月の記憶
https://kakuyomu.jp/works/1177354054919093529先日ようやく「完結」の文字を打つことができました!
ここまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。
カクヨムで公開したのは2021年の3月12日なので、4年ちょっとの連載でしたね。
いろんなところでぽつぽつ語っているのですが、月の記憶は個人サイト時代に連載を始めた物語なので、そこから数えると……軽く10年は超えています。はっきり時期は覚えてないけど、下手したら20年くらい経ってるかもしれません。怖いね…自分の年齢がw
そこで連載している時から月記憶は2部構成だったし、ラストも決めていたのでいつかは完結させるつもりでした。そう、いつかは…。
カクヨムに投稿しだすとカクコンとかいろんなコンテストに参加したくてあれこれ手を出しちゃって…月記憶はどうしても後回しにしがちでした。ストーリーの大筋は決めていたから自分の中でエタることはないと確信はしてましたが、読者の方にしたら「また更新止まったな…本当に完結するんか?」って不安を覚える方も多かったことでしょう。それでも最後まで読み切ってくださった皆様には、本当にもう感謝しかありません!ありがとう!!!!
【ここから先はネタバレ解放区です。執筆中に月音が思ったあれこれを書いていくよ】
◆テーマについて◆
月の記憶は1部を崩壊、2部を救済のテーマで書いています。なので1部はとことん血が流れるし、絶望てんこ盛りだし、救いはないし、しんどいし…読むのもつらい展開が多かったことと思います。
その点2部になると、あとはもうすべての救済に向かって突っ走るだけなので安心して読んで……読んでいただけ……る、はず……?
……ご、ごめん。
それでもいろいろありましたよね。リシュレナのこととかレティシアのこととか。でも1部に比べると血は少なかったんじゃないかなと思います!(何だよ。血が少ないって)
2部でとても重要なポイントとなる時間魔法ですが、過去を改変しちゃうと未来にも影響が及ぶとか…そのあたりは若干SF絡んで頭パンクしそうだったんですが、何とかファンタジック要素を詰め込んで力業で乗り切りました。魔法最高! ガチのSF作家様とかに見られたらヤバイかもしれないけど、ファンタジーなんで!
これ、ファンタジーなんで!!(切実)
◆最終話について◆
本当は最終話のエピソードなしにしようかなとも思ったんですよね。
でも1部でアレスたちが始めた物語だから、やっぱり締めるのは彼らなのかなって。
それにこの暖炉の前で家族とお話しするっていうシーンは、実は個人サイトで連載してた時に1部のラストで書いたシーンを改良してます。その時の1部のラストはおばあちゃんになったロゼッタがアレスたちの物語を孫に聞かせているとういう内容でしたが、〇十年を経てそのシーンは幸せなアレスたち家族の一場面となりました。いやぁ…感慨深いですねぇ。しみじみ…
◆ヴァレス結末について◆
ヴァレスのラスト…息子のカイルがいるなら、やっぱりそういうことになるよねって。きっと皆さんの想像通りの展開だと思うけど、あの一瞬ヴァレスは父親になれたんじゃないかなと思います。ずーーーーっと願ってやまなかかったエルティナとの再会も果たしますが、そこは瘴気に覆われてヴァレスの姿がエルティナには確認できないっていうのがね、また報われない男ヴァレスだよなって。
でも今までヴァレスは罪のない人も多く傷つけてきたので、それなりのけじめは必要なんじゃないかなと思ったわけです。とはいえヴァレスも救うというのが目標のひとつでもあったので、彼の魂は過去の自分と融合して、今度こそエルティナとカイルと幸せに生きていく未来にしました。
それがエピソード147話の「新しい未来」になるわけですね。
147話 新しい未来
https://kakuyomu.jp/works/1177354054919093529/episodes/16818792435764794190ついでに言えば、ヴァレスがカイルとエルティナをかばったシーン、本当はちょっと違った感じになる予定でした。その没シーンをしれっとここで供養させてください。
**********************************
(145話 束の間の邂逅…の冒頭に使用するはずだった)
細く頼りない三日月を朱に染めて、暗い夜空にバルザックの肉片が散る。
誰の名を叫んだのか、定かではない。ただ、「カイル」とも「エルティナ」とも呼んだような気がする。
視界の片隅に、懐かしい銀色の光を見た。そうかと思えばバルザックが己の力を凝縮し纏わせた大剣を投げ飛ばし、追想に囚われたヴァレスは完全に出遅れてしまった。
たった一瞬。一秒にも満たないわずかな差は、けれども確実に運命を左右する一撃をバルザックに許してしまった。
ヴァレスの脳裏に、あの血塗られた惨劇が走馬灯のようによみがえる。気が狂うほどに長く生きてなお、未だに色褪せることのないエルティナの鮮血。慟哭。憎悪。そして喪失。あの絶望を再び味わうのかと心が悲鳴を上げると同時に、ここで失敗しても月の結晶石を使ってエルティナを復活させるという道が残されていることも冷静に判断できた。そう思った瞬間、ヴァレスは驚愕したように目を瞠った。
目の前に生きたエルティナがいるというのに、ヴァレスはもう死んだエルティナを求めてしまっている。ヴァレスにとって、もはやエルティナは自分の孤独から目を背けるための手段になっていたのだ。
絶望した。エルティナの魂に拒絶されたあの夜から、いや、それ以前にエルティナを殺されたあの夜から、ヴァレスの思いも愛もとっくに狂っていたのだ。
こんな自分を、一体誰が必要としてくれるだろう。
誰もいない。
エルティナだけを求め続け、すべてを排除してきたヴァレスに寄り添う者など、ただのひとりもいない。これではバルザックと同じではないか。
ヴァレスは孤独だ。魔界王になったあの夜からずっと、ヴァレス自身が孤独を引き寄せ、孤独に恐れ、泣いてきた。バルザックが死に際に放った一言のように、きっとヴァレスはこれからもずっとエルティナだけを求め、ひとり孤独に生き続けるしかできない。
そう、諦めたはずだったのに。
『お前は俺の存在に、少しでも動揺した。だからそこにまだ、お前の人間としての情があることを……信じたい』
ヴァレスに一縷の希望を託したカイルの言葉が頭に響き渡った瞬間――体が勝手に動いた。
何をしているのか、自分でもわからなかった。けれど体が動いた瞬間、もうずっと鉛のように重かった心の奥が少しだけ軽くなったような気がした。
魔界王になってから淡々と音を刻むだけだった心臓が、今までにないくらい強く早鐘を打っている。その焦りを覚える鼓動のさざなみに、ヴァレスはただの人間であった頃の自分を思い出した。
**********************************
見てわかる通り、こちらはヴァレスの目線になってます。
個人的にはヴァレスの心情もわかって好きなんですけど、どうしてもある一文がしっくりこなくって…。
>目の前に生きたエルティナがいるというのに、ヴァレスはもう死んだエルティナを求めてしまっている。ヴァレスにとって、もはやエルティナは自分の孤独から目を背けるための手段になっていたのだ。
ここ。
ヴァレスはここで失敗しても未来に戻れば月の結晶石を使ってエルティナを復活することができるんですよ。だからこの時代のエルティナに固執する必要もない。そう思ってしまうほど、ヴァレスはもう心の一部が壊れているんですよね。
狂ったヴァレスにとってそう思うことは間違いじゃない。でも……!うぅーん!でもやっぱりヴァレスにはエルティナ一筋でいてほしい。という作者の独断によって、このシーンは没になりました。
◆没シーンといえばもうひとつ◆
ラストでリシュレナが時間魔法を使ってアレスとレティシアを過去へ送った後。
実はリシュレナは時間魔法の使いすぎて倒れて眠りの森の美女状態になる予定でした。そこへカイルが足繫く通っていて1年とか平気で過ぎてて、やっとリシュレナが目覚めたシーンでエンディング……とかにしようと最初は思ってました。
……うん……わかってる。
最後の最後までキャラに試練与えすぎだって。
もう後はエンディングに向かって突き進んでるところ、次話開いたら「時間魔法の反動でリシュレナが深い眠りに落ちて1年が経った」とか出てくると「えぇ!?」ってなっちゃうよね(;´Д`)
さすがにこれは…と思って、現在のような形に落ち着きました。
みっちりプロットを立てて書く方じゃないので、ぼんやり思い描いてた話と違う感じで進んでいった個所はたぶん他にもたくさんあるんだろうけど、とりあえずラスト付近の没ネタはこんな感じでした。
◆おわりに◆
長い物語をここまで読んでくださった皆様に感謝も込めて、月記憶の裏側をちょっとだけ載せてみました。
月記憶同様にこの近況ノートもここまで読んでくださってありがとうございます。
レティシアの住む天界ラスティーンから始まった物語、月の記憶。
ほんとのほんとに完結でございます!!
ここまで読んで下さって、本当にありがとうございましたーーーーー!!