不快美少女戦隊ラフレシアン

しをおう

プロローグ

 ここは地球から遠く遠く離れた星…惑星『ドリームアイランド』。

 この星に二つの巨大国家在り。一つは花が咲き誇り、自然美豊かな『フラワーパーク王国』。

 そしてもう一つ、公害がはびこる『カンキョハカーイ帝国』。

 この二つの国家は永きに渡り争いを繰り返してきた。気の遠くなる遙か昔から。

 二つの国家はお互い疲弊しながらも争う事をやめはしない。何故なら自然と公害は共存する事が不可能だからだ。

 しかし、それも限界に達してくる。フラワーパークは争いによって自慢の自然が破壊され、カンキョハカーイは戦費が枯渇し出したからだ。

 そこで二つの大国は会談を設けた。会談はフラワーパークがカンキョハカーイ側を招いて行われた。理由はカンキョハカーイは足も踏み入れたくない程汚れているから女王が行きたくない、と駄々をこねたからである。

 フラワーパーク女王、ラフレシア・ケイティは客人であるカンキョハカーイ総王、ダイオキシンから片時も目を逸らさずに話した。

 それはダイオキシンを脅威と感じていたからに他ならないが、それ以外にも理由はある。

 なんと、ダイオキシンは正装のマントを羽織ってはいたものの、その下は何も着けていなかったのだ!三枚1000円のトランクス一丁だったのである。

 それは貧乏だからに他ならないが、そこまで貧困に喘いでいるとは流石に思わなかったようで、陽動だろうと思い、突っ込まないようにしていた。

「ダイオキシン殿…そなたとこうして話しているのが不思議なくらい、妾達はずっと互いを拒んで争ってきた。しかしそれ故に、そなた達とは互いを意識する事をやめられはせぬ」

 年増ながらもそこそこ美しい女王ケイティは、汚物を見るような目をずっと総王ダイオキシンに向けていた。そりゃそうだ。マントの下はトランクス一丁なのだから。

「同感だ、ケイティ殿。しかしここはお互い大人になるべきではないか?」

 戦費がキッツキツなダイオキシンは、正直これ以上戦争をしたくは無い。出来れば目の前の敵から戦費を借りたいくらいだった。

「それはその通り。だがダイオキシン殿、カンキョハカーイがフラワーパークに進行してきている事実を無視してはいけないのではないか?兵を退かれよ。さすれば多少は施しても良いのだぞ?」

 施しと言われて顔面中に血管を浮き上がらせるダイオキシン。それは無骨な彼の風貌から怒りを想像できた。ケイティの近衛兵が武器を構えて緊張するが、実際は『施しが欲しいから直ぐに同意したい』との衝動を必死に堪えていただけなのだ。

 しかし、勝手に怯んだケイティは、これ以上フラワーパークを破壊されては堪らぬ、と手前勝手な提案を突き出す。

「ダイオキシン殿、フラワーパークも貴国同様かなり疲弊しておる。と言っても主に国土の汚染だが」

「それはそうだろう。余の軍団は破壊。破壊には当然汚染が付きまとうものだ」

 それはフラワーパークがカンキョハカーイに押されている事実を示していた。そしてそれをケイティは充分承知している。自然を破壊するダイオキシンにビンタの一つも喰らわしたいところだったが、そこはグッと堪えた。ビンタしたら普通にこの場で戦争になるし。

「妾はこの国を愛しておる。故にこれ以上この国が壊れて行く事に耐えられぬ」

 頷くダイオキシン。しかしそれは同意を示すものでは無かった

 ダイオキシンの頭には、目の前の怨敵からどうやって戦費を引き出すかで一杯だった。要するに聞いていなかったのである。取り敢えず頷いただけだった。

 敵に敵を倒す為の金の無心をする…そんな前代未聞の珍戦略をダイオキシンは本気で企んでいた。要するに馬鹿なのだ。

「そこでだ。別の星で決着を付けぬか?そこならば互いにどんな被害が出ようが心は痛まぬだろう。その星には空気も水も鉱物資源もある。つまり補給も現地で行える。一応知的生物も存在するが、奴隷に出来ると思えば寧ろ万歳ではないか?」

 ダイオキシンの心が一瞬揺れた。鉱物資源があるのならば戦争続行は可能…いや、その星で決着を付けるんだったか?まあ、何でもいい。金が掛からないのなら大歓迎だ。

 その揺れた心を見逃さずケイティは続けた。

「この申し出を了承して戴けるのなら、フラワーパークはカンキョハカーイに財政立て直しの資金を提供しよう」

 カモがネギしょってやってきた!!

 ダイオキシンは全く迷う素振りも見せずに右手を伸べた。握手のポーズだ。

 ケイティも満足気に頷いてその手を取る。これで一先ずはフラワーパークの復興に力を注げられるのだ。

「して、ケイティ殿、その代理戦場の場は?」

「その星は銀河の片田舎…地球と言う星。そうよな…ダイオキシン殿が戦場を選ぶとよい。妾が場所を指定したのだ。そなたが戦場を選べば公平というものだ」

 そんな面倒な事よりも早く金が欲しかったダイオキシン…

 目の前に現れたホログラフの地図に適当に指を差す。

「……日本国…幌幌ほろほろ町…?」

 首を傾げるケイティ。どうせならもっと広い国で派手に戦ったらいいのでは?それにこの国の資源は乏しいように見える。

「手狭になったら別の土地に移ればよい。そんな事より早く金をくれ!!」

 握手した手をぐいぐいと押し付けるダイオキシン。金欲しさに余裕が全くないのだ!!

「……そなたが良いのであればそうしよう。その代わり少しばかり条件があるのだが」

「なんだ!!」

「妾は自国民をこれ以上傷つけたくは無い。よってこちらの戦士は原住民を使うが良いか?」

「それでいいから早く金を出せ!!」

 もうお金を払えばカンキョハカーイの領土すらもくれそうな勢いだった。



 ダイオキシンとの会談を終え、堪えていた喜びが遂に溢れだした。

「あ~っはっはっは!やはりダイオキシンはオツムが弱いらしいなあ!!」

 紛争地域を地球にした事により、カンキョハカーイの戦力の殆どは地球に行かざるを得ないであろう。フラワーパークと違い、物量が少な過ぎるのだから。

 勿論、自国の防衛で多少の戦力は残すとは思うが、フラワーパークは紛争地域の原住民を使用する為、フラワーパークの戦力は丸々とドリームアイランドに残る事になる。

 原住民がダイオキシンを倒すのもよし、主力がいなくなったカンキョハカーイを襲うのもよし、その両方行うのもよし。

 どう転んでもフラワーパークに利する事には違いない。

 勝利は目前と高笑いをやめないケイティに側近が苦言を呈した。

「しかしケイティ様…原住民がダイオキシンに勝利できるとは思えないのですが…」

 ダイオキシンはオツムが弱い。それにお金の管理も出来ない。敵から戦費調達を目論むような馬鹿だ。が、その強さは本物だ。もし、あのままぶつかり続けて総力戦になったのならば、敗れるのはフラワーパークの方だ。

 だからこそケイティは負けないように策を労する必要があった。

「それは心配はいらぬ。あの星には妾の力が使える戦士が数多く存在する」

 その言葉を聞いた側近は背筋が凍った。

 女王の技、いや、業を使える戦士…しかも数多く存在する…

 失禁を堪えるのが精一杯だった。それ程に『伝説の戦士』は恐ろしいのだ!!

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