リレイヤーズ・エイジ
ながやん
第1話「プロローグ」
かくて世の終わり来たりぬ。
かつて詩人T.H.エリオットは
だが、古い映画にそれを記憶して思い出しながらも、少年の物語は終わらない。
そして、彼の……
「――ッ!? ここは? 信号途絶、機体反応ナシ……イジェクト!」
鉄の
自分が生きていると実感できたのは、その次だ。
その間もずっと、
波打ち際に立ち上がり、さざなみに洗われる自分の愛機を振り返る。
そこには、胸元から下を喪失した統矢機のコクピットブロックを庇うように、鋼鉄の巨人が膝を突いていた。
――パンツァー・モータロイド、通称
PMRはこの時代、統矢たち幼年兵を含む大半の兵士が使用する、全高7メートル前後の人型機動兵器である。だが、雄々しく
既に原型を留めぬ自分のPMRを見詰めて、そのまま視線をその背後へと滑らせる統矢。
そして、唐突に意識は揺さぶられた。
統矢の機体を守ってくれたのが、大事な幼馴染の
外部アクセス用のポートを操作し、コクピットを強制開放させる。
その時、彼の目は色を失い、彼の耳は空気の震えを遮断した。
「あ、ああ……ッッッッ! りんな、りんなっ! うわぁぁぁぁっ、りんなぁぁぁぁぁぁっ!」
血の滴るコクピット内で、ハーネスに固定されたままの、それは命の残骸。
つい先程まで、戦場で死線を共に
姉気取りで世話焼きの
磯の香りに入り交じる、血と臓物の臭い。
込み上げる酸味に、思わず統矢は口元を手で覆い、その手も血で汚れている中で咳込んだ。
寄せては返す波の音だけが、ようやく耳元に戻ってあの音を引き連れてくる。
未だ統矢は、大地を震わす振動と轟音の中にいた。張り上げる絶叫も
そう、つい先程まで確かに統矢は戦っていた。
りんなと互いに背を預け合って、互いをフォローし合って戦っていたのだ。
そのさなかで、いったい何が……?
断片的な記憶の中に統矢は、恐るべき人型を纏った悪魔の化身を思い出す。
そして、また一人……立ち上がる少年を戦士へと豹変させる。
「りんな……見てろよ、りんなっ! 俺が、必ず仇は取る……奴らパラレイドは、残さず叩いて潰す! この、俺がっ!」
押し寄せる波間の中で、
西暦2098年、冬。
かくて終わりの始まり来たりぬ。
地軸ねじれて消し飛ぶ歌声の
かくて終わりを
(T.H.エリオット/井上勇訳)
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