──そこは、見覚えのある清嶺学園の教室だった。だが、窓の外には──
無数の「目」と、果てしなく広がる、写真の海があった。
「……っ!」
その瞬間、無数の目がぐるりと視線を動かし、ゆっくりと瞬きをした。
見下ろすように無数の目がこちらを見つめ、波のようにうねる写真たちは誰もが笑顔を浮かべている。けれど、その瞳には生気がなかった。
美優は、ハッと息を呑んだ。
この写真の生徒たちは──まだ"ブックマークするか迷っている途中"だ。"カカオの友達"と繋がりかけている状態で、最後の一押しを迷っている。
だが、私自身はどうだ?
教室の中央に"それ"はいた。
人の形をしているが、輪郭が曖昧で、茶色く滲んだ影。目鼻立ちははっきりしないが、"そこに"顔があると分かる。
そして、その輪郭の中には──
いくつもの"顔"が浮かんでは消えていた。
その中には消えた清嶺学園の生徒の顔もあった。
それらは明確な形を持たず、もやのように"それ"の体の中をさまよっている。"それ"は、美優をじっと見つめた。
「美優。ブックマーク押さないとね」
その声は、心の奥底に直接響くようだった。
美優の胸が、温かくなる。
(……そう、だよね。)