多分、本編とは無関係なIF小ネタ
今回は、サポーターじゃなくても見れる感じに
※追記
やっぱり本編に乗せておくことにします!
この話が本編に書いておかないと、正直マート株がry
☆★☆★
――マートは幼少のころから、腫物のように扱われてきた。
家事手伝いをしようとすれば、邪獣人の呪いが周囲に伝発することを忌避されて、まともにさせてもらえず。
花冠を作っても、笑顔で褒めてはくれるが、触れることさえしてくれず。
獣化の力を使い、狩りをしても、おぞましいものを見る眼で見られ、以降二度とするなと叱られた。
特に姉や父との接触に関しては、基本的に禁止されていた。
無論、姉であるベネディクトは、自分に優しく、笑顔で接してくれたが、だからこそ、母が姉と直接接触することをできる限り避けるように言い、それを寂しく思っていた。
更に父とは、遠目で挨拶や会話こそするが、それ以上に発展することはなく。
父に撫でられる姉の様子をいつも羨ましく思っていた。
もちろん、そこに愛がないわけではないことはマートは十分にわかっていた。
できるだけこちらを気遣い、歓待してくれる姉に。
手紙やプレゼントを頻繁にくれる父。
なによりも、それでも自分を育て、守ってくれる母に対しては、感謝の念に堪えない。
『ようやく見つけましたよ、我ら獣人の、選ばれし姫君よ』
しかし、それでも。
いや、それだからこそ、マートはそれ以上を求めてしまった。
教団と呼ばれる獣人の集団は、そんなマートを歓迎し、敬い崇めてくれた。
自分の呪われた獣人の血を、すごいものだといい、呪いそのものを神の恩寵と肯定してくれた。
『あなた様が、神のより任された使命は、その祝福をすべての人間へと分け与えることです!
そうすれば、差別も侮蔑も忌避もない、そんな世界を作られることなるでしょう!』
そんな甘言に踊らされ。
尊敬すべきはずの父も、『同じ獣人にすればいい』と誘われ、襲撃をするに至った。
母や姉も、隠すでなく、獣人の世を作る同志として、道ずれにしようと思った。
――しかし、結局それらはすべて失敗した。
母は、心を教団に売らなかったせいで、神に好かれる獣人を産む母体して、消費された。
父は、教団とともに襲撃したことにより、完全敵対し、毎日父の部下がこちらを殺しに来た。
姉は、教団により、父母を失うことになり、姉自身にもひどい手傷を負うことになり、そのまま行方をくらませた。
――気付けば、私はすべてを失っていた。
結局教団は、私の事を真に思いやっていなかったのだろう。
教団に入っても、私は真に共も触れ合いも手に入れられず。
母という温もりを失い、姉や父という心のよりどころも失い。
教団も、日々の父の部下の襲撃に根を上げ、ある日私を置いて、全て逃げ出していた。
私が殺されも、犯されもしなかったのは、きっとこの身に宿る邪獣人の呪いが怖かったからに他ならないのだろう。
彼らも邪獣人の呪いが祝福とほめたたえながら、結局彼らは一度もこちらを触ろうとせず、また、邪獣人になろうともしなかった。
それがすべてなのだろう。
それでも私は、それが間違いだと信じることができず生きていた。
教団は、止む負えず私を捨てたのだと、教団の教えは嘘ではないのだと信じ続けてきた。
でなければ、きっと、私の家族を捨てた選択、その人生全てを否定することになってしまうから……。
「でも結局はそれは、間違いだったんだなって」
しかし、それでも今のマートは、それは間違いだと認めることができた。
なぜなら、自分は温もりを得ることができたから。
家族を失い、取り巻きにも見捨てられ、盗賊になり、奴隷にまで落ちた。
――それでも、本当に欲しいものに触れられた。
マートの主人(個人的には友人兼雇用主)であるイオは、高名でありながら変人な司祭であった。
自分が呪われた邪獣人であると知りながら、なおそれお受入れてくれた。
邪獣人と知ってなお、積極的に接触してくれた。
「よ~しよ~し、いい娘いい娘」
「え?邪獣人が怖くないのかって?
こちとら死霊術師で司祭だぞ、呪い程度無効化するわ」
イオの接触は、非常に情熱的で、愛に満ちていた(マート視点)。
只人でありながら、こちらを恐れず、そして無知からではなく、その実力を持って、笑顔でこちらを受け入れてくれた。
(みんな邪獣人にすれば、いや、獣人同士になれば、私達は分かり合える。
なんて言うのは……結局は幻想だったんだな)
そして、マートは悟る。
教団の教えは嘘であったと。
わが身に宿る邪獣人の呪いを広め、全ての人が獣人になれば、人々は理解し合える。
そのような話は、幻想なのだということを。
なぜなら、ただの人間であるはずのイオがこんなにも、自分を受け入れ。
自分を崇めてきた獣人たちとその教団は、あんなにも上辺だけだったのだから。
「だからね、お姉ちゃん。
お願いがあるの」
それゆえに、マートは宣言することにした。
母の死により、離れてしまったはずが再び再会できた姉の姿。
触れられはしなかったが、いつも優しく、いつも私のことを一番に考えてくれ。
欲しいといったものはすべてくれたし、それでもなお笑顔でこちらを受け入れてくれた自分の自慢の優しい姉。
「私もずっとずっと謝りたかった。
あんな教団のせいで、お姉ちゃんと母さんを傷つけたこと。
ずっと謝りたかった!
素直にごめんと言いたかった」
しかし、それはできなかった。
なぜなら、姉は自分よりもずっと恵まれていると思ったから。
わずかな獣人の呪いをもっているだけで、ほとんど只人である姉を嫉み、うらやむ気持ちが先行してしまったから。
「でも、私もお姉ちゃんにも、謝りたい!
謝って、仲直りしたい!
これ以上お姉ちゃんを、悲しませたくないの」
それゆえに、マートは宣言する。
邪獣人である彼女が唯一、姉に仲良くするための手段。
お互いの気持ちが整理でき、あの優しかった姉をこれ以上悲しませない自分になる。
そんな素敵な方法を!
「だからお姉ちゃん。
最後のお願い!
イオさんとその仲間、私にちょうだい?
一生のお願いだから」
かくしてマートは、はじめて姉が修羅になるところを、見ることになるのでした。