• 現代ファンタジー
  • 異世界ファンタジー

SS2 エチチ大好き悪神「アンリマユ」:誰もが一度は通るであろう道:R18結界編

 SS1の続きです!



 タタタッ。

 季節は夏。
 膨大な魔力を封じ込めながら、悪神アンリマユは人間社会のルールに従い、清楚な白ワンピ姿で街を歩いていた。
 目的地は、エチチ本が並ぶ――あの聖域。
 道行く人々が思わず足を止める。

「ねぇ、あの子可愛くない?」「うわっ、すげー綺麗」「俺、声かけようかな?」「やめとけ、お前じゃ振られておしまいだって!」「全身真っ白、可愛い~」

 人々の視線と賞賛の声が飛び交う中……。当の本人、アンリマユは……

「黒髪ポニーテールの下着姿……柔道?……純愛……タイトルは【ピーな君にピーるピーー】」

 事前にチェックしていた本の表紙を頭の中で思い浮かべていた……。
 エチチ本の事でいっぱいである。
 早歩きで現地へと向かう。

…………………………………

――数時間前。魔界。

「ア、アラクネ……これは少し大胆と言いますか……その……スゥースゥーするのですが……」

 アンリマユは、自分のスカートの裾をそわそわと引っ張りながら、妙に落ち着かない声でそう言った。

 目の前には、専属スタイリスト(仮)であり、従者であり、魔界一の悪戯好きでもあるアラクネが立っていた。彼女は妖艶な笑みを浮かべて、さらりと答える。

「ふふ……いえ、アンリマユ様? 人間の女性はね、全身白コーデを着こなす時、パンツを履かないのが基本なんですよぉ~?」

「なっ……!そうなのですか!?ワタシ、そんな人間の風習、知りませんでした!」

 もちろん、真っ赤な嘘である。

 アラクネは、主であるアンリマユの無垢さと流されやすさを知っていた。
 主への忠誠心を保ちながらも、時折、こうして遊んでいる。

「だから、ぜっったいに、履かないでくださいね~?」

 普通の人なら「え?」と疑うはずの言葉だ。だが――

「分かりました!」

 即答である。

 アラクネは小さく「よし」と呟き、くるりと踵を返してから、誰にも見られぬように口元を手で押さえ、ニヤニヤと笑みをこぼした。

 こうして、悪神アンリマユは“ノーパン”のまま、人間界へと旅立つこととなったのだった――。

…………………………………

 割と大きなビルの二階。
 階段を上がり、ついに目的の店へとたどり着く。
 ドアを開けた。

 カランッ。

「いらっしゃいませ~」

 店員の声にピクリと反応し、アンリマユは反射的に礼。
 気配を殺しつつ、左手奥へと進む。

 デデンデンデデン デデンデンデデン。

 脳内に鳴り響くサスペンスBGM。
 目の前に立ち塞がったのは、黒のレースカーテン。
 その真ん中には、堂々たる「R18」の文字。

 ……目的地だ。

 しかし、カーテンの数センチ手前で足が止まる。

 ゴクリ。

 チラッ、チラッ……。

「な、何故でしょうか……。あと一歩前に進むだけなのに……!」

 誰もが一度は通るという、“R18の結界”。
 それは、圧倒的な力を持つ悪神アンリマユでさえ例外ではなかった。

 ――恐るべし……R18コーナー。

 レースがひらりと揺れた。
 エアコンの涼風が、カーテンの隙間から漏れ出てくる。
 その向こうに、目当ての本の表紙が見えた。

「ありましたっ!」

 目を輝かせるアンリマユ。
 先ほどの戸惑いが嘘のように晴れ、足を踏み出した……
 
 だがその瞬間――

 タッタッタッ!

「――っ!?」

 背後から疾風のごとき足音!

 ひらっ。フワン。

 カーテンを華麗に押し分け、まるで通い慣れた旅人のように、誰かが滑り込む。
 その動き、迷いゼロ!

「あっ!」

 バッ!

 タッタッタッタッ――!

 ・
 ・
 ・

 彼女も遅れてカーテンを持ち上げ中へ……

 ヒュ~~~。

 中に入ってすぐ正面、新刊コーナー。
 そこに……あった。確かに、あったはずなのだ。

「……あっ」

 だが――今、そこにあるのは「空のスペース」だけ。

 ガクンッ 

 フワン……。

 ガクッ

「……なっ……無くなってしまいました……」

 続く……。

4件のコメント

  • もうアンリマユがヒロインで良いんじゃないかなと(  ̄▽ ̄)
  • 自分も、あれ?メインヒロインのクルサよりも可愛くなっているのでは?と思い始めてきましたw
  • …T.Tさんの性癖全開疑惑w
  • こういう感じのおっちょこちょい豊胸ヒロインが好……ゴホンッ!
    任せてください!全開フルパワーでいかせてもらいます!
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する