13話 暴走
――結局のところ、私はワガママなのでしょうね……。
瓦礫と共に落ちながら、アインは刹那的に己の境遇を顧みる。
初めてD組の教室を訪れた時も、御影に追求された時も、自身の異能に関する詳細をほとんど開示できなかった。
否。言えなかった。異世界で得た能力である『鬼』が、実はある欠陥を抱えているだなんて。
怖かったのだ。自分の醜く変わり果てた姿を見られるのは。
勝手な理由だとは思う。それでも、自分から切り出すのは
蔑まれても仕方がない。失望されても無理はない。
けれど御影は――いやクラスメイト達は、こんな自分を信じてくれると言ってくれた。
最も重要な局面で、得体の知れないはずの自分を頼ってくれた。
だから、せめて。
――せめて、皆さんの期待には応えてあげたい。
これだけ温情をかけれているのだ。いくらアインが感情に乏しい人間とは言えど、人の優しさに何も感じないほどに、無頓着ではないつもりだ。
そういう意味だと、あの御影という少年は、人の心を掴むのが非常に上手いのだろう。元々乗り気でなかったアインをこうして表舞台に立たせる分には。
――よくよく、不思議な少年です。
あまり他人に興味持てない自分が、微細ながらにもだれかに関心を抱くだなんて、初めての経験だった。おそらくクラスメイト達も、こうやって興味を抱くようになったのだろう。
ミカはもちろん、クラスメイト全員が勝利を願っている。最弱と揶揄されるD組でも、上位組に勝てるだけの素質があるのだと照明するために。
ならば、このクラスに少しでも尽力できるよう、忌避すべき『鬼』の力を振るうとしよう。
未だ異能を使うことに対する恐れは多大に残っているが、それがアインに唯一できる協力の仕方なのだから。
――そのためには、まず。
B組委員長、一ノ宮銀次を打倒せねば――!!
美々奈とかいうゴシップ好きの少女からの情報によれば、銀次の『異能封じ』は間合いに入らないとその効果を発揮できない。しかも事前に手を打ち鳴らさないと発動すらできない。
今、銀次は頭を抱えて胎児のように身を丸めている。これならば銀次に異能を封じられる心配もないだろう。
『一ノ宮くんはB組の委員長だけあって優秀なのは事実だけど、ああいった自身過剰なタイプは、一度計算外のことが起きるとたやすく崩れやすい。彼に異能を使わせず隙を突くとしたら、そこしかない』
――というのは、御影から聞き及んだ推論ではあったが、なるほど。見事的を射ていたらしい。つくづく、侮れない少年だ。
現状、銀次達のしんがりを務めていた二人と、その後方で追っ手を警戒していた一人は、瓦礫と椅子や机の山に呑まれて行動不能となるとは間違いない。
となると、残るは銀次とその両隣りにいる女生徒二人だけ。内一人は『切断』と呼ばれる物体両断の異能力者。彼女の手にかかれば、落下する瓦礫の雨なんてあっさり攻略してしまうであろう。
だが、必ずそこに隙ができる。互いに近接戦と主とする異能なので、無闇に突っ込めば体のどこかを切断されかねないが、瓦礫に手を取られている間ならば肉薄できる。
ここまで数秒間。階下に着地するまで一瞬に状況を確認し、目標を睥睨する。
鼓膜を破るような轟音と共に、アインは華麗に着地する。
瞬間、『鬼』の力を両脚に集中させ、全力で床を蹴った。
降り注ぐ瓦礫を俊敏に避けて、アインは銀次の元へと一気に駆ける。前方と後方から絶叫が響き、すぐさま途絶えた。おそらく、戦闘不可と見なされて回収されたのだろう。
瓦礫や机などが床に衝突する度に、激しい震動が走行を妨げる。が、もはやその程度ではアインの超スピードは収まらず、彼岸の距離を瞬く間に縮める。
銀次はというと、この崩落の中で無事に生き延びていた。そばにいた『切断』の異能力者が落下する瓦礫を斬って身を守ったのだ。
しかし、それが命取りだった。銀次を守らんと瓦礫ばかりに気を取られ、目先の距離までアインが接近していたことに目が映っていない。
「なっ――!?」
彼女にしてみれば、アインが瞬間的に狭まったように映ったのだろう――双眸を剥いて、迎撃どころか防御すら取れずにいるガラ空きの胴に。
渾身の掌低を喰らわせた。
「かは――っ!?」
激痛に顔を歪ませて、真後ろへと吹っ飛ぶメガネの少女。そのまま壁に激突して、蛍火のような光の束だけを残して消え去った。
――あと二人。
凪いだ海面のように心中で呟いて、アインは目と鼻の先にいる銀次とそばに控えていた地味めの女生徒へと視線を向ける。
まだ状況が呑み込めていないのか、
「いやああああああああ!?」
一瞬のことだった。
銀次の隣りで恐怖に震えているばかりと思っていた少女が、悲鳴と合わせて異能を発動させてきたのだ。
――これは……!
まるで見えない糸で強引に引っ張られるかの如く、アインの体が後方へと吹き飛ぶ。
足が宙に浮き、踏ん切りも付けられないまま、アインは背後にあった瓦礫の山に体を叩き付けられた。
「ぐっ……」
肺からせり上がる空気を噛み殺し、アインは前方を端倪する。
銀次は以前として身を屈めたままだったが、異能を使用した少女は涙目になりながらも、一挙手一投足見逃すまいとアインを眇めていた。
油断していた。てっきり困憊のあまり反撃には転じないとばかり高をくくっていたが、ここで『念動』――サイコキネシスを使ってくるとは。
だが美々奈の情報では、彼女は手で持てる重量でしか異能を発揮できないはず。平均的な女子よりいくぶん軽めなアインではあるが、だがしかし、あんな細腕でアインを異能で吹き飛ばせるとは思えないのだが……。
――失念していました。彼女は元C組。異能が成長していも不思議ではなかったはずなのに……。
思い返してみれば、御影も彼女の異能に対して警戒を払うよう言っていたか。気が早まって、つい銀次ばかりに意識を取られていた。
「ソードフェルト! 大丈夫か!?」
と、アインが全身に伝う痛覚に顔をしかめている内に、瓦礫の隙間から虎助と思われる叫声が耳朶を打った。
「駿河さん――くっ」
そこで異能の効果が切れたのか、先ほどまで磁石のように貼り付いていた瓦礫の山から突然解放され、アインは苦しげに呻きながら床に膝を付いた。どうやら瓦礫にぶつかった際、足首を痛めたらしい。
「待ってろ! 瓦礫を登らせて救援を向かわせてるから!」
「は…………っ!」
返事をしようとして、アインは言葉を詰まらせた。
待て。一斉に襲うならまだしも、こんな瓦礫に囲まれた場所ではきっと少人数しか出入りできない。今ここで突貫したところで、無防備に攻撃を誘っているようなものだ。
言うなれば、ここは猛獣のいる檻の中。外敵に追いつめられ、神経を過敏にしている獣の前に近寄ろうとしたらどうなるか。
「ま、待ってください。今はまだ危ない――」
「加勢に来たぜアインさァァァん!」
アインが呼び止める前に、ツンツン頭の男子生徒が、瓦礫や机の山を登りきって、すぐさま跳躍した。
向こう先は、銀次と『念動』の少女の直線経路。
「来ないでええええええ!!」
少女が再び怒声を飛ばす。
そして、ツンツン頭の少年は床に降り立つ前にアインのいる後ろ手へと呆気なく吹き飛ばされ――
「あっ――」
アインは両目を見開く。
このままだと、猛然と迫るクラスメイトと衝突してしまう。
しかしながら、避けるには体勢で悪過ぎた上に、足首も痛めていて回避できそうにない。
衝突しない唯一の方法があるとするならば、少年の体が目前へと来たと同時に『鬼』の力を解放して、殴り飛ばす他ない。
けどそうなれば、もちろん彼はただでは済まないだろう。
逡巡している間にも、少年の体がアインの目先まで接近し――
そこでアインは、本物の鬼へ成り果てた。
◇◆◇◆
「みんな、上手くやってるかな……」
仄かに湿るマンホールの中で、今頃銀次達と苛烈な勝負を広げているであろうクラスメイト達に思いを馳せながら、御影はおぼろに呟いた。
おおよその推論と仮定を元に、銀次とその取り巻きを包囲する作戦を立てて、クラスメイト全員に携帯端末などを使って伝聞しておいたが、ちゃんと手はず通りにいけただろうか。虎助や美々奈から伝え聞いた話では、滞りなく準備を済ませたらしいが、それでもやはり、不安だけは拭えない。
こういう時、安全圏から指示しか飛ばせない自分が腹立たしく思う。無論自分が倒されればそれで終了となってしまうし、せいぜい策を練るぐらいしか脳がないのだから、司令塔らしく身を潜めていた方がいいのは理屈では分かる。
しかし、実際に戦うクラスメイト達のことを考えると、改めて無能力な自分に苛立ちを禁じえなかった。
――無いものねだり……でしかないんだろうけど。
今更どうあがいたところで、無能力という事実は変わらない。なにも異能がない以上、自分が出張ったところでお荷物だ。きっとこれからもずっとこんな立場に違いない。
それでも『彼女』に認めてもらいたくて、この学園へとやって来た。
少しでも、『彼女』の隣りに並べ立てるように。
――でも結局、『彼女』の推薦があってこそ北条学園に入学できたようなものだし、そういう意味じゃあ、ぼくってかなり情けないよなあ……。
自嘲するように苦笑して、御影は握りしめた携帯端末を見つめる。
勝利に至る布石は全て打った。あとは詰めの一手となるアインの働き次第である。
本音を言うと、最後の最後まで迷っていた。本当に勝敗を決する大役をアインに任せてよいものなのかと。
他にも選択肢はあるにはあった。でなければ、銀次に啖呵を切ったりなどしないし、進級する前から上位組との異能戦を想定して、入念な計画も立てたりしない。
いくつもある選択肢の中で、アインを組み込んだ作戦の方が一番勝率が高かった。ただ、それだけだ。
――異能に関してなにか欠点でもあるような口振りだったけども。
しかし、すでに賽は投げられた。いくらアインに不安要素があったとしても、作戦を立てた自分こそ責められるべきだ。彼女にはなんら非はない。
携帯端末の画面を見やる。残り時間はあと30分を切っていた。とうの昔に本校者と第三校舎を繋ぐ廊下を破壊して、真下にいる銀次達に直撃した頃合いだろう。異能戦終了時はブザーが鳴らされるので、その音がしないということは、瓦礫だけでは銀次を倒せなかったということか。
そうなると、アインが銀次達と交戦していると判断すべきだろう。そのあたりも折り込んで虎助に――御影から話してもよかったが、色々と警戒されがちなので伝言を頼んでおいたのだけれど、功奏してくれただろうか。まあ、アインは土壇場に強そうだし――演技とはいえ、キスを迫った時も平然としていたくらいだ――臨機応変に対応していてくれていると思うが、現場に行けない以上、ここで祈る他しかない。
ヴヴヴヴヴヴヴ――
と。
手にしていた携帯端末が、不意に震えだした。
番号を確認すると、第三校舎中央口付近にいるはずの虎助からだった。
ということは、虎助は交戦していないのだろうか。まだブザーも鳴っていないし、翻しては銀次を捉えていないということになるので、てっきりアインと混じって戦闘に参加しているものとばかり考えていたのだが。
そういった疑問が過ぎりつつ、御影は通話ボタンを押して耳に当てる。
「トラ? どうし――」
「ミカやべえっ! ソードフェルトの様子がなんか変だ!!」
問いかけるより先に、虎助のいつになく焦燥した虎助の大声に、御影は眉をひそめた。
「やばいってどういう意味? そっちでなにがあったの?」
「原因は分からんが、ソードフェルトが突然暴れだして――うわぁ!?」
「トラっ? ねぇトラ!?」
突然携帯端末を落としたかのようなノイズがしたのを最後に、虎助からの通話が途切れてしまった。
「一体なにが……」
一切状況が分からず、呆然と携帯端末を耳から離す御影。
「……そうだ。フネさんならなにか知ってるかもしれない!」
そう思い立ち、急いで美々奈の番号を押し始めたところで――
ブ――――――――ッ!!
と、唐突にブザーが地表から鳴り響いた。
「異能戦が終わった……?」
呆気に取られながら、御影は慌てて時刻を確認する。
終了するにはまだ時間がある。つまりは、銀次が何者かの手によって落ちたということになる。
――異能戦に勝った? けど、今の電話は……?
本来なら喝采を叫ぶところなのだろうが、ただならぬ事態に御影は動揺をあらわにしていた。
そうこうしている内にも、御影の体は次第に発光して。
元いた体育館――現実世界へと、強制送還された。
「あああぁあああァああァああああああァァあああぁァあああっ!!」
現実世界へと戻ってきたと同時に、臓腑に響くようなおどろおどろしい声が体育館中に反響する。
声の主は、真横にいるアインのものだった。
仮想フィールドへ行く前となんら変わらない配置。人数は前より減ってはいるが、それでもB組とD組が対面している図はそのままだ。
そんな光景の中で、アインだけが露骨に異質な雰囲気を発して場を混沌とさせていた。
「な、んだ。これ……」
以前とは似ても似つかぬアインの異様な姿に、御影は愕然と息を呑む。
美しい銀髪の頭頂から生えた、不釣合いな禍々しい二つの角。瞳は血のごとく真っ赤に染まっており、吸い込まれそうなほど魅力的だった碧眼は、影も形も残っていない。
そして全身から黒々としたオーラをまとっており、狂った獣のように咆哮していた。
なぜこのような姿に成り果てたのかは分からないが、本能的に危険を感じて、御影は一歩ずつ後ずさる。
「ミカ!」
とその時、近くにいた虎助が慌てた様相で駆け寄ってきた。
「トラ! 一体これはどういうこと!? あれからなにがあったの!?」
「詳しいことは俺も分かんねえ。瓦礫が邪魔で中が見れなかったからな。ただ突然アインが暴れ出したみたいで、そのまま一ノ宮の奴らを蹴散らしたらしいことは確かだ」
言われてみると、これまで銀次やその取り巻きの姿を見かけていない。おそらくはアインに倒されて治療室へと転移したのだろうが、それよりなにより、勝敗すら気にしていられないほどに、事態は緊迫としていた。
「ミーくぅぅぅん! ウチらどないしたらええの!?」
御影とは別の場所で退避していた美々奈達が、当惑した表情で声を張り上げていた。
「フネさん! とりあえずソードフェルトさんから距離を取り続けて! きっと学園側も異変に気付いているはずだろうから! 絶対に刺激しないようにだけ注意して――」
と。
最期まで言葉は紡げなかった。
突如、一際甲高い絶叫を上げて、アインは全身から烈風を巻き起こしたのだ。
「うわぁっ!?」
とてつもない突風に、御影はなす術なく吹き飛ばされ、壁へと激突する。
全身を打ち付け、肺腑から苦鳴を漏らす。どうにか受け身は取れたが、体中のあちこちから伝う鈍痛に思わず顔をしかめる。
そばにいた虎助や他のみんな――残っていたB組やD組の生徒達も、全員がアインの烈風によって壁際へと追いやられていた。
「おいおい。あれって本当にB並みの異能なのか? 下手すりゃAはあるんじゃねぇのか?」
「多分、平常ならB並みなんだろうね。暴走した場合は範疇に収まらないってことなんだろうけど……」
尋常ならざる状況に、もはや空笑いすら浮かべている虎助に、御影は眉根を寄せて言葉を返す。
遅きに失したが、この時になってようやく『彼女』の言葉を理解した。
B組相当の実力というのは、あくまで安定していた場合のみで、暴走時はその限りではないのだと。
しかしこんなもの、いくらBないしはA並みの異能を保有していたとしても、それが扱えきれていないのでは意味がない――むしろイタズラに甚大な被害を出しかねない危険な力だ。アインが頑なに詳細を口にしようとしなかったのも、このためだろう。
まったく、一体なにを考えているんだ『彼女』は。単に面倒な案件を押し付けられただけのような気がする。しかも、プレゼントと称して怪しまれないよう根回ししてまでだ。
――『彼女』のことだから、僕ならきっと手綱を握れるとか安易に考えたのだろうけど、さすがにこれは荷が重過ぎる
よ……。
アインを組み入れた時点である程度のリスクは覚悟していたが、いくらなんでも予想外過ぎた。正直、どう収集を付けたら良いものか、さっぱり分からない。
とにかく今は学園の応援を待つしかない。B組さえ圧倒されているのだから、D組なんて手も足も出せなだろう。事前になんらかの準備ができていたなら、話は別だが。
などと、静観に徹しようとした、その瞬間。
アインの真紅の瞳が、御影をまっすぐ捉えた。
「やば――っ!?」
慌てて退避しようと四肢に力を込めるが、その時にはすでに、アインが御影のすぐ前まで肉薄していた。
アインが犬歯を向いて片腕を振り上げる。
とっさに両腕で頭を庇うが、今のアインなら容易く骨をへし折って、御影の顔面を抉ることだろう。
アインの右ストレートが猛然と迫る。思わず瞼を閉じて激痛に備えようとした、その時――
背後の壁が、突然粉々に吹き飛んだ。
「ぐぅ――っ!」
予想だにしていなかった衝撃に、御影は前傾姿勢のまま転がり回る。
全身を強かに打ちつけながら、御影は片手を付いてスピードを殺し、ふらつく頭を必死に上げて、自分を突き飛ばした張本人を見据えた。
「間一髪、といったところかな?」
その少女は。
腰まで伸びる艶やかな黒髪をなびかせながら、傲然と立ち尽くしていた。
とても凛々しく整った顔。全身はアインかそれ以上に絶妙なプロポーションを誇っている。しなやかに伸びた四肢はそれだけで一種の芸術品のようであり、また鞘におさまった長刀を手にしている絵が、舞台劇にでも出てきそうなほど構図良く決まっていた。
「ソードフェルトさん! 大丈夫!?」
「おいおい、まさか死んでんじゃないだろうな……」
ふと、クラスメイト達の不安げな声が背後から届く。
声に誘われて振り返ってみると、そこにはぐったりと仰向けに倒れているアインと、彼女を介抱している数人のクラスメイトとで固まっていた。
「問題ない。鞘で胴を突いたが加減はしてあるし、軽く昏倒させた程度だ」
制服や刀に付いた埃を払いながら、黒髪の少女が凛とした声音で言葉をかける。
確かに、遠目から見てもしっかり胸は上下しているし、時折身じろぎしているので、意識にも問題はなさそうである。いつの間にやら角も消え去っているし、再び暴走する心配もなさそうだ。
「生徒会長? なんでここに……」
「たまたま用事があって近くを通っていたのだが、妙な気配を感じてね。急いで駆けつけてみれば、案の定だったというわけだ」
訝る虎助に、少女――生徒会長は明朗快活にそう応え、見惚れんばかりの微笑を浮かべる。
「しかし、無事に済んで良かったよ」
と。
生徒会長は。
学園最強は。
『彼女』は――。
終始苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべている御影をまっすぐ見据え、何気ない調子でこう声をかけた。
「なあ――御影」
「……
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