第39話恋占いか相談か?
シルクロードにある古代文化研究所に潜入調査したのち、一旦境界国の精霊王の宮殿に帰還。
精霊王ガイアスに地下室で魔導実験が行われている可能性との調査報告をしたのち再び境界ランプでシルクロードにワープした。
「さて、ここから調査任務の第二段階に移りたいと思う。預けた化石の鑑定結果が出るまで1週間ある。しばらくこのシルクロード中継地点に滞在して古代文化研究所で行われていると噂の魔導実験についてもっと調べなくてはならない……もう少し聞き込みをしてから強行的に地下室に乗り込むか、それとも先ほど話したようにそこにいるミニドラゴンを囮に内部を調べるか」
さっきもミニドラゴンのルルを囮に使うと言っていたし、可哀想だけど最終的にはルルに潜入してもらうしかないのだろう。
問題はいつどのタイミングで潜り込むかだ。
もしくはいきなり地下室に潜入するか……。
「まだ魔導実験の情報が足りませんわ。焦らずに町の人たちから噂話を収集してから再潜入するのがいいと思いますわ」
「キュー……安心したキュ」
シャルロットが情報収集を優先するように提案したおかげでミニドラゴンのルルは潜入調査の猶予ができほっとしたようだ。
オレの肩に止まっているルルから緊張の色がなくなる。
調査のためしばらくシルクロードに滞在することになったので宿屋をとる。
拠点となる宿は一階は飲食店、二階はポーカーやビリヤード、ダーツなどの遊戯施設兼酒場、三階から五階が宿屋という複合型の建物だ。
この町には宿屋はここだけだという。
男性と女性で部屋を分けてとったがオレとカラス特別大尉が三階の部屋、精霊セラと魔導貴族シャルロット嬢が四階の部屋と階が分かれてしまった。少し心配だ。
宿屋の部屋は室内でさらに部屋が分かれており寝室はカラス特別大尉とは別々なのでお互い気を使わずに済む。
境界国とシルクロードを早朝から往復移動したせいか疲れてしまい、オレは宿のソファでぼんやりしてしまった。
オレがふと境界ランプを見るといつもと少しランプの色が違う。
1日のウチに境界ランプで往復ワープを繰り返したせいか、境界ランプの魔力が弱まってしまったようだ。
「なんかちょっとオレのランプ魔力が弱まった気がするんだけど……」
いつもはピカピカに輝いているランプの光り具合が鈍くなっている。
「1日のウチに境界国とシルクロードを何回か往復したからね。かなりの魔力消費だったんだろう。しばらく千夜君は魔法を使わないで休むといい」
カラス特別大尉にそうアドバイスされる。
境界ランプのワープ魔法は無限に使えるわけじゃなかったんだな……。
気を付けないと。
相当疲れていたのかオレはソファで眠ってしまった。
その頃シャルロット嬢も自身のランプの魔力が弱まったと心配し、魔力を高める品物を探しに町に出ていた。
「シャルロットさん、外出ですか? お買い物なら私も付き合いますよ」
「お気持ちは嬉しいですけどセラさんは千夜さんのランプの精霊……ランプ契約の決まりで私は他のランプの精霊をマスターと引き離してまで連れて歩くことは出来ませんの。大丈夫ですわ暗くなる前に戻ります」
そう言ってシャルロット嬢はいつものように魔法猫を肩に乗せて町の露店へと向かった。
(確か魔力回復アイテムが露店にあったような……)
「にゃあにゃあ」
魔法猫がシャルロットの探していた魔法回復アイテムが売られている露店を発見したようだ。
シャルロットは小瓶に入った飲み薬を購入し、露店のベンチで休み薬を飲んだ。
「どうして私はこんなに魔力の消耗が早いのかしら? 境界ランプでワープしたのは千夜だというのに……ねえどう思いますこと?」
シャルロットは猫に尋ねるが何時ものようにニャアとしか鳴かない。
シャルロットは1年前まではこの魔法猫とよく会話をしていた。当時は魔法猫の言葉が理解できたのだ。
けれど今は
「ニャア」
としか聞こえない。
魔力が弱まった証拠らしい。
大人に近づくにつれてシャルロットは少しずつ魔法力が弱くなっている。
原因は分からない。
でも昔のように純粋に魔法が使えることが楽しいと思えなくなったことが理由かもしれない。
魔法は術者自身が魔法のチカラを信じなければ使えなくなるという。
私は何を迷っているのだろう………。
猫に話しかけるシャルロットに露店の商人が声をかけてきた。商人はチャイナ服を着たアジア系の老婆で風水師のような雰囲気でもある。
魔法猫がシャーシャー鳴いて威嚇する。
「お嬢さん、返事もくれないような猫に話しかけて……もしかしたら何かお悩みかな?」
「別になんでもありませんわ!」
シャルロットがその場を立ち去ろうとすると、商人は呪符を宙に浮かせシャルロットに身動きが取れなくなる魔法をかけた。
(なんですの? 身体が動かない……)
「お嬢さん、もしかしたら悪霊に取り憑かれているのかもしれませんね。私がすぐに治療して差し上げましょう」
シャルロットの身体はシャルロットの意思とは無関係に商人の誘う方へと足が動きそのまま露店街から姿を消した。
千夜が目を覚まし、ふと掛け時計を見るともうすぐ夜7時だ。
さっきまで夕方だったのに……。
カラス大尉はまだ仕事中なようで資料を読んでいる。
「休めたかい? 千夜君。これは古代文化研究所に連れて行かれた人たちのリストだよ。悪霊に取り憑かれたという人たちが除霊のために連れて行かれる……そして1年間経って戻ってきた頃には魂が抜かれたような状態になる。この事件の妙な所は……そこだけじゃない。連れて行かれた人たちはみんな若者ばかりなんだ。お年寄りが混ざっていてもいいのに……不自然だろう?」
確かに。
ターゲットが元々若者に絞られているような……。
コンコンコン!
「千夜さん! カラス大尉!」
精霊セラの声だ。
何かあったのか?
「シャルロットさんがお買い物に出掛けたきり戻ってこないんです! 」
?
オレとカラス大尉が顔を見合わせる。
町の露店商人に猫を肩に乗せた金髪の女の子を見かけなかったか? と尋ねると魔法回復のアイテムを購入したあと、恋占いで有名な人気の中国風水師に連れられて何処かに消えたと言っていた。
「年頃の娘さんだし、恋占いか何かを頼んでるんだと思ってそんなに気にしなかったんだよ。有名な占い師に見てもらえるなんて女の子はみんな喜んでついて行くしね」
見かけたという商人たちはシャルロットたちのやり取りを特別不自然に思わなかったそうだ。
シャルロット嬢は結局いつまでたっても宿屋に戻らず、オレたちの調査任務は計画変更をすることになった。
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