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『勇者』『魔王』のルーツ

 素人が適当に調べただけなので多少あまくてもご容赦ください。

 カクヨムコンテスト10に合わせて連載を開始した『親友の勇者が魔王になってしまった件』でありがたくもいただいたコメントに返信してる際に思いついたのですが……。

 カクヨムでも小説家になろうでも非常に多い『勇者』『魔王』という単語。
 2025年版の『このラノベが凄い!』の文庫部門第二位が『誰が勇者を殺したか』という話であるように、『勇者』『魔王』というキーワードは、もはやその説明をする必要がないくらいその意味が皆さんに浸透しているかと思います。

 なのですが……。
 一体いつごろからこうなったんだろう、という。

 ちなみに、『魔王』という言葉の『語源』自体ははっきりしています。
 あの織田信長が自らをそう称したことでも知られる、『第六天魔王波旬』がそれです。
 第六天とは仏教における世界観での欲界の中にある六欲天の一つ、最高位にある他化自在天のことを指します。そこの魔王、という意味ですね。
 ゆえに基本的に魔王というのは仏教用語です。

 思い返しても、それ以前に『魔王』というのはあまり一般的な用語ではありません。子供の頃で思いつく『魔王』は、ホントに『ハクション大魔王』とかそのあたりです。
 あとはキリスト教系において、天使の対抗者として知られる存在『悪魔』の王、ということで『悪魔王サタン』というのがありますが……これがいつからあるかはちょっとわからない。DemonやDevilが『悪魔』とよく訳されるので、Demon Loadで悪魔王、となるケースから魔王となったのかもですが……。
 言い換えれば、明確に『魔王』という概念はないのかもですね。

 ちなみに、今よく知られる意味で日本で最初に『魔王』と称されたのは、指輪物語の邦訳のようです。こちらが、『Witch-king』を『魔王』と訳したようです(Wikipedia『魔王』より)

 なお、世界で一番有名な『魔王』はおそらくシューベルト作曲の『魔王』でしょうが……。
 こちら、原題は『Erlkönig』といって、このままではWEBのドイツ語翻訳などでは翻訳されません。
 気になったのでChatGPTで調べたら、元々は『ハンノキの王』という意味があるそうですが、そもそもシューベルトは実はデンマークの伝説である『ellerkonge(妖精の王)』をイメージしてたとも考えられるそうです。
 あるいは本来の意味は違ったのかもしれません。

 少なくとも日本語における『魔王』という存在は、仏教用語としてのそれ以後はあまり意味を持つ存在ではなく、おそらくかなり後代、要するにゲームやサブカルチャーの影響を受けて今のイメージになったと思われます。

 そしてもう一方の『勇者』について。
 この言葉も実はかなり古く、最古ではなんと論語に登場してるそうです。
 論語の一説に『智者不惑、仁者不憂、勇者不懼』というのがあるそうで。
 つまり古代中国にすでに『勇者』という概念はあったということに。
 ちなみにこれ、『勇者は懼《おそ》れず』と読むので、まさに『勇気ある者』という意味合い。今とほぼ同じ意味だと思われます。

 それ以後、『勇気ある人、勇敢な人』という意味合いで使われ、英語だとBraveがほぼほぼそれに該当。この辺りの認識は洋の東西を問わない感じですね。
 ただこれらは役割というよりは対象に対する賛辞でした。

 それが今のようなイメージになったのは、ほぼ間違いなくドラゴンクエストからです。魔王についても多分このイメージが一番大きいと思います。
 あれで出てきた『ロトの勇者』という『役割』が以後、勇者という『職業』すら成立させてしまいました。
 そういう意味では、本当に堀井雄二さんはすごいと思います。
 例えば『ロトの戦士』とすることだってできたというか、その方が多分概念的には普通だったのに、そこに『勇者』という単語を当てたわけですから。

 そしてドラゴンクエストで、『ロトの勇者が魔王を討って平和を取り戻した』という伝説が提示されてるので、以後勇者は魔王を倒す存在とされたんだと思います。

 結論から言えば、今おそらく特にラノベ界隈で共有されている『勇者と魔王』の概念は、ほぼ間違いなく、完全にドラゴンクエストによって提示された概念でしょう。
 そう考えると、ドラクエというタイトルの影響力を改めて思わされます。
 ドラクエをやったことがない人でも当たり前に共有してますからね、このイメージ。本当に凄い。

 ちなみに連載中の『親友の勇者が魔王になってしまった件』も、もちろんこのイメージを踏襲しています。まあただ、私が書く作品なのでそう素直に行くかといえば……ですが。
 かなりびっくりな内容になっていくと思いますので、是非読んでみてください。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

カクヨムコンテスト10参加作品(一部)

 ●転移直後に竜殺し【異世界冒険】
 https://kakuyomu.jp/works/16817330660905115993
 大学生になる直前の青年が異世界転移して剣と魔法の世界を冒険するお話です。
 基本二日に一回、0時に更新。
 いよいよ第二部開始。現在の舞台は……。

 ●白雪姫の家族【魔法のiランド(現代恋愛)】
 https://kakuyomu.jp/works/16817330656060480073
 超スローペースで進む年の差(八年)ジレジレ恋愛モノ。
 最初ヒロインは高校一年生でしたが、今や大学一年です。
 でもまだくっついていません(笑)
 基本四日に一回、0時に更新。

 ●親友の勇者が魔王になってしまった件【異世界冒険】
 https://kakuyomu.jp/works/16817330660454635503
 カクヨムコンテスト10用の新作です。
 私にしては珍しいタイトル。
 その上『勇者』『魔王』といったキャッチーな存在がある話。
 なお、主人公は前世の記憶として21世紀の地球の記憶があります。
 いわゆる異世界転生モノ。
 これに関してはカクヨムコンテスト10の期間内に完結予定です。
 基本毎日12:12に更新。

 ●フェイク――偽りの結婚から始まる伝説――【短編】
 https://kakuyomu.jp/works/16818093088671817389
 これに関しては以前『アイデアだけの場所』にあったものです。
 それを抜き出して短編化しました。
 単に短編でも一つくらい出したかっただけです……すみません。
 下手に受賞されるとむしろ続き書けとなりそうなので困るとも。
 まあまずありえないので気にしてませんが(ぉぃ

4件のコメント

  • ハクション大魔王、思わず笑ってしまいました。そうか、言われて見れば彼も魔王ですね( ;∀;)
  • > 福山典雅 様
    はい。あれも『魔王』なんですよ(笑)
    あとはアラジンと魔法のランプのあれも、邦訳だと『魔神』となってることが多いですが、あるいは古い邦訳だと『魔王』というのもあるのかも。ハクション大魔王はあれがモチーフですしねぇ。
  • 「勇者」という響きで真っ先に思い出したのがイギリスの民族音楽の『スコットランドの勇者』(もちろんバグパイプ)という曲でした笑
    我ながらなんてマニアックなのだろうか、とw
  • > アルテミス様
    またマイナーな(w
    でもタイトルは聞いたことがある気がする。
    『勇者』という概念自体はあらゆる地域にありますよね、実際。
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