言うのら。ゴキュゴキュゴキュゴキュ!!」

「…ブツブツ…どうせ私なんか…ブツブツ…」

 各々地を出してリラックスしていた。この場は彼女達にとって楽園に等しいようだ。

 

 そんな桜達の事はとりあえず置いといて。

 珊瑚のクラスに来た転校生、若大路光輝わかおおじこうきが早速ではあるが、クラスの女子に囲まれていた。前髪をファサッ、と手で払う仕草をしながら、実に楽しそうに談笑中だ。

「若大路君はぁ~、趣味とか何ぃ?」

「フッ…趣味はキミとの語らいさぁ!!」

 ん?

「若大路君はぁ~、この学校に転校して来たのはどうしてぇ~?」

「フッ…キミと出逢う為さぁ~!!」

 んん?

「若大路君はぁ~、彼女とかいるの~?」

「フッ…世の中…の女性全てが…ボクの恋人さぁ!!」

 んんんんん??

 最初沢山いた女子生徒達が次々と若大路から離れて行く。

「待ちたまえ子猫ちゃん達~!!この若大路 光輝と語らわなくてもいいのかぁい?」

 若大路は机に乗り、左手を胸に添え、右手を前に流し出しながらウインクをした。

 イケメン転校生の噂を聞きつけてやってきた他のクラスの女子生徒達も、最早若大路に興味を失って去って行った。

 若大路は、そのモデル並みのルックスやら顔やらのスペックを全て台無しに出来るという、痛々しい性格の持ち主だったのだ!!

 休み時間、誰も近寄らない、孤独になった若大路は、机に座り、脚と腕を組みながらブツブツと言っていた。

「おっかしぃなあ~…このイケメン若大路の周りに誰一人として女の子が寄って来ないなんて…」

 女子生徒からはイタい男として白い目で見られ、男子生徒からは憐れみの眼差しを向けられている若大路。

 若大路はハッと顔を上げ、親指と人差し指をパチンと鳴らす。

「そうか!!恥ずかしがっているんだね!!大丈夫子猫ちゃん達~!!このイケメン若大路はどんなブサイクな女の子でも平等に愛せると言う、神の如く慈悲深い人間なんだからぁ~!!」

 右手を流し出しウインクする若大路。女子生徒から プッ と空気を漏らすような音が多大に聞こえてくる。

 あまりに痛々しいので、見るに見かねた男子生徒が若大路に忠告がてら、声をかけた。

「若大路、少し抑えないとさぁ、色々と惜しいんだから…」

 若大路は男子生徒を睨み付けた。射殺すような眼光を以て。

「男はボクに話掛けるな鬱陶しい!!ボクに憧れるならまだしも、ボクと友達になろうなどと邪な気持ちは棄てたまえ!!」

 今後は男子生徒から プッ と空気を漏らすような音が多沢山聞こえた。

 若大路は立ち上がる。

「全く不愉快極まりない!!男はボクの周り半径1キロ以内に近寄るな!!」

 ピシッ!!と、必要以上の大きな音を立てて若大路は教室のドアを閉じる。

 若大路が去りし後の教室からは、大爆発と大中傷の雨嵐が巻き起こっていた。

 そんな騒ぎなど意にも介さず、若大路は焼却炉の方に向かって歩いて行く。

 そして授業なんか受けないで、一人放課後までブツブツ言っていた。

「この学校にはブサイクな女の子が多いなぁ~…だが三人ほどボクに相応しい女の子を見つけたぞ…同じクラスの来栖川 珊瑚…美術部の三千院 紅葉…そして神宮寺 桜花!!三人とも、ボクの彼女に相応しいなぁ~フッフッフッ……」

 若大路は彼女居ない歴=年齢であった。イケメンの自分に何故彼女が出来ないか、常々不思議だった。

「やはり…ボクが特別な星の下に産まれてきたからかぁい?」

 若大路は一枚のカードをポケットから取り出し、眺めた。

 そのカードには、果物の王様、ドリアンの絵がCGで描かれている。

 余談だが、若大路は、友達居ない歴=年齢でもあった。

「この学校にもラフレシアンが居るらしいけど、この学校のラフレシアンはどうかな?やはり可愛いのかなぁ?」

 若大路はラフレシアンを知っていた。そして独り言を聞く限り、ラフレシアンは各地に居るようだ。少なくとも、若大路の以前の学校には存在していた模様。

「現れるかな~?少し試してみようかな?」

 若大路はベルトにカードを無理やりねじ込んだ。

 ちなみにベルトはバックルが殆どない、作業用のベルトに近い、どこにでもあるようなベルトだ。

「変身!!」

 若大路は両手をクロスさせ、その腕を一気に開く。すると黄金に輝く光が若大路を包み込む。

 光が晴れると、そこに若大路の姿は無く、黄色の全身タイツに筋肉の形を司った防具が胸に張り付いた、軍手に近いような長い手袋を履き、長靴まで黄色の、タオルを首にかけたハーフマスクの男が現れた。

 ハーフマスクは頭部に棘があり、口だけ露出している。ヘルメットのような感じなのだが、何故かゴーグルをかけていた。

「マスク・ド・ドリアン参上!!」

 若大路は訳の解らないヒーローだった!!

 ただ、ラフレシアンに勝るとも劣らない程の匂いを放っていた!!


「きゃっ!酷い匂いがしてきたわ!!」

 放課後、教室で脇乃 役子とお喋りをしていた桜花が、鼻と口を押さえてしゃがみ込む。

 久々の脇子。このままフェードアウトするかに思われたが、そうではなかったようだ。

「ホントだ。あの女の子達が現れたのかな?」

 眉根をを寄せて、鼻をつまんでパタパタと手で扇ぐ脇乃。

 脇乃だけでは無い。桜花のクラスのみんなが一斉に不快感を露わにした。おそらく他のクラスもそうなっているのだろう。

(ツチノコ!なんだよコレはよ!?珊瑚か紅葉が変身したのか!?)

 桜花は鞄の底でクタッとなっている雷太夫に小声で話かける。

(違うな…これはラフレシアンの臭気じゃない…とりあえず匂いの元に行ってみるしかないな…)

 カンキョハカーイの仕業かもしれない。面倒だが金の為に戦わなければならない。

 桜花は鞄を持ち、立ち上がる。

「なんか、とても気持ち悪くなっちゃった…ごめんなさい…先に帰るね…」

「ああ、この悪臭でやられたんじゃない?送って行こうか?」

 久々の出番ながらも優しい脇子だった。

「いいの。少し調子悪くなっただけだから」

 桜花は逃げるように教室を後にした。

(全くよ~…珊瑚も紅葉も何か理由つけて出てるんだろうな?分け前が減るけど一人より楽だからなあ…)

 桜花は毒つきながらも匂いの発生源である焼却炉に向かって急いだ。


「何この匂い!?またあの女の子達が現れたのかしら!?」

 体育館で練習を開始しようとしていた新体操部部員が、一斉に顔をしかめて不快感を露わにした。

「みんな!!ここで待ってて!私ちょっと見て来るから!!」

 珊瑚が慌てて部員達に待機を促す。

「珊瑚先輩、大丈夫ですか?」

「来栖川先輩、何も先輩が行かなくても…」

 後輩達が心配そうに珊瑚に詰め寄る。

「みんなに何かあったら大変だからね。私なら大丈夫よ。安心して待ってて!」

 珊瑚はウインクをしながら後輩達の頭をポンと叩き、体育館から駆け出した。

(…ブツブツ…桜花かしら…ブツブツ…紅葉かしら…ブツブツ…敵が現れたのなら、私にも何かある筈だけど…ブツブツ…私なんかに声かけるのは口が腐るとか思ったのかしら…ブツブツ…)

 後輩達を背にし、匂いの元に急ぐ珊瑚の目の下に、線が書かれていた。

(何かあったのか解らないが、急ぐのだ珊瑚!!)

 急かす棘紅郎。珊瑚はそれに小声で返答する。

(なるほど…ブツブツ…急がせてコケて骨折れと言っているのね…ブツブツ…私を骨折させて可笑しく笑おうって魂胆だったのね…ブツブツ…)

 戦う前から棘紅郎が疲労を感じたのは言うまでもない。


「うわ!クセェ!あの女の子達が出たのか!?」

「じゃあ、またどっか壊れるのかよ!?また美術室じゃないだろうな?」

 悪臭を嗅ぎつけた美術部員は、前回美術室を破壊されたトラウマにより、顔をしかめるのすら忘れてビクビクした。

「隣の紅葉ちゃん大丈夫かな…?」

 美術準備室にて作業中であろう紅葉を心配する美術部員。

 その時、美術室のドアが開く。紅葉が息を切らせて隣から駆け付けたのだ。

「し、心配なんかしてないんだから!!で、でも避難したらっ!?」

 頬を赤らめ、ぷいっと顔を背けながら紅葉が言った。

「そ、そうだな。こ、紅葉ちゃんも逃げようよ!!」

「勿論!避難するけど…心配してくれて感謝なんかしてないんだからねっ!!」

 またまた顔を赤らめて俯く紅葉。しかし、俯きながら、

(早く逃げるのら~!!桜花と珊瑚に機害獣を壊されるのら~!!私がボッコボッコにしてやるのら~!!)

 と、思っていた。要するに紅葉は桜花達に先を越されないか焦っているのだ。壊すのは自分だ!!と。

 携帯に首を吊されてストラップに擬態している黒乃守が(カンキョハカーイの気配は無いが…グアッ!!)と、苦しみながら呟いたが、紅葉は美術部員が全員避難するのを、まだかまだかとイライラしながら待っていた。


 匂いの元、焼却炉近くの小屋の前でバッタリ遭遇した桜花達。

「やっぱりお前等じゃねーのか?」

「…ブツブツ…私達みたいな臭い匂いが他にあるなんて…ブツブツ…」

「あ、あれを見るのら!!」

 紅葉が指した先に、マスク・ド・ドリアンが腰に手を当てて仁王立ちをしていた。

「…ブツブツ…変質者?でも私の方が変質者だと思われてるに違いないけど…ブツブツ…」

「何かわかんねーけど、カンキョハカーイならお金になるしな」

「変質者でもいいのら~…壊せるのら~…クスクスクス…」

「「「チェインジィィィ!ラフレシアァァアン!!」」」

 変身携帯を掲げた桜花達は、ラフレシアンに変身した。

 マスク・ド・ドリアンは視線を桜花達に向けてにやりと笑う。

「何者だテメェは!!」

「やはり居たかラフレシアン…ボクはマスク・ド・ドリアン。全てのラフレシアンを統べる男!!」

 若大路は激しくイヤらしい笑みを口元に浮かべる。そんな若大路に激しく苛立つ桜花。

「何がおかしいんだテメェよ?カンキョハカーイか?オラ!?」

 若大路は肩を竦めてヤレヤレと言った感じのポーズを作る。まるで解っちゃいない、と。

「カンキョハカーイ?バカ言っちゃいけないな。ボクは寧ろラフレシアンの伴侶さ。」

「…伴侶?…ブツブツ…旦那さんとか…ブツブツ…」

 若大路は右手を硬く握り締める。そして胸を張って叫んだ。

「そうとも!!全てのラフレシアンはボクに集うのさ!!」

「何言ってるのら?脳が膿んでるのら」

 とにかくカンキョハカーイでは無さそうだが、イタい奴には変わりない。桜花達はそう思いながら、憐れみの眼を向ける。

「大丈夫、解って貰おうとは思っていないさ。力づくで連れ去るだけだから!!」

 若大路は無理やりにでも桜花達を我が物にしようとしていた。戦って勝って連れ去るのみ。だったが…

「カンキョハカーイじゃねーのか。私はお金にならない戦いはしないんだよ」

 桜花は興味を失い、若大路に背を向けてしまった。

「え?じ、じゃ何でラフレシアンなんかやっている?」

 てっきり向かって来ると思っていた若大路が、拍子抜けしながら問うた。

「だから、私はお金のためにラフレシアンやってんだよ!!」

「私は…ブツブツ…臭い匂いを発しながら屍になるのがお似合いの人生だから…ブツブツ…」

「私は思いっ切り壊したりできるからなのら~…クスクスクス…」

 若大路は、誰も正義の為にやっていないと知って驚愕した!しかし自分の目的はラフレシアンを連れ去る事。戦闘拒否で素直に応じてくれるのならそれでもいいのだが、彼女達には一切その気を感じられない。

「そ、そうなのか。だ、だが!このマスク・ド・ドリアンに相応しい女はラフレシアンだけなのだ!拒否しようが、力づくで連れ去るのみ!!」

 マスク・ド・ドリアンは、その臭気を倍化させ、桜花達に詰め寄る。

「面倒くせぇなぁ。金になんねーからやらねーって言ってるだろうがクズ!!」

「…ブツブツ…私も…ブツブツ…自分を護る為には戦えない…ブツブツ…私は生きてる価値なんかないから…ブツブツ…」

 なんて奴等だ。こっちはこんなにやる気なのに、肩透かしどころじゃない。

 若大路は助けを求めるように紅葉を見た。

「仕方ないのら。私が相手をしてやるのら~…クスクスクス…」

 前に出てきた紅葉に安堵する若大路。ちゃんと相手をしてくれるようだった。

「よ、よし、ボクが勝ったらキミを連れて行くからな?」

「何でもいいから早く来いなのら~…クスクスクス…」

 紅葉の臭いが強くなる。そして黒乃守がクロスボウにトランスフォームした。

「行くぞラフレシアン レッドリーブス!!」

 勢いよく紅葉に飛びかかる若大路。だが!!

 ドン!!

「ぐあっ!?」

 クロスボウの弾が若大路の胸に被弾し、その足を止めた。

「まだ終わるななのら~…たった一発しか撃ってないのら~…クスクスクス…」

 紅葉は若大路に狙いを定めた。その目が完全にイっている。

「ち、ちょっとま…」

 若大路は完全にビビって後退りをしている。

「待たないのら~…クスクスクス…壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ…キャハハハハハハハハハハ!!!!」

 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!と連射されるクロスボウの弾丸!!

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!?」

 粉塵が巻き起こり、若大路の姿が全く見えなくなっても、紅葉は乱射をやめなかった!

 ……粉塵が晴れる…其処にマスク・ド・ドリアンの姿は無い…

「…逃げたのら。つまんないのら。壊れた姿を見たかったのら」

 紅葉はトランスフォームを解除し、むくれる。

「全てのラフレシアンの伴侶って、他にもラフレシアンがいるって事かな?」

「…ブツブツ…あんな臭い匂いの女の子が…ブツブツ…私達の他にも…ブツブツ…あり得る事だけど…」

 一応気になる桜花と珊瑚。

「どうでもいいけど不完全燃焼でイライラするのら!!逃げるなら来るななのら!!」

 その一方で不完全燃焼で苛立つ紅葉。桜花と珊瑚は適当に紅葉を宥めた。

 

 そして翌朝…桜花のお気に入りの屋上に集まった珊瑚と紅葉。

「桜花も自分専用の部屋を持っていたのら」

「天気わりー日は使えねーけどな」

 タバコの煙ををぶっはあああ!!と吐く桜花。屋上は解放感でいっぱいなので存分に煙が吐けるのだ!!屋上じゃなくても存分に吐いているけれども。

「そう言えば…ブツブツ…若大路君が怪我で長期欠席するって…ブツブツ…」

 昨日の今日で休学するとはツイてない奴だな、と思いつつも。

「ふーん。一回見てみたかったかもなー」

「その気も無いのに、よく言うのら」

 特になんの感想も抱かなかった二人。桜花は兎も角、紅葉は戦った相手なのだが、そもそも正体を隠しているのだから気付く筈も気付かれる筈も無かった。

 そんな事よりも紅葉は朝っぱらからビールのプルトップを開けてゴキュゴキュと喉を鳴らす方が重要だった。

 雑魚キャラが確定しそうだったが、マスク・ド・ドリアンはまだその力を出してはいない。

 若大路 光輝が真の力を発揮するのは、もう少し後の話である!!

 ……筈である!!

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