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お前がお客様の財布を心配する必要はない。

なるほど。

独立開業してるオーナー美容師さんとお話したときの言葉。

開業前の店舗で、誰よりも物販売上の高いオーナーにそう言われたそう。

仕事にも慣れてきて、最近気づいたことがある。

私は技術者であり、販売者なんだって。

セラピストは技術に徹することができてたし、身体や癒やしについてはどんな質問も答えてたし

でもそこでお得なチケットは売りきれなかった。

癒やされに来てる方に最後にお金の話みたいになるのが不快にさせるかなとか思ってて。

お得だってわかってるお客様は自分から購入されてたけど。

だから意識したこと無かったし、ひたすら技術とか癒やしとかを考えて学んでた。

だけども。

ここでは美容商品を扱ってて、お客様も明確に改善したい、キレイになりたいって目標がある。

市販の商品とサロン用の商品違いが腑に落ちた今

正しい美容知識をもってお客様へ良い商品をおすすめする、それも仕事なんだなって。

それからYou Tubeで販売のコツとかを調べ始めたら私の感覚にあってる接客を伝えてる方の動画に巡り合った。

その方の動画を見て、一つ思い出したんだよね。

丁度二十歳くらいのころ。

全然ブランドとか無知で、興味なくて、おばさんみたいだなって思ってた頃。

当時付き合ってた彼が私よりも8つ歳上で

その彼が「誕生日にヴィトンのシガレットケースがほしい」なんつーことを言い出して

実は初めて付き合った男性でもあったし、背伸びしたかったし内心は嫌々ながら行ったんだよね。

私からしたら当時の名古屋も、私の地元よりもずっとずーっとずっと都会。

どぎまぎしながら初めて行ったブランド店。

お目当てのシガレットケースを彼と一緒に選んで、包装を待ってて。

上等な絨毯の上に土足でいるというフワフワとした違和感と、高そうなソファーの質感。

彼がなんで普通にリラックスしていられるのか分からなくて、居心地が悪かったのを覚えている。

「メッセージカードはつけられますか?」そう聞いてきたとても感じのいい長身でスーツの男性。

「お、お願いします」

包装が終わり、うやうやしく出口まで買い物袋を持ってもらう経験なんて今考えたら、あれが人生で初めてだ。

私にすっと差し出したその袋を、思わず「あ、彼に」と言うと

「いえいえ!是非、彼女様からお渡しください」

そう言われてとても丁寧に私に差し出してくれたなあ。

何故だかとても感動した瞬間だった。

一気にヴィトンというブランド、果ては「ブランド」の意味がわかったというか、嫌悪感が「素敵」になったのを覚えている。

またあそこに行きたいと思った。

あの接客を受けてしばらく経ってから

私は7万円もするお財布をそこで購入することになった。

そうだ、接客って、こんなにも感動する事を少し忘れていた。

この話を思い出すと、一緒に私の人生の方向性が少し変わった美容部員さんの接客の思い出も出てくる。

技術ばかりに目を向けて、お客様はこう思ってるんじゃないかとか私はこうされたいからこうしてあげようとか

少し盲目になっていた気がする。

「お客様に気持ちよくお金を使わせてあげて」

その言葉も分かってきた。

ちなみに調子に乗ってブランド初心者の友人とエルメスに入店したときは5秒で退店するというオチつき笑。

それじゃあ今日はこの辺で。

追伸
そのお財布はまだ使ってます。1○年以上。

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