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加藤尽って何者さ?


 明日から始まるカクヨムコンテスト11!

 私は『加藤尽だ!ヨロシク!〜ヤンキー漫画みてぇなオレたちの青春譚〜』で参加します😁

 『加藤 尽』私の他の作品を読まれた事がある方なら、聞き覚えがあるかもしれません。

 私の作品に多く登場する象徴的な舞台。アメリカンダイナー(BAR)のR66【ルート・シックスティシックス(通称ロクロク)】

 この店のマスターが、加藤尽です。

 では、加藤尽ってどんな人?というのが軽く分かるように1つのストーリーを以下に載せてみます。

 この彼の若い頃(高校時代)を描いたのが、今回の参加作品『加藤尽だ!ヨロシク!〜ヤンキー漫画みてぇなオレたちの青春譚〜』となります。

 もし良ければ、予備知識のために一読していただけると分かりやすいと思います😊

 明日の正午過ぎに、4話分を投稿します。その後、翌日からは朝6時46分に毎日投稿します。
 そこんとこヨロシク!(よろしくお願い致します🙇)
 

🍷 🍷 🍷 🍷 🍷 🍷 🍷 🍷 🍷 🍷 🍷

 ノヴェッロ

11月の夜風が、街の灯を揺らしていた。風は鋭く頬を刺し、吐く息は白く……すぐに消えた……。

モールを抜けた先、静かな通りの店にネオンサインが灯っている。

 
店の名は……
R66【ルート・シックスティシックス】

店内には、オールディーズが流れていた。壁には古びたナンバープレートやブリキの看板。静かに息づくその空間には、古き良きアメリカの面影が残されていた。

扉が静かに開く。

カラーン……コローン……

「こんばんは」

ドアの音に応えるように、カウンターの奥から低く穏やかな声が返る。

「いらっしゃい」

グラスを拭いていたマスターが、振り返る。女は軽く会釈をし、コートを脱いでカウンターの右奥に腰を下ろした。

「……ピノ・ノワール、ありますか?」

マスターの手が一瞬だけ止まる。軽く目を細めて、女の顔を静かに見つめた。

「ピノ・ノワール……ありますよ」

「では、お願いします……」

「わかりました」

マスターは棚の奥から一本を選び、小ぶりのグラスに、赤い液体をそっと注いだ。グラスの向こうで揺れる色が、照明を受けて静かに輝いている。

「どうぞ」

女はグラスを手に取り、香りをひとつ吸い込んだ。

「……うん、落ち着く香りですね」

「ピノ・ノワールは、育つのが難しいぶどうだけど……それだけに、いい出来に出会えると、嬉しくなる。どこか、育てた人の想いが残ってるような酒です」

女は小さく微笑みながら、グラスを口に運んだ。

ほんのりと甘く、けれど芯のある味わい。
寒さの残る体に、ゆっくりと染み込んでいく。

カウンターに沈黙が流れる。
けれど、それは寂しさではなく、何かを整えるような静けさだった。

やがて、女がぽつりと呟く。

「……息子が、今年の春に家を出たんです。就職で道外に」

マスターは、うなずくだけで何も言わない。
グラスを拭く手も止めず、その言葉の余韻に耳を澄ませる。

「賑やかだった家が、急に静かになって……今日みたいな夜は、ちょっと手持ち無沙汰で……」

「……なるほどね」

「何をすればいいのか……正直、よくわからないんです」

女の指先が、グラスの脚をなぞるようにゆっくりと動く。

「部屋のドアが開いてるの、見慣れなくて……。いつも閉めっぱなしだったのに、今はもう、開けっ放しで」

「……うん」

「もう一杯、赤をいただけますか?……おすすめのものを」

マスターは、新しいグラスを天井のワイングラスラックから取ると、冷やしておいた別の赤ワインをそっと注ぐ。

「……今のはピノ・ノワールでしたが、次はもう少し軽やかで若い赤。イタリアの“ノヴェッロ”」

女が目を丸くする。

「ノヴェッロ?」

「新酒。熟成されていないぶどうの、勢いそのままのワイン。だから、味はまっすぐで、どこか未完成」

女性は差し出されたグラスを見つめ、小さく笑った。

「…………子どもみたいですね」

「そうかもしれない。だけど、“もうここにはいない”って寂しさも、“ちゃんと巣立っていった”って証しでもある。……息子さん、どんな子でした?」

少し間を置いてから、女は笑みをこぼした。

「……うるさくて、面倒で、生意気で……でも、可愛かったです。……気がつけば、家の中の音のほとんどが、あの子だったんだなって」

グラスを持ち上げ、ひと口。

ほんのり甘くて、フレッシュな赤が口に広がる。

「……軽いけど、優しいですね。美味しい」

「ノヴェッロは、今この瞬間を楽しむための酒。先のことも、昔のことも、あんまり考えずに」

女は小さくうなずき、グラスをもう一度傾ける。

「……少しだけ、肩の荷が下りた気がします」

「いい夜になりましたか?」

「ええ……ひとりの夜でも、こんなふうに過ごせるなら、悪くないですね」

静かに、女の表情が和らいでいく。

やがてグラスが空になり、コートを手に立ち上がった女は、振り返って言った。

「……また来ていいですか?」

マスターは「もちろんです」とうなずきながら、手にしたグラスを静かに拭いていた。

カラーン……コローン……

扉の音が消えるころ、またひとつ夜が深まっていく。
けれど、女の背中にあたる風は、さっきよりもやわらかかった。

4件のコメント

  • ほお、加藤尽さんが10万文字で、てんこ盛りなんですネ⤴️
  • 露氷六子さん
    こんばんは!
    そうです、てんこ盛りです🤭
    わちゃわちゃ楽しい日常だったり、恋をしたり、喧嘩したり、喧嘩したり……。
  • 私には若い頃より今のシブいマスターの方が好きなので「あのマスターが若い頃はこんな無茶を⁉︎」という楽しみ方をさせていただきます🎵
  • 川中島ケイさん
    コメントありがとうございます😊
    渋いマスター良いですよね!
    そのマスターも色々あってこうなったんだ〜。って感じで楽しんでください😄
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