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『【5周年記念SS】どうも、物欲の聖女です』のエピソード「物欲聖女とお祭り」の下書きプレビュー

【5周年記念SS】どうも、物欲の聖女です

物欲聖女とお祭り

作者
DRAGON NOVELS
このエピソードの文字数
8,462文字
このエピソードの最終更新日時
2024年1月10日 18:20

 私、マテリは異世界に転移してきた日本の女子高生だ。

 異世界に来た人間は眠っているスキルが凄まじいことが多いらしくて、私は【クリア報酬】。

 ミッションが発生して達成すれば報酬が貰えるという一見して大したことないスキルだ。

 そんなスキルを持つ私はこれまで各地を旅しては色々な人達を幸せにしてきた。

 魔界の五大魔王の一人を討伐したり魔法生物の研究をしている研究所を潰し、じゃなくて正しい方向に導いたり。

 決してクリア報酬に釣られたわけじゃない。

 ついこの前は悪の魔道士率いるアンデッド軍団がこのエクセイシア国を襲った。

 未曽有の危機だったけど私の正義の心がうずいて国のために立ち上がり、見事平和に導く。

 その際に耐アンデッド用の装備が飛ぶように売れたし、これ以上ない社会貢献ができたはず。

 おかげでこの国のクリード王子にやたらと気に入られているけど、私は出世には興味ない。

 私は今、エクセイシアのお城にのらりくらりと滞在していた。


「マテリ、いるか?」

「いますよ。どうぞ」

 クリード王子が私が寝泊りしているお城の部屋に入ってきた。

 この人、どうも私に気があるみたい。

 国中の女の子達が大騒ぎするほどのイケメンなのになんで私なんかにと思わずにはいられない。

 そのことが原因で貴族のお嬢様に絡まれて一悶着があったからね。

「そろそろ年に一度開かれるエクセイシア祭の時期なんだ。マテリは知らないだろうけど、国中から商人や腕利きの職人が集まってくるすごいお祭りだよ」

「へぇ、それをわざわざ伝えに?」

「我が国が誇る祭りだからぜひ知ってもらいたくてね。先日のアンデッド騒動のせいですっかり準備が遅れたけど奇跡的に開催できそうだよ」

「そうかー。それじゃせっかくだから楽しもうかな」

 いつも寝ぼけたことばっかり言っている王子だけど、たまにはまともな話をしてくる。

 ここ最近はさっぱりミッションが発生しなくて退屈していたところだ。

 エクセイシア祭なら何か起こりそう。

 いや、決して報酬が目当てじゃないんだけどね。

「そうそう、君のお友達のミリータも店を出すみたいだよ」

「だから最近はいないことが多いんだ」

「友達なのに聞かされていなかったのかい?」

「本当にそうなんですよ。薄情ですよね」

 ミリータちゃんはドワーフの女の子で、鍛冶の腕がいい。

 対アンデッド装備を量産できたのもあの子のおかげだ。

 いい子なんだけど、今みたいにたまに私に冷たいことがある。

 そう思った私は出店の準備をしているミリータちゃんのところへ行った。

 場所は王都の中央通りで、いいところに店を出すみたいだ。

「おめぇに言ってもどうせ興味もたねーべ」

「なんでそういうこと言うのさ」

「おめぇアンデッド討伐の後、ふぬけちまったからな。どうせミッションが発生しないからだべ」

「そ、そんなことないよ」

 正義の務めを果たして疲れていただけだというのにひどい言い草だ。

 私だってミリータちゃんの店と聞けば興味くらい湧く。

 開くのはもちろん鍛冶屋らしい。

「ところでフィムは一緒でねえのか?」

「アンデッド討伐以来、張り切っちゃってね。『早く師匠に追いつけるように修行します!』とか言って冒険者ギルドに通い詰めているよ」

「なるほど、どこかのミッション中毒と違って真面目だ」

「辛辣すぎて泣きそう」

 フィムちゃんはエルフの女の子で、とあることをきっかけに私を師匠と呼んで慕ってくる。

 いたら騒がしいけどいないならいないでちょっと寂しい、そんな存在だ。

 

「私も何か手伝おうか?」

「いや、おめぇは祭りを楽しんでくれ。オラはオラでしっかりと自分一人で仕事をやり通してみたい」

「店を出すのはミリータちゃんの夢だもんね」

「そういうことだ。わかったら邪魔だ邪魔だ」

 嬉しそうな顔をして準備に勤しむミリータちゃんを眺めながら、私は私で祭りを楽しもうと決めた。

 フィムちゃんのさすが師匠連呼もなさそうだし、久しぶりに一人の時間だ。


*  *  *


 お祭り当日、普段は見られない風景に私は心が躍った。

 出店で賑わう通りを見ていると、ミリータちゃんと出会った時のことを思い出す。

 あの町では確かインチキ鍛冶屋が通りを占拠していてドワーフ達の商売がうまくいってなかったなぁ。

 あの時は成り行きで解決しちゃったけど今日の私は平和に生きる。

 ましてやクリア報酬に釣られるなんてバカらしい。

「いよっ! そこの見ているだけで心を奪われかねない綺麗なお嬢ちゃん! エクセイシア一と言われるマジカルキノコ汁をすすっていかないか!」

「どうしよう。いきなりやばそうな声かけされちゃった」

 言ってる人がクリード王子だったら杖で一撃くらわせていたな。

 そして幻覚症状が出そうなキノコなんだけどクリード王子、これちゃんと取り締まってる?

 他のお客さんがおいしそうにすすってるから問題ないのかな?

「いやいや! うちのマジカルキノコ汁はビブル山産だからね! そっちなんか安物の養殖だよ!」

「なんだと、コラ! 言いがかりつけてんじゃねえぞ!」

 やだ、なんですぐトラブルが起っちゃうの?

 今日の私は平和に生きるんだから、ケンカなら勝手にやってね。

 こっちは荒れているからあっちの出店で串焼きを買おう。

「おいしそうな串焼きですね。四本ください」

「あいよっ!」

 よし、無事に買い物ができた。おいしすぎて涙が出そう。

 こうやって行儀悪く串焼きを両手に持ちながらぶらつくのが祭りの醍醐味だよね。

 あっちにあるのは鉄板焼き店、創業八十年の老舗だの書かれたら惹かれてしまう。

 向こうにあるのは魔道具店。一級冒険者も愛用している耐性つきのブローチだってさ。

 それなりの値段がするだけあって多くの強そうな人達が群がっている。

 うんうん、これだよ。こういうのが本来あるべき光景――

「いたっ!」

「あぁん! てめぇどこ見て歩いてやがんだぁ!」

 少しよそ見をしていたら、誰かとぶつかってしまう。

 ふと見上げると大男が青筋を立てていた。

 取り巻きらしき二人がニヤついて、もう最初からそのつもりだったとしか思えない。

 人が集まればこんなのもいるのはしょうがないけど、今日の私は平和に生きると決めたんだ。

「ごめんなさい」

「俺のブラックバーストアイスが服についちまっただろうが! 責任とれや!」

「すごい名前のアイス。じゃあ洗えば許してもらえる?」

「あーあ、こりゃシミになっちまうな。お前、いいツラしてんな。ちょっと付き合えや」

「すこぶる嫌です。離してください」

 大男が下品に笑う。あのさぁ、なんでこうなるの?

 絶対最初からそのつもりだったでしょ。

 でも我慢、我慢。今日の私は平和に生きる可憐な少女なの。

 もうこんなのは無視して歩こう。

「付き合いきれないよ。さような――」

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新たなミッションが発生!

・ごろつき三人を討伐する。報酬:聖なる木槌

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「ちぇやぁーーーーーーー!」

「ぐあぁぁっ!」

 大男の腹に私の杖がヒットした。

 人の弱みにつけ込んで女の子に悪さをする暴漢を見過ごせるわけがない。

 もし私だけ助かっても他の人達が被害にあうかもしれないからね。

 それくらい誰にでもわかることだ。

「て、てめぇ!」

「ふるあぁーーーーーー!」

「がはぁッ!」

 二人目も私の杖でぶん殴られてくの字になって倒れた。

 さてと、あと一人。

「ひいぃぃーーーー!」

「逃げんなぁーーーーーーー!」

 私は出店の屋根に上に乗って走り、逃げる最後の男を追いかけた。

 逃がすか、逃がすか、逃がすか、逃がすか。

 男の真上に飛び降りつつ、杖を振り下ろす。

「はりゃあぁーーーー!」

「ぶっふうぁッ!」

 男が盛大に地面に叩きつけられた。

 これで善良な市民の平和が守られたね。

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ミッション達成!

聖なる木槌を手に入れた!

効果:攻撃力+5 餅特攻

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「攻撃力は大したことないなぁ。餅特攻ってなに」

「いやぁ! 素晴らしい! さすが黒髪の女神だ!」

「さすが師匠!」

 気がついたら私の周りに人だかりができて拍手喝采で称えられていた。

 私がこの国で黒髪の女神とか呼ばれているのを思い出してしまう。

 そして見ていたらしいフィムちゃんが私のところへ駆け寄ってくる。

「ご活躍、見ていました! 常に祭りの中で起こるトラブルに警戒して巡回をされておられたのですね!」

「そうだね。恥ずかしいからもう行くよ」

 このフィムちゃんは私が何をやってもこうなる。

 最初は否定していたけどそのうちどうでもよくなって今は適当な対応だ。

 青髪ツインテールをなびかせながら、フィムちゃんがトコトコとついてくる。

 この子、めちゃくちゃ強くて私なんかの後ろを歩いてる場合じゃない気がするんだけどね。

「フィムちゃんは今まで何をしていたの?」

「はい! 祭りに向けて王都周辺の魔物や盗賊団を討伐していました!」

「もしかして祭りが無事に開催できたのもフィムちゃんのおかげかもね」

「いえ、とんでもありません! 師匠の活躍に比べたら、ボクなんて足元の爪先にも及んでいません!」

「謙遜が過ぎる」

 祭りが奇跡的にできるようになったのも冗談抜きでこの子のおかげだと私は思っている。

 私が平和を満喫してゴロゴロしている間にフィムちゃんは正義の味方をやっていたわけだ。

 さすが私達の中で一番レベルが高いだけある。

 私なんかレベルやステータスの成長度が低すぎるし、スキルのクリア報酬だけで成り立っているようなものだからね。

「師匠、巡回を続けるつもりですか?」

「うん、例えばあれなんか面白そう」

「射的ですか! 弓は苦手です……」

「フィムちゃんでも苦手なものがあるんだね」

 そこにあったのはいわゆる射的屋で実物の弓を使うみたい。

 子ども用から大人用まであって様々な世代が楽しめる。

 狙うのは魔物の形をした人形で、それが柵に囲まれた場所で様々な動きを見せていた。

 獣の魔物、虫の魔物、蛇の魔物、それぞれ本当にリアルに見える。

「さぁさぁ! 私のスキル【人形操作】を活かした射的、やってみる価値はあるよ! 一等が十万ゼルだ!」

 あれ全部あのおじさんのスキルで動いているのか。

 世の中には珍妙なスキルがあるものだね。

 あれでも前に私がいた国ならスキル至上主義の王様にクソスキル認定されていたかな?

 一等が十万ゼルか。悪くないな。

「俺がやってやるぜ! 一等はもらった!」

「でも今まで誰も一等に当てたことすらないんだぜ。毎年のことだ」

 観客の言う通り、誰もが一等の魔物にかすらせることすらできていなかった。

 大半が素人ということを差し引いても、あの人形の動きは精密だ。

 蜘蛛の人形なんかちゃんと足がわさわさ動いてるからね。きもい。

「クソッ! ダメだ! かすりもしねぇ!」

「フン、それじゃ目を瞑って打っているのと同じだ。どきな」

 ずいっと現れたのはハンチングハットを被ったおじさんだ。

 いかにも弓が得意そうな冒険者で、背中にそれっぽい立派なものを背負っている。

 そのおじさんが現れた瞬間、周囲が湧いた。

「【必中】のナイパー! そうか! この人がいたか!」

「国内の各祭りにふらりと現れてはあらゆる店の賞品をとりつくす祭り荒らし!」

「やはり現れたか! 一級冒険者がゲームにマジになるなよぉ!」

 周囲からは恐れと称賛が入り混じった声が飛び交う。

 射的屋のおじさんはナイパーさんを見てニヤリと笑った。

 まるでやれるものならやってみろと言わんばかりだ。

「では弓を貸してもらうぞ」

「あぁ、どれでも構わんよ」

 ナイパーさんが射的屋のおじさんから弓を受け取って構えた。

 矢は三本、つまり三回勝負だ。

 周囲が静かになって場に緊張が走る。

「はぁッ!」

 ナイパーさんの弓矢が獣の魔物に直撃した。

 人形は動きを停止してパタリと倒れる。

「お、おめでとう! 見事に三等に当てたな! 賞金の五千ゼルだ……チッ」

 今、舌打ちした?

 見事だと思うけどその後の展開が意外だった。

 ナイパーさんの矢は二等すら捉えることができず、結果として三等のみだ。

 人形は巧みに動いてナイパーさんの矢を回避していた。

 愕然とした様子でうなだれるナイパーさんを射的屋のおじさんが意地悪そうに見下ろす。

「悪いね。人形操作のスキルはちょっとした自慢なんだ。前に住んでいた国じゃクソスキル税なんて取られて散々だったけどな」

「クソッ……オヤジ、あんたいい腕してるぜ」

「あんたもなかなかだったよ。三等に当てた奴なんて何年も出てなかったからね」

「腕を磨いて来年も挑戦する。待ってろよ」

 あのおじさん、なんか聞いたことがある税金を取られていたみたい。

 おじさんとナイパーさんが握手を交わして皆が称えていた。

 うんうん、これこそ平和の証だよ。

 初の敗北を知ったナイパーさん、その腕を称えるおじさん。

 一級冒険者がやってると考えるとちょっとバカっぽいけど野暮な突込みはなしだ。

「あわわわ……し、師匠。あのお人形さん、なかなかの動きですよ。ボクでも斬れるかどうか……」

「フィムちゃんでも? そんなに?」

 あのフィムちゃんが認めるスキルか。

 あのおじさん、射的屋をやるよりもっと有効的な使い道があるんじゃ?

「さぁさぁ! 他に挑戦者はいないか?」

「おい、お前やってみろよ」

「あのナイパーですら無理だったんだぜ?」

 誰もがしり込みしているけど、別に命を取られるわけじゃあるまいしやってみればいいのに。

 私だってこの手のゲームは気軽にやるからね。

 フィムちゃんと同じく弓なんて使ったことないけど、当てられなくてもしょせんはゲーム。

 息抜きと思えば緊張することも――

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新たなミッションが発生!

・射的屋で一等をとる。報酬:聖なる臼

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「おじさん、弓をとってよ」

「おぉ、挑戦者か。お嬢ちゃんにはこの軽い弓が……うっ!?」

 私が姿を現すとおじさんが呻いた。

 身を引いて何か感じているようだけど、そこをどくのが正解だ。

 私は目を閉じた。

 弓なんか持ったことすらないけど思い出せ。

 ナイパーさんの構え、重心、目線、呼吸。

 動作を一つずつ丁寧に思い出せ。

 集中しろ。集中、集中、周囲のすべての音を消せ。

 今、私は静寂な暗闇の中にいる。

 その時、何かが聞こえた。

――マテリよ、精神を研ぎ澄ませるのだ。己に眠る弓の名手の記憶を呼び起こせ……

「マテリよ、精神を研ぎ澄ませるのだ。己に眠る弓の名手の記憶を呼び起こせ……」

「あの子、ぶつぶつ言い出したけど大丈夫か?」

 野次馬は黙ってなさい。

 闇の中にかすかな光が見えた。

 私は矢を光に向けて放つ。

「……ッ! さ、三等に当てたか!」

 確かに当てた。だけどこの手ごたえはまだ報酬じゃない。

 マテリ、まだあなたはやれる。再び暗闇を見つめなさい。

――光を見るのではない。感じるのだ。

「光を見るのではない。感じるのだ」

「またなんか言ってるよ……俺、怖くなってきちゃったよ……」

 私はまた矢を放った。

「……当たった!」

「あの蛇は何等だ!」

「二等! 二等だ!」

 また目を閉じた。

 こんなんじゃダメだ。まだ深淵に心を静めないと。

 深淵の中から活路を見出すほど心を研ぎ澄ませ。

 森の中で遭難した人が夜の闇の中で生き抜くように、私は諦めない。

「バ、バカな……二等に当てた奴なんて過去に数える程度しか……」

 この感じ、わかる。私にも敵の動きが見える。

 そこぉッ!

 私の弓から最後の矢が放たれる。

「……なっ!」

「お、おい! あれって……」

 私が目を開けると、ハエの魔物の人形に矢が当たっていた。

 場が静まり返る中、私は人形達に背中を見せる。

 あなた達も強かったよ、そう告げるかのように。

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ミッション達成!

聖なる臼を手に入れた!

効果:この臼で餅をつくと最高の餅ができる。

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「い、いいい、一等……だぁ。ウソだぁ……。射的屋歴22年……これまで一人も、あ、当てたことないってのにぃ……」

 射的屋のおじさんが腰を抜かすと同時に場が盛り上がった。

 いつの間にか集まっている野次馬達が盛大な拍手を送ってくる。

 その瞬間、私は光に包まれた感覚に陥った。

「すげぇぇーーー!」

「さすが黒髪の女神だ! 女神様ばんざーーーい!」

「さぁーーーーーーすぅぅっがぁ! 師匠ォォーーーー!」

 フィムちゃんも一緒になって称えてくれている。

 建物の二階から顔をのぞかせている人達もいて、まるで王都中から称えられているかのようだ。

 ふと気がつくとミリータちゃんの姿がある。

「ミリータちゃん?」

「オラの店から急に人がいなくなってな。『黒髪の女神が弓を構えている!』とか騒ぎ出して来てみればこれだべ」

「私が射的屋で遊んでいただけで?」

「どうせミッションが出たんだべ」

「そ、そんなことないよ」

 ミリータちゃん達、商売人には悪いことしちゃったなぁ。

 でも私は本当に射的屋で遊んでいただけだからね?

 普通こんな騒ぎになるなんて思わないでしょ。

 私が自分を納得させていると射的屋のおじさんが握手を求めてくる。

「……負けたよ。まさか君みたいな子に一等を撃ち抜かれるなんてね。これじゃ射的屋は一から出直さないとな」

「いや、射的屋なら一等とってもらってなんぼだからそこまでしなくても……」

「私は、私はこのスキルだけが取り柄だったのだ……。クソスキル税で生活が立ち行かなくなって隣国を出て早22年……うっ、ううぅっ!」

「泣くほど?」

 絶対射的屋より向いてる仕事あるでしょと思ったけど、なんか周りも釣られて泣いてるから言うのやめた。

 クソスキル税とかやってた王様はもういないと教えてあげたほうがいいのかな?

 それと何度も言うけど私は射的屋で遊んでいただけだからね?

「はぁ、なんか集中したらお腹空いちゃったな。そうだ! ミリータちゃん、この聖なる木槌でとあることをやってほしい」

「この聖なる木槌がミッションの報酬か?」

「そうそう、せっかくだからパーッとやろう」

 材料が揃うかわからないけど、やってみよう。


*  *  *


「マテリ、このモチとかいう食べ物は君が考えたのかい?」

 私が始めたのは餅つき大会だ。

 ミリータちゃんが聖なる木槌で餅をついて、私がこねる。

 阿吽の呼吸で次々と餅が出来上がっていった。

「そうですよ。クリード王子、気に入っていただけましたか?」

「あぁ、こんなものはどの国に行っても食べられないよ。さすがは麗しのマテリ、君自身が輝いているよ」

「ちょっと杖で素振りしたくなった」

「す、すまない」

 このクリード王子、油断するとバカなことを言う。

 もう私のことは諦めてほしい。

 餅の材料については意外となんとかなった。

 私が王都の人達にお願いしたら、ものすごい勢いで持ってきてくれたからね。

「せいやぁ! そいやぁ!」

「ミリータちゃん、張り切ってるねぇ」

「オラもこのモチは大好物になったべ!」

 王都中の人が集まってるんじゃないかというほどの数だ。

 この世界にはないモチというものを皆、味わっている。

 お年寄りには小さく細かく切って分けているから事故も起こらないはず。

「この食感は初めてだ!」

「シェフ歴三十四年の私ですらこれには驚く……!」

「これは究極の料理だ!」

 すごい評価を受けているけど、そこまで複雑なレシピじゃないんだよね。

 でも複雑だからおいしいってわけじゃないし、逆にシンプルなものでもおいしいものができるということ。

 対アンデッド装備で社会貢献した時のように、もちろん有料だ。餅だけにね。

「こんなにおいしいものが作れるなんてさすが師匠です!」

「フィムちゃん、一気に食べると喉詰まるよ」

「おいふぃいれすぅ……」

「本当に大丈夫?」

 フィムちゃんだけじゃなくてクリード王子、王様と王妃様がモチの虜になっている。

 私も一口だけ食べてみると確かにおいしい。

 決して高級じゃないけど一年に一回だけ食べるものって、故郷の味がする。

 帰ってきたぞ、みたいな。

 異世界に転移してから日本の食べ物を味わえるなんて夢にも思わなかったな。

 でもその異世界で目覚めたスキルで得たのが餅つき用の槌と臼なわけなんだけど。

 このクリア報酬はまったくもって謎が多い。

「黒髪の女神様! ありがたき幸せです!」

「この世に生まれ落ちたことに感謝します!」

「生を与えてくださってありがとうございます!」

 一部で神格化されてるし、これはこれで本当に困る。

 やっぱりそろそろこの国を発つべきかな。

 でもグランドミッションがねぇ。

 このグランドミッション、通常のものとは違って一切通知されない。

 私が条件を満たした時のみ達成通知がくる。

 前回はクソスキル税があったファフニル国と魔王のマウちゃんと平和条約を結ばせたんだっけ。

 となると今回も国の未来に関わるほどの条件なんだろうけど、餅じゃダメっぽい。

「今年は最高のエクセイシア祭になった。このモチという料理は未来まで語り継ごうと思う」

「そ、そうですか」

「マテリ、できれば僕も君と語……うわっ!」

「すみません、ちょっと杖の素振りの時間がきました」

 隙あらば訳の分からないことを言う。

 グランドミッションのことは気がかりだけど、今は皆が幸せそうだからいいか。

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【5周年記念SS】どうも、物欲の聖女です
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DRAGON NOVELS
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