神斬髪切り屋(かみきりや)八の巻 八雲 序章

 神 斬

髪 切 り屋



八の巻 八雲 序章



「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、元の水にあらず。

 淀みに浮かぶ、うたかたは、かつ消え、かつ結びて

 久しくとどまりたるためしなし」

 

                  「方丈記」冒頭

現代語に訳すると

行くかわの流れは絶えることがなくて

なおそのうえに、元の水と同じではない

流れが滞(とどこお)っているところに浮かぶ

水の泡は、一方では消え、一方では生じて長い間

同じであり続ける例はない。


この文章を書いたのは、別の時空の鴨長明(かものちょうめい)という

御仁らしいのだが、この文章はなかなかに趣(おもむき)がある。


何故、某(それがし)がこの文章を

八の巻の冒頭に選んだのかというと

歴史という名の川、そして流れている時という水は

同じものではないという事に思えるからじゃ。

時という名の泡は一方では消え、一方では生じて

長い間、同じであり続ける事は決してないからじゃ


時周殿が書いた、この物語の謎が時を超え

いよいよ終焉にむかって動き出す

今までが

徐如林 不動如山(静かなる事林の如く うごかざること山の如し)ならば

ここからは

疾如風 侵椋如火(はやきこと風の如し 侵略すること火の如し)というわけじゃの。


この物語もあと二巻のみじゃ


では、某(それがし)八の巻 案内人武田晴信と共に


「御旗(みはた)盾無(たてなし)御照覧(ごしょうらん)あれ」

と言えば、我が武田家の軍議において

絶対変更ができない。必ず、生死を賭しても

やり遂げないといけないことという意味なのじゃ

豆知識じゃが

御旗は後にこの日出ずる国の旗と

なる日輪(にちりん)の丸の御旗

盾無は我が武田家に伝わる鎧のことじゃな


こうして、歴史は決められ、そして作られ そして流れていくものなのじゃ


読者の皆々様、この八の巻 八雲をとくとご覧あれ。


 神 斬

髪 切 り屋       八の巻 八雲に続く

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