某VRMMOFPSの運営が日本政府な件について

辻風 京(旧ブレイン)

プロローグ

新たな世界の幕開け

 ――西暦2098年/国会にて



 とある一室にて、閣議かくぎが開かれていた。


「総理、このままではまずいです……」


 パソコンの画面と睨めっこしながら眉をひそめる官房長官。そのメガネには多量のブルーライトが反射していた。

 足を組んで椅子に座っていた総理大臣は、「ふむ」と唸ると、静かに立ち上がる。


「では、ゲームを製作するのはどうだろうか」

「ゲーム……ですか?」


 官房長官は要領を得ない表情で顔を向けた。


「あぁ、そうだ」


 総理大臣はそう言うと、ニタリと笑った。



 * * *


『自衛隊員の人数が足りていない』


 ――現在の日本における、大きな問題点だ。

 主な原因として、自衛隊に志願する若者が減っていることや、自衛隊内の高齢化が挙げられる。

 ではなぜ、若者の志願が減ってしまったのか。



 時間はさかのぼり、西暦2061年――。

 世界の人口は100億人以上になった。


 少し人間は増えすぎたのだ。


 食料は足りなくなり、貧困地帯にまで行き届かなくなった。そして治安の悪化は世界各地に広まっていった。

 そう、飢えた者たちは〝奪う〟ことを始めたのである。


 そこから始まった幾多のテロ事件。

 戦争を始めた国だって数え切れないほどだ。


 もう、世界は平和じゃない。


 既に〝自衛隊〟ではなく、〝軍隊〟に変わりつつあったのだ――。



 * * *



 総理大臣によると、そのゲームの開発には国力をあげて取り組むらしい。


「ゲームごときで国が変わるか!」


「そんな呑気のんきなことを言っていて大丈夫なのか?」


「国民をバカにするのもいい加減にしろ!」


 ──各メディアからの評価は酷いものだった。



 それでも大のゲーム好きだった日本国総理大臣はやり切ったのだ。


『ゲームの作製に関しましては、只今(ただいま)日本の名だたる企業への参加を要請しております。メディアによる情報の操作は誠に遺憾いかんですが、我々はこの計画を必ず成功へと導かせる所存であります。以後この計画はゲーム名にちなみまして、 War of Cooperation計画と呼ばせて頂きます』



 日本政府主導のFPSが今、始まる──。




 ・ゲーム情報・


 [プレイヤー数:国民全員/約9千万人]

 [マップ:地球全体/約5億1千万km²]

 [ゲーム制作元:日本政府/現代電子遊戯運営省]

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