ミョール






34



ビドヨの蹴りもタクトフービの棒が横に流した


間に合うはずのない棒の移動であった


ダラギャの剣をタクトフービの棒が受けた瞬間すでにビドヨは蹴りを出していた


さらにその瞬間にタクトフービの拳はダラギャの顎に触れていた


拳も棒もタクトフービの足もビドヨの蹴りを防ぐことはできない


その判断があるからビドヨは蹴りを出した


蹴りを出すということは隙を広げてしまうということだ


蹴りを受け流されてしまうと後は…


爆発的な衝撃がビドヨを吹き飛ばした




35



ビドヨは長年修行を続けてきた


盗賊の修行ではない

盗賊としての腕は平凡であると自分でも知っていた


だが格闘技なら誰にも負けないと確信するまでに修行を続けてきた


だがダラギャに負けた


ダラギャは不思議な盗賊であった


盗賊団同士の闘いではほとんど本気で敵を潰した


ギキョウシンに縛られず他の盗賊団を倒すことができるダラギャを

すべての盗賊団は恐れた


非道団と呼ぶのは盗賊だけである


役人は飛刀団と呼ぶ


役人を格闘技で倒すことはビドヨにとって簡単なことであるが

ダラギャがそれを許さない


役人と一般人にはやさしく

それがダラギャのこだわりである


ビドヨは

他の盗賊団との闘いによって

格闘技の充分な実戦経験を積んできたはずだった




36



盗賊団との闘い程度では実戦訓練にならなかったか…


タクトフービの軽い一撃で

吹き飛ばされながらビドヨは

つくづく

実戦訓練の乏しさを痛感した

そして地面に激突した


ミョールの

投げ縄が

タクトフービを捕らえようと

地面すれすれを走る


タクトフービは

数学的な回転をしている


ミョールの投げ縄は何本も地面を走る

それぞれの縄が

複雑な

異なる動きで

タクトフービを捕らえようと

意思を持つ生き物のように動く


タクトフービは

生き物のような縄を再び

ただの縄に戻す数式を

たちどころに発見して実践している


そのような

複雑で単純なタクトフービの回転を美しいと

ダラギャは思ってしまう









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る