第26話 ブラックナイト
<ブラックナイト>から放たれる重力波で、オタクたちのボトムストライカー隊は大地に跪いて空を見上げていた。
「だらしないぞ! メガネ! このままやられるのか!」
信長の式鬼<金鋼 零>はすっくと立ちながらオタクたちを叱咤した。
式鬼<銀鋼 零>に乗っている天海、安東要、神沢優、月読波奈も普通に立っている。
「信長さま、天海さまはともかく、かなめっちが何故、普通に立ててるんだ?」
天海は武勇に優れ、神沢優、月読波奈は秘密結社<天鴉>でも最強の異能力者である。
だが、安東要は普通の人間のはずなのだ。
「それは、式鬼シリーズには反重力エンジンが標準装備されてるんで」
安東要は普通に答えた。
「え? それ、<ボトムストライカー>にも付けてください」
メガネは無理なお願いをしてみた。
(急には無理じゃな)
安部清明が無情にテレパシーで答えた。
(そこを何とか!)
メガネもテレパシーでねだってみた。
なかなか器用だ。
(男なら自力救済せよ!)
信長は手厳しい。
(でも……)
メガネたちオタク軍団は気力が萎えていた。
(そうなると、見えるか見えないか半分スケスケモードのサイバーグラスの在庫の確認はする必要は無くなったわね)
神沢優はふとつぶやいた。
オタクたちの心理を読みきった言葉であった。
(待ってください!)
副隊長のザクロが野太い声で静かに叫んだ。
(いや、俺たちが間違ってました。これぐらいで、見えるか見えないか半分スケスケモードのサイバーグラスを諦める訳にはいかないです。俺は自分が恥ずかしいです)
ザクロの力強い言葉にメガネも静かにうなずいている。
しかし、見えるか見えないか半分スケスケモードのサイバーグラスで女の子のパンツが見たいという願望は恥ずかしくはないのだろうか。
たぶん、ないのだろう。
今、オタクたちの心は「月読波奈のパンツを見ずして死ねるか!」という一点で一致しつつあった。
<ブラックナイト>の重力波攻撃を気力で跳ね返し、オタクたちの<ボトムストライカー>が次々と立ち上がっていく。
(うおーーーー!)
ついに、オタクたちの雄叫びが天を揺るがした。
<ボトムストライカー>が全機起動し、立ち上がって一斉に抜刀した。
しかし、その刀は暗黒の霧のようなものを纏って不気味な妖気を放ちはじめていた。
(まずい、これは黙示録の獣<666>の邪気じゃ! <TOKOYO DRIVE>が逆回転で発動している!)
安部清明は危険を察知していた。
<ボトムストライカー>の腹部に左回転の暗黒の渦巻きが出現していた。
(どういうことです? 清明さま)
安東要は尋ねた。
(<ボトムストライカー>には<TOKOYO DRIVE>という生体エンジンが埋め込まれている。それは人間の身体と心の力である<マナ>を原料として発動するという。<マナ>エネルギーには陰陽があり、陰の<マナ>は人を獣化させて堕落させる。陽の<マナ>は人を神や仙人の位まで昇華させるという。<TOKOYO DRIVE>を陰の<マナ>によって左回転さてはならぬのじゃ)
清明は悲痛な声で一気にまくしたてた。
(だけど、おそらく、オタクたちは暗黒の性欲によって獣化の道を選んでしまった)
安東要は真相を言い当てた。
(これを防ぐ手立てはない……)
安部清明の声は絶望に沈んでいた。
(大丈夫、波奈にいい考えがあるわ。恥すかしいけどやってみる!)
月読波奈の瞳は銀色に輝き、決意は揺るぎないように見えた。
(やるのかあれを! 禁断の<パンツは白作戦>を!)
安部清明は戦慄した。
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