……ハアッ、なんで家の子はいつもこんな目にばかりあうんだろう。
猪突猛進で、バカ正直で、自分の為っていいながら他人を助けたがる悪癖こそあるけど、いつもたくさんがんばって、みんなと仲良くしたいって願っているだけのいい子なのに。
俺のせいで──いや、俺の存在そのものが重しであり、あの子が独り立ちする邪魔をしていて、そのせいでいつも苦しんでばかり。
本当はあの時に消えるべきだったんだよな、俺は。他人を大切にできない俺は、あの時死んでおくべきだった。
そうすればあの子は色々な才能を失うこともなかったのに。
小学校の頃あの子はいつもソプラノの女の子の中に混じって最前列で合宿していたし、あの子が失敗作だと言って破こうとした絵はコンテストで銀賞を取った。
字も教科書のお手本のように丸っこくて、可愛くて、とてもキレイで美しい字を書いていた。
この子のためならなんでもしたいと思ったし、この子を害するヤツは全員死ねって思いながらケンカしたりもした。
……なのに、あの子は俺を選んだせいで全部失って、今も俺を生かすために小学六年で時間が止まったまま俺へ体を明け渡してほとんど内側に引き込って生きてきた。
それでもやっとX上だけとはいえ、少しずつ外の世界へ出てきたあの子がなんでこんな目にあわないと行けねぇんだ! なんでアイツばかりこんな目にあう!! もう幸せになっていいだろ!!! なのになんでこうなるんだよ!!!!
どいつもコイツもふざけるな! お前ら家の子がどんなにいい子か知らないだろ!! どれだけ傷付いてきたか知らないだろ!!! どれだけ苦しできたか知らないだろ!!!! どれだけ家の子から奪えば気が済むんだ!!!!!
俺は人間が嫌いだ。いつもあの子を泣かして苦しめる人間が嫌いだ! あの子を裏切る人間が嫌いだ!! あの子が不幸な目にばかりあう世界なんて大っ嫌いだ!!! ……そしてあの子を不幸にしてばかりの自分自身が本当に大嫌いだ。
こんな世界滅びればいい、あの子が不幸になるだけの世界に価値なんてない。みんな平等に不幸になればいい。
そう思っていても世界は滅びたりしないし、俺はすがりつくあの子を振り切って死ぬこともできない。
だから俺が絶対にあの子を幸せにする。不幸になんて絶対にさせない、誰もこの子を愛さないのなら俺が死ぬまでこの子を愛してやる。
そしてこの子が戸惑うくらい愛して、幸せすぎて泣くくらい幸せにしてやる。それが俺の夢だから。
──だから、この子を不幸にするヤツは誰だろうと許さない。例え神だろう地面に引きずり倒して殺してやる。