【5周年記念SS】元貧乏エルフの錬金術調薬店
ミレーユたちと万華鏡
- 作者
- DRAGON NOVELS
- このエピソードの文字数
- 2,111文字
- このエピソードの最終更新日時
- 2024年1月12日 19:20
今日は普通の魔道具でもなくポーションでもない。
「すごく綺麗」
マリーちゃんがそれを覗きながらポツリとこぼす。
「わわ、私も見たいです」
「あ、はい。どうぞシャロちゃん」
「ありがとう。マリーちゃん」
今度はシャロちゃんが覗きながらぐるぐると回している。
「すごい、すごいです」
歓声を上げた。私たちが見ているのは万華鏡だ。
どれくらい前からあるのだろうか。
お土産であったり子供のおもちゃであったり。万華鏡という不思議な道具がある。
しかしこれ、侮れない装置なのだ。
構造は双眼鏡などに似ているが単眼だ。
筒にレンズが付けてあって反対側にはガラスがついている。
覗いてみると外の光を受けて中に配置された色ガラスの破片がキラキラと色々な形になって見える。
筒の中の側面は三枚の鏡が設置されていて、それが幾何学的な模様を作り出していた。
機械というか装置というか、なんというか「技術の無駄使い」みたいなものだ。
王都の錬金術師たちも万華鏡を工作の練習として作ることがある。
中には王都土産だといって大量に作っている工房もあった。
「それでうちではちょっと変わったものをと思って」
「なるほどライト付きなんですね」
「そうそう」
私が作ったものは内部にライトを装備していて、暗がりで覗いても万華鏡が見れる。
このライトは普通の灯りの魔道具と一緒だった。
マリーちゃんとシャロちゃんが順番に何回も覗き込んではきゃーきゃーと言っている。
今まで名前くらいは知っていても実際に見たのは初めてだそうだ。
「ふふふ、綺麗だもんね」
「ミレーユさんも見ますか?」
「先生もどうぞ」
二人から渡される。自分で作ったものだけど、見るのは楽しい。
「うんうん、綺麗、綺麗。自作にしてはよくできた」
「もう、先生なんでも作っちゃうんだから」
「えへへ」
こうしてほめられるのもうれしくなっちゃうね。
中の色付きのガラス片も他の物質を混ぜたりと試行錯誤して色合いを調整した。
赤、青、緑、黄色、オレンジとカラフルに仕上げてみた。
側面の鏡部分は銀製で売るとしたらちょっと高い。
それからガラスのレンズも錬金術で形を整えたものだった。
本来は錬金炉が必要なのだけど、普通の錬金釜で無理やり作ったので効率などは度外視だった。
これは趣味だからね。今のところ。
「そして、これをこうしてと」
万華鏡の先を引っ張ると中の仕組みが動いて変形する。
「それでライトを照らすと」
「すごおおおいい」
「先生、画期的です」
ペンライトみたいな形状の先端から万華鏡の光が家の壁に映し出されていた。
それはぐるぐる回すと次々と色模様が変化していく。
とても綺麗でロマンチックだ。
こんな装置、王宮にもないだろう。
これで夜会の壁とかを照らしたら貴族様たちもよろこびそうだ。
伝手はないけど今度王様に渡してみようかな。
献上品なら受け取ってくれるかもしれない。
「ほへぇ」
「いい……」
マリーちゃんもシャロちゃんもそれをうっとりと眺めている。
大成功だ。
ちょっとやってみようと適当に作った割には評判がいい。
機能自体は難しくないのだ。
「ふぅ、昨日は徹夜しちゃったもんね」
そう、この万華鏡は昨日の夜、なんとなく眠れなくて徹夜で作ったものだった。
「えいしょ、ごくごく」
初級ポーションを一気飲みして気分を紛らわす。
もう眠いのだけど眠すぎるせいか逆に寝れそうにない。
疲れすぎていると眠れないことがある。
初級ポーションはそういう疲労回復などにもよい。
中級ポーションとなるとちょっと過剰だね。
本当はそれ専用の「滋養強壮剤」のほうが体にはいい。
キノコや草花のエキスを調合したものだけど、私のところではまだ作っていなかった。
「ポーム」
「きゅきゅっ」
ポムを呼び出して抱きしめる。
夏は冷たくて冬は温かい謎のぷにぷには抱くと心地いい。
「えへへ、ぷよぷよが癖になるね」
「きゅっ」
ポムも満更ではないようで、うれしそうに少し体を揺らした。
なんとなくポムの気持ちはスライムなのにわかる。
私たちはだいぶ長い付き合いだしね。
なにはともあれ成功だ。
錬金炉がもう少しで到着する予定になっている。
いひひ。そうしたら鏡などもちゃんと製造できるようになる。
そうしたら万華鏡の作成をしてもいいかも。
これも製品にしようかな。それとも趣味のまま、自分たちの遊び用とするか。
基本の回復ポーションの作成が一段落しているので、余裕がある。
ポーションの方も特殊なポーションについてはまだあまり作っていない。
材料がないというのもあるし、色々なポーションを作り始めると作業が終わらなくなってしまうという懸念もあるんだよね。
「ミレーユさん、もっと色々作りましょう」
「うん、出来る範囲でね」
「先生、ワタシ、特殊ポーションも何種類かやりたいです」
「そかそか、それじゃ何か考えようか」
「みんな、これからもよろしくね」
「「はい」」
「きゅきゅっ」
「では」
三人で円陣を組む。
「えいえいおー」
「「えいえいおー」」
「きゅきゅっきゅっ」
とりあえずお店はいまのところ順調だ。
経営も何とか黒字を出している。
あとたまにヒット作でぼろもうけしたりもしちゃった。
余裕があるので少しは色々やってみるのもいいかもしれない。
私たちのミレーユ錬金術調薬店。
これからも頑張るぞっと。
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小説情報
- 小説タイトル
- 【5周年記念SS】元貧乏エルフの錬金術調薬店
- 作者
- DRAGON NOVELS
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