「繁……?」
「……殖、期?」
ウィスティリアとオリヴィアは、聞きなれない単語に目をしばたたかせる。
「ほーら、やっぱり。ベッ君もガッちゃんも、あなたたちの嫁ちゃんに、我が一族の生態を説明していないでしょう。これだから男は……」
予想通りだと、溜息を吐き出しそうな表情のティエンスー。
「同族の嫁を貰うならともかく、あなたたちのお嫁ちゃんは元・人間。共に一緒に生きていくだけじゃ、ダメでしょ! きちんと色々お話ししなさい!」
めっ! と、母親が幼い子にするかのように、ティエンスーは顔を顰めた。
ガードルフとディーノは無言のまま。だが、どこかバツの悪そうな顔をしていた。
「どうせお嫁ちゃんとイチャイチャラブラブしていてそーんなこともうっかり忘れていたんでしょうけれど。女性にとっての産む・産まないの選択は、よーく考えないといけないんだから」
「ふははははは、我が息子とあろう者どもが、新婚に浮かれているとは!」
ディアヴォルが笑うが……、そんなディアヴォルをティエンスーは白い目で見た。
「あなたもそうだったわよ?」
「うっ!……ダークドラゴンとの戦いで負った古傷が……痛む……」
ワザとらしく胸を押さえて床に倒れるディアヴォル。
ガードルフとディーノはそんなディアヴォルのことは完璧に無視をした。
「かつてのあたくしの苦労を、息子のお嫁ちゃんたちにはさせたくないの。……というわけで」
ティエンスーは勢いよく、両手の掌を合わせた。「パンっ!」と掌が音を立てたのと同時に、恐ろしく巨大な壁が出現した。
壁のこちら側にはティエンスー、ウィスティリア、オリヴィア。
壁のあちら側にはディアヴォル、ガードルフ、ディーノ。
「さ、あたくしたちは女同士の話があるから。その間、あなたたちはそっちで遊んでいて」
壁は、空に達するほどに高い。そして、広い。
ウィスティリアとオリヴィアには見えないが、壁のあちら側からは、何やら複数の咆哮が聞こえてくる。
「あ、あの……。獣の叫び声のようなものが聞こえてくるのですが……っ!」
ガードルフは大丈夫だろうかと、ウィスティリアはティエンスーに詰め寄った。
「あら、大丈夫よ。たかが闇黒の魔王ディアボロスに悪魔嬢リリスに大翼のバフォメット、幻獣王キマイラ、幻爪の王ガゼル、コーンフィールド コアトル、シャドウ・ディストピア、闇王プロメティス、ジョングルグールの幻術師、死王リッチーロード、影王デュークシェード、あ、あと何を召喚したかしら……? ドラゴンとヒュドラと……ガルムとクラーケン程度だから、半時くらいはウチの夫と息子たち、一緒に遊べるんじゃないかしら?」
「あ、遊ぶ……?」
オリヴィアは、顔をひきつらせた。
「ふふふふふー、大丈夫よ、大丈夫。さ、お茶をしながらいろいろお話しましょうね」
ティエンスーがそう言ったのと同時に、壁の向こうからはディアヴォルの「はははははは!」という高らかな笑い声が聞こえてきた。
「あなたー、がんばってねー」
ティエンスーが言えば、ディアヴォルは妻からの声援に即座に応えた。
「我が愛しの妻よ!その話が終わるまで、我は愛しの息子たちと共に暗黒より現れし魔獣を倒しておこう! よいか、息子たちよ、闇の波動に飲み込まれるなよーっ!」