【EVERLASTING】BL版

圭琴子

プロローグ

 それはまだ、ゼスが幼い頃の事だった。

 村の裏山の朽ちかけた庵に、一人の老人が住んでいた。村には滅多に下りてこず、畑を作って自給自足の生活だという。


 二年にいっぺん程の頻度でしか老人を見たという者はなく、それが十年、二十年経った頃から、噂が人々の間に恐れと共に広がった。

 『老人はヴァンパイアで、数年に一度村で生娘の生き血を吸い、生き永らえている。町外れの木こりの家の娘が死んだのも、老人の牙にかかったのだ』

 まことしやかにその噂はあっという間に広がって、彼方からヴァンパイアハンターがやってきた。


 村と契約を交わした晩、老人にとっては運悪く、彼が山を下りてきた。

 その光景を、ゼスは生涯忘れない。


 幼いゼスの目の前で、年老いてようよう杖をついて歩いてきた老人が、ヴァンパイアハンターに殺されたのだ。剣の一振りですでに絶命したと思われる老人に、ハンターは太い木の杭を突き立て、追い討ちをかけるようにハンマーで執拗にそれを穿った。


「ゼス! 見ては駄目!!」


 駆けつけたゼスの母が急いでその黄緑の瞳を塞いだが、立ち竦んだゼスの黒髪から腰までは、勢いよく噴出した老人の赤黒い血で、べったりと汚れていた。

 その光景を、ゼスは生涯忘れない。



【EVERLASTING】

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