オーバーロード【・・・失伝?】

トータス

秘話【羅切女・ぶくぶく茶釜?】

 夕日が映えるユグドラシルの岬で、一名のバードマンが太陽に向かって涙し吠えている。


兄貴アニキー!!!! 何で、何で・・・消えちまったんだぁー!! 畜生チックショー!!」《笑》


 思いの丈を太陽に吠えていると、その後ろから憤怒を無理矢理抑え込んだ様な平坦だが、ドスの利いた声が掛けられた。


「黙れ、弟」


 吠えているバードマン=ペロロンチーノの姉・ぶくぶく茶釜だ。


「ぶ、ぶくぶく姉~」


 その声に顔を顰めながらも、プロとしての意地なのか未だ燻る怒りを抑え、優しい声を作って尋ねる。


「・・・何だ?」


 何時もならぶくぶく姉と言われても斬って捨てるが、この時だけは我慢してそれを受け入れた。


「何で、何で、消しちまったんだよ! 兄貴を!!」


 ペロロンチーノは顔をぐしゃぐしゃにして咽び泣きながら、ぶくぶく茶釜に詰め寄る。


「そういう運命だったんだ。判れ、弟」

「わっかんねーよ! 姉貴が、兄貴を消しちまったんだろ!」

「判れ。アレは残しちゃいけない存在だったんだ!」

「う、うわぁー!!」


 泣きながらその場を走り去るペロロンチーノ。

 憤然とその後ろ姿を見送るぶくぶく茶釜。


「・・・行っちゃいましたけど」


 傍でその様子を眺めていたモモンガがぶくぶく茶釜に声を掛けた。


「あー。その、モモンガさん。えー、今回はお手間を取らせてしまい、申し訳ない」

「イエイエ、こちらこそ何時もお世話になっている訳ですし、これ位は・・・」


 ぶくぶく茶釜はモモンガと向き合う様に回りながら、改まった様子を以って言った。


「では、すみませんがモモンガさん」そう言い放ちつつ、徐々に武装した佇まいを見せ付けると、茶釜さんは「死んでいただきます」と続けて言った。


 それに応えるは万全の態勢で受けて立つモモンガ。


「御免被ります」とシリアスに返したモモンガ。


 今からあるモノSSを掛けての決闘デュエルが始まる!

 だが、少し離れた場では、


「いいぞ~! やれやれ~!」

「わはははははは! 今宵のぶくぶくさんは強いぞー!」

「そーだそーだ! 茶釜ちゃん、無茶苦茶つよかった~!」


 さっきまでの泣きは何だったのか、ペロロンチーノもそこに混じっている!


「ぶくぶく姉なんか、モモンガさんに負けちまえ~!」


 と野次と声援を飛ばすアインズ・ウール・ゴウンの面々が決闘を肴に宴会を始めている。

既に全員が負けて、残るはギルマスただ一人という状態にまで追い込まれている!



   ・・・   ・・・



少し遡ると、事の始まりはワールドエネミー・七つの大罪の最後の一体が倒されたとのイベント終了のお知らせが入った処から


「ヨッシャァッ!」

「お疲れー!」

「オツカレサン!」

「で、ぶくぶく姉~! ラストアタック取ったんだから、なんか入った?」


 ぎ、ぎぎぎぃ~! ギンッ! といった具合に眼光鋭く弟を睨みつけるぶくぶく茶釜。


「弟ぉ、この前も私は言ったよなぁ。モモンガさん達は許すが、テメェは許さんって!」

「で! 何々? 何が入ったのさ!」


 興奮気味でそんな剣幕は関係ないと言った様子で聞き出そうとするペロロンチーノ。


「ああ、取ったさ、入っているさ! だが、お前には教えん!」

「ケチー! ぶくぶく姉のけちんぼー!」

「はっはっは! なんとでも言え!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。で、何が貰えたんですか?」


 モモンガは何とかギルマスらしく話に割って入った。


「あー。なんか、鍵が」

「「鍵?」」

「えー、なんかのキー・アイテムだと思うんですけど。えっと、何々?」


   ・・・   ・・・   ・・・

 七つの大罪が滅んだ事により、隠された八つ目の大罪【レイド】・枢要すうよう罪への優先的参加が可能となります。

   参加されますか?    参加されませんか?


 参加されない場合は、八つ目の大罪【レイド】・枢要すうよう罪が一般解放されます。

   ・・・   ・・・   ・・・


「えっと、八つ目のレイドへの優先権、みたいですね」

「「「「「なにぃ!?」」」」」

「するする! 今すぐ参加!」

「待て待て、何の情報もないのにそれは・・・」

「でも、早くしないと一般公開されるみたいで・・・」

「モモンガさん!」「ギルマス!」「どうする?」「参加だよね!」「急いで買い物して来るから待ってて!」「おまたー!」「ありゃー、終わってたかー」「アナウンスがあったから、狩ったんだよねー」


 続々と他のギルドメンバー達も集まって来た。


「あー、もー・・・・・・全く。・・・・・・なら、何時も通りの恨みっこなしの多数決で・・・・・・」


 結果は、全員一致で参加する事に。

 その為に限られた時間で買い物を済ませ、態勢を整えたギルドメンバー達。



   ・・・   ・・・



 私、ぶくぶく茶釜が「参加する」にした途端、他のギルドメンバーとは別の場所に飛ばされた様だ。

 何だか視点が高い。


「ぶ、ぶくぶく姉!?」


 愚弟の声が下の方から・・・


「ん? メッセージか・・・」


   ・・・   ・・・   ・・・

 八つ目の大罪・枢要罪レイド、【虚飾】と【憂鬱】をお選びいただき、ありがとうございます。

 このレイドは世界級ワールドエネミー・シークレットです。

 現在、アナタは【虚飾】に囚われており、【憂鬱】に侵されつつあります。

 この状態を脱却するには、三つの選択肢がご用意できます。


1,ご自分アカウントを犠牲にして即時封印

2,仲間を信じ、協力して【虚飾】【憂鬱】を倒して貰う

3,世界級ワールドエネミーとして、あらゆるプレイヤーを滅ぼし尽くす


1,をお選びいただくと、特別な固有ユニークアバター

2,をお選びいただくと、どんな願いも3つだけ叶える事の出来る世界級ワールドアイテム・魔法の灯篭ランプ

3,をお選びいただくと、世界級ワールドエネミーとしてのプレイを今後も続けられます


 如何なさいますか?

   ・・・   ・・・   ・・・


「へぇー、それは面白い! ド・レ・ニ・シ・ヨ・ウ・カ・ナ~♪」


 と、つかの間迷っていると、愚弟の大爆笑が・・・

 更には笑いを押し殺しているのか、くぐもった笑い声が下から聞こえてきた。


「ぶ、ぶくぶく姉が! ぶくぶく姉が!」

「ぺ、ぺロロンチーノさん! わ、笑ったりしては、ぶふぅ!」

「だ、ダメだ! わ、笑いが!」


 気になって下を見下ろすと、腹を抱えて転げ回るバードマン=愚弟。

 他にも蹲っているメンバーの姿が見えた。


 左右を見ると、巨大な蒼い両手。

 後ろに壁が在ってどうやっても真後ろが見えない。

 見上げると、巨大な肩から上に蒼い顔があった。


 どうやら自分は巨人のへその辺りから見ているらしいと気が付くと、気付いた。

 更には愚弟の呟く「ア、兄貴だ! 姉貴が、兄貴になった!」《ペロロンチーノ主観》という声からして、段々と顔が熱くなって来た。

 更には時折、愚弟から目を凝らしている様子も見られた事から、スクリーン・ショットも撮られている!?


 どうやら、自分の選択肢は一つ。

 一刻も早く、この状況からの脱却を図る事だと。


 迷わず2を選んだ。



   ・・・   ・・・



 世界級エネミーを倒してくれと懇願し、速攻で願いを叶えるべく世界級アイテム・魔法の灯篭を使用。


1,この事を無かった事にして欲しい。 【可】

2,ここに居る全員の記憶を消せぇー! 【無理!】

3,ここから一生出られなくしろ! 【ダメ! 絶対!】


折衷案

2,特定のSSを賭けての決闘なら可能

3,決闘=消去PKが全て終わる位までなら


 ギルドメンバー全員を狩り殺そうと、殺戮へ・・・

 そして冒頭でペロロンチーノが持つ、兄貴と書いて姉貴と読む画像が全て消去されました。



 モモンガVSぶくぶく茶釜の勝敗の行方は?

「イヤー、流石に手強かったよ」

「さすが、気迫が違いましたね」

「・・・ちぇ!」


 推して知るべし?

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