第10話 声優時代(でも病んでいた)



C男と彼女が別れたものの、やはり車中泊は限界にきていた。

今まで実家で音楽の仕事(サポート等)しかしていなかったC男が、

アルバイトをするようになった。昔もやっていたという、家電量販店での仕事。

私も時給の良いバイトを探し、遂に同棲する事にした。


今まで、C男はずっと実家暮らし、私はB男の家に転がり込んでいただけ。

初めての同棲で、お互い都心から遠い実家から離れられる事が嬉しかった。

C男は都心に近づけて、音楽活動をするのも楽になる。

私も、その頃ちゃっかり声優事務所に入ることができて、

やっぱり活動拠点は都心なので近いに越したことはなかった。

やっと、やりたかった事を、好きな人と暮らしながら、

家を自分の暮らしやすいように保ちながら、できる。

そう思っていた。


しかし世の中、そううまくはいかなかった。

C男がバンドに加入し、俄然忙しくなった。

私もバイトと声優のレッスン、オーディションと慌ただしく、

2人で遊んだり、ゆっくりする時間が減った。

C男はツアーに出ることも増え、2~3日帰らない、

帰っても生活費を稼ぐ為すぐにバイト、という生活。


私はアルバイトでお菓子を作る仕事をしていたが、

繁忙期が過ぎるとシフトに入れてもらえなくなり収入が激減。

それが元で同職だった人が次々に辞め、

逆に仕事が増えて辛くなるなど、安定しない日々が続いた。

C男はバンド内でもストレスを抱えていて、常にイライラしていた。

私が常に落ち込んでいたり、収入が安定しないのも苛立ちに拍車をかけた。


C男が私のことで怒っていない時でも、全て自分のせいなんだと不安になった。

勝手に落ち込んで泣いて、それでC男がイライラ…と、負のスパイラル。

私は自傷の頻度が増え、傷もどんどん深くなっていった。

バイト先では手袋を着用するので、バレることはなかった。

バレていたとしても、誰も何も言わなかっただろうけど。


そんなに寂しいならと、猫を飼い始めた。

もともと私は猫が好きで、いずれ飼いたいと思いペット可の物件にしていた。

ネットで探し、保護していた人から、2匹の猫を里親として引き取った。

猫はまだ小さく、とても可愛かった。子供みたいなものだから、

これでC男と別れることはないだろう、と勝手に思っていた。

C男は「もし別れることになったら、そっちが引き取れよ」と言っていたのに。


やはり、猫がいても、私の寂しさは埋まらなかった。

リストカットはやめられず、喧嘩し続ける日々。

ある日の夜、喧嘩中にヒステリーを起こした私が未開封の缶を投げつけ、

その音で下の住人が苦情を言いにきた。

新聞配達をしている若い男性で、いかつい風貌。

事情を説明し謝ったが、普段から物音がうるさい、

見逃して欲しければ新聞を取れと、完全に足元を見られた。

仕方なくC男は契約したが、結局この騒動で全て崩壊した。C男から、

もう限界だ、別れよう、出ていかないなら俺が出ていく、と言われた。






一人で家賃を払えるわけもなく、私が出ていく以外の選択肢はなかった。




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