【5周年記念SS】植物魔法チートでのんびり領主生活始めます
ぴよっぴカーニバルドリーム
- 作者
- DRAGON NOVELS
- このエピソードの文字数
- 6,471文字
- このエピソードの最終更新日時
- 2024年1月10日 17:53
冬至祭が終わり、後片付けも完了した。
夜も深まり、奔走していた俺とステラもやっと一息をつける時間である。
「ふぅ、そろそろ寝るか……」
「そうですね。子どもたちはもうスヤスヤですし」
前世の時間で言えば、まだ遅い時間ではない。しかし俺たちは子どもと歩調を合わせた生活を何よりも大事にしていた。なので、そろそろ寝よう。
ベッドに入ると、すぐに眠気がやってくる。やはりひとつのイベントが終わり、疲れていたらしい。すでにディアもマルコシアスもウッドも寝入っている。
「おやすみ」
「はい、おやすみです」
小さくステラと挨拶を交わす。
そのままウトウトしながら――俺は気が付くと、痩せた黄金色の草原に立っていた。
「……夢か」
俺が下した判断は、それだった。妙に現実感がなく、そよ風が吹いている。青空は無限の彼方まで伸び、草原にも果てがない。
「この草だけ見覚えがあるような、ないような……」
黄金に近いが光沢はない草だ。隙間なくびっしりと……手の甲に触れると、とても心地よい。まぁ、草にも色々あるか。とりあえず歩いてみよう。ゆったりと草を踏みしめながら進む。土が柔らかい。しばらく進んでみても、何も起こらない。前世でも今の人生でも、覚えがないほど広大な世界だった。
「夢だよな、これ……」
「さすとうさまぴよ!」
「そうなんだぞ。夢なんだぞ」
「おわっ!? びっくりした……!」
気が付くと、ディアと子犬姿のマルコシアスとふにっと足元にいた。
「ふたりとも……い、いきなりなんだ?」
「むっ、とうさまはわかってないかんじぴよ」
「だぞだぞ」
「でもあたしもわかんないぴよ。マルちゃんはわかるぴよ?」
「わふ。これは集合夢なんだぞ」
「……なんだそれは」
「ぴよぴよ係数が一定量を超えたんだぞ。ぴよぴよ指数の高い人を巻き込んで、夢の世界が広がってるんだぞ」
「すごぴよね!」(全然分かってない顔)
「すまん、意味が良く分からないんだが」
ぴこっとマルコシアスが前脚を上げる。
「つまりここはコカトリスの夢の中なんだぞ」
「ぴよ! そーいうことぴよ!」
「…………」
なんでだ……?
「たぶん、おまつりきぶんが……えーと、フィーバーしたぴよね」
「そして我が主を繋ぐ絆によって、ここに来ちゃった……というわけなんだぞ」
冬至祭、コカトリスたちも大いに楽しんでいた。村の一員として山車を動かし、興奮しまくり……それがこういう結果を招いたということか。
あれ、ということは……?
「それはステラとウッドもここにいるということか?」
「そうなんだぞ」
「ちなみになんで、それが分かるんだ……?」
「じつはここにおくってくれたのは、なかまのおかげぴよ」
そしてディアとマルコシアスは語り始めた。夢の世界の出来事を。
♢
目を開けるとディアとマルコシアスはコカトリスの群れの中にいた。
「ぴよ。これは……むぎゅ」
「みっちみちなんだぞ」
むぎゅむぎゅ。ふたりはコカトリスから這い出す。
✧( ╹▽ ╹ )✧
✧( ╹▽ ╹ )✧
✧( ╹▽ ╹ )✧
草原に寝そべるコカトリスたちは興奮していた。
「いぇい!」
「これは……ぴよっぴカーニバルドリーム!」
「知ってるのか!」
「ほのかに知ってるっ!」
マルコシアスとディアはしきりに首を傾げていた。
「ここはどこぴよ?」
「わからないんだぞ。でも魔力的な繋がりが……あるかもだぞ」
「ぴよ。そんなかんじぴよね」
ディアも魔力は持っている。なので、多分そんな気がする。
ふたりはあやふやで適当だった。
「あれ、ディアちゃんとマルちゃんがいる!」
「なんでなんで?」
「我もわからないんだぞ。というか、普通に喋ってるんだぞ」
「ぴよ。そーえいばそーぴよね」
寝そべっているコカトリスが羽をもにっと掲げる。
「夢の中だからね」
「夢……ちょっとなんか違う気がするんだぞ」
「なんか、ふつうのゆめじゃないぴよね」
そこでマルコシアスは少し考え込む。
「空間に満ちる魔力と普通に喋る我が主の仲間……あんまり良くない気がするんだぞ」
「気になっちゃう、それ?」
「聞かないほうがいいことも人生にはあるかも……」
「ぴよよ! すごくふあんぴよ!」
そんなディアにコカトリスがゆっくり答える。
「理論上、1時間以内なら無害だよ」
「わふ! それを世の中では危険と言うんだぞ!」
「やばぴよよ!」
「でも大丈夫……空間に満ちる魔力を一方向に集め、君たち家族を集合させればぴよぴよ係数を打破して……」
「難しそうなんだぞ」
「なにいってるかわからないぴよね」
そこでコカトリスがもにゃもにゃと補足した。
「説明が面倒だから、送る時に頭の中に書き込んでおくね」
「……ほんとうにだいじょうぶぴよ?」
「大丈夫。起きたら忘れてるから」
「ま、まぁ……信じるんだぞ」
「そうぴよね……。けっきょくじかんがたったらどうなるか、おしえてくれないぴよだし……」
そこでコカトリスが立ち上がり、ディアとマルコシアスを囲む。
「ぴっぴよぴよよー」
「ぴっぴよぴよよー」
ずんちゃ、ずんちゃ♪
奇妙なリズムに合わせて羽を上下させ、回るコカトリスたち。
周囲に黄金色の魔力が満ちていく……。
「わふ……!! すごいんだぞ! 頭の中に大量の知識が……!!」
「だめぴよ! マルちゃん、きをしっかりもつぴよ!」
「はっ!? そ、そうなんだぞ! 必要最低限の知識だけでいいんだぞ!」
「むぅ。これでも多かったか……じゃあ、ちょっと減らすね」
「かるぴよね」
「でも確かに……知識は少なくなって……オッケーなんだぞ!」
もにっと前脚を上げるマルコシアス。そんなマルコシアスに抱き着いているディア。そんなふたりを眩しいほどの魔力が包んでいく。
そしてふたりは気が付くと、草原の別の場所――エルトの足元にいたのであった。
♢
同時刻。ウッドもひとりで草原にいた。
そして横たわる仰向けのコカトリスたちをマッサージしていたのだった。
「ぼくたちは寝ちゃうけど、君は寝ちゃいけないよ。『お昼寝我慢対決』って感じ」
「そう……睡眠はパワー……パワーが溜まると、奇跡が……」
つまりはコカトリスは寝るけどウッドは寝れない。
そういうことらしかった。とはいえ、すでにコカトリスは目をしょぼしょぼさせている。
「ウゴ……君たちが寝るまで起きていればいいんだよね?」
「そうそう……これは厳しい戦いで……あふっ、そこそこ……」
「むにゃ……」
コカトリスのお腹にそって、軽く揉みほぐす。
「ああー、いいねー」
「固めのがお腹をー……おおー……」
「……ウゴ、もう眠そう」
そんなウッドの呟きに対し、コカトリスは首を振って否定する気力さえなくなりつつあった。
「そんな……そんなすぐ眠るわけ……」
「夢の中で寝るなんて、そんな夢の概念の崩壊みたいな……」
だが、そよ風と草原が確実にコカトリスの意識を奪っていく。そしてコカトリスが眠りの瀬戸際に立てば立つほど、ほんのりと魔力が抽出されていくのだ。
「ウゴ……安心して、寝ていいよー」
もみもみ。さわさわ。
✧( =▽= )✧ ぐぅ……。
✧( =▽= )✧ ねむ……。
✧( =▽= )✧ すや……。
こうしてウッドも。気が付くとエルトの元に送られていたのであった。
♢
そして最後に残されたステラもまた、謎の平原でコカトリスと話をしていた。
✧( ╹▽ ╹ )✧
✧( ╹▽ ╹ )✧
✧( ╹▽ ╹ )✧
「つまり……これは月刊ぴよに書いてあった、ぴよちゃん集合夢ということですね?」
「全部知ってるじゃん」
「先人の研究の賜物です」
「まさか、過去に巻き込まれた人がいるなんてね」
ぴよぴよ。ステラはその豊富な知識により、この一連の事象を正確に理解していた。コカトリスは強大な魔力を持ち、集団を形作る。そしてコカトリスの高度な知性により、その魔力と意識はある種の結合に至るのだ。
いわば蜘蛛の糸のように。もちろん現象としては極めてレアではある。一定数以上のコカトリスが極度の興奮状態にならなければいけない。しかもそれは戦闘などで魔力を消費したものでは駄目である。十分に身体と魔力が休まった状態の興奮でないと発生しない。
「世界を見渡すと数十年に一度、予期せぬ満腹イベントで起きるかもと推測されていましたが……まさか私が立ち会えるとは……」
ステラが感慨深げに頷く。この出来事は覚えていたら、ちゃんと論文にしておこう。
「……まぁ、つまりそういうことで」
「君たちは合流しなきゃいけないわけなんだけど」
コカトリスは若干、困惑していた。ステラがあまりにも順応しすぎていたので。
「ぴよちゃんと離れるのは残念ですが、具体的にはどのようにするのでしょう?」
「頭に魔力を注ぎ込みます」
「たっぷりと」
「おお、楽しそうですね!」
ステラの一言に、コカトリスが円陣を組む。
✧( ╹▽ ╹ )✧ ちょっとなんかさ……。
✧( ╹▽ ╹ )✧ 魔力も異常に強いし、変わってるよね……。
✧( ╹▽ ╹ )✧ というか、肉体も魔力も強すぎて魔力入らなくない?
✧( ╹▽ ╹ )✧ それな。
コカトリスがふにっとステラに振り向く。
「――というのが通常のパターンなのですが、あなたはちょっとイレギュラーです」
「えっ? あふれるぴよちゃん魔力を限界まで摂取できるのでは……?」
「ないです」
「そ、そんな!?」
がーん。ステラはショックを受けた。しかしコカトリスは意に介さず、ある方向に羽を向ける。
「ここから北にダッシュすれば、あなたの家族に合流できます」
「うぅ……ちなみに距離は?」
「20キロぐらいだよ」
「なるほど、まぁまぁ急いで30分ぐらいですね」
夢の中を堪能するにはちょうどいいくらいかもしれない。
「……かなり早くない?」
「夢の中ですからね。肉体の疲れは偽りにすぎません」
✧( ╹▽ ╹ )✧ 理解度が怖い。
✧( ╹▽ ╹ )✧ が、がんばってね……。
こうしてステラはコカトリスたちと別れ、エルトたちの元へと走り去っていったのだった。
♢
「……なるほどな」
ほどなくウッドとステラも合流してくれた。ウッドはどこからともなく、ステラは地平線からのダッシュではあったが。
「にしても、集まってどうするんだ?」
「それぴよね」
「わふ。頭の中の知識によると巨大な果物を作るといいんだぞ」
巨大な果物……?
どうして果物を今、ここで?
「ウゴ……俺もそう教えられたような」
「うーむ、ウッドのほうでもそうか……。でも、今ここで作ってオッケーなのか。他に条件は――」
「ウゴ? あれれ?」
ウッドが足をぐりぐりと動かす。
「ウゴ……振動してる……?」
ウッドが首を傾げる。風と混じって気付きづらいが、確かに魔力のさざ波を感じる。揺れているかどうかまではわからないが。
「そうですね、なにか揺れていませんか?」
「ぴよよ? ぴよ? そうぴよね……」
「魔力だけじゃないんだぞ」
ステラが草と地面を見つめる。それを聞いた俺は、とっさに異変かと思って身構えた。それからわずかに草が揺れ、地面が鳴動してくる。
「おわ、地面が……!?」
「ぴよー!?」
「わふふー!」
慌てるディアとマルコシアスをウッドが抱き上げる。
「ウゴ! 大丈夫だよ!」
「やばぴよ!」
「わふふ……これが打破なんだぞ!?」
大地がうねり、遠くの空も揺れる。そこで俺が空に目を移したのは、単なる偶然だった。青空の向こうから何かが浮かび上がってきている。黄金色で、ふっさふさ……。
「ぴよちゃん!? 超巨大なぴよちゃんです!」
俺より遥かに視力の良いステラが叫ぶ。それは段々と青空から鮮明に姿を現してきた。超巨大なコカトリスの上半身。呆れるほどの巨体が遠景の山のように見えている。
「うにゅー……」
超巨大コカトリスは眠そうに目をしょぼしょぼさせている。そこで俺は悟った。見えるのは頭とくちばし、上半身だけ……そして超巨大コカトリスの体毛は足元の草と全く同じ色だ。俺たちがいるのは、巨大コカトリスのお腹の上であった。
「かつてないおおきさとたぷみぴよ!」
「これがぴよぴよ係数の行く末、ということなんだぞ」
「ウゴ、でも眠そうだね……」
ステラは屈んで草をチェック――もとい頬擦りしていた。
「うーん、なるほど……これが全てぴよちゃんとは……」
「……もしかしてあのコカトリスの目を覚まさせればいいのか?」
眠そうなコカトリスでも、目の前にご飯があるとぱっと起きる。昼寝の最中でも食欲が優先される光景を俺は何度も見てきた。果物を生み出してそれに気付けば、あの超巨大コカトリスも目を覚ますことになるだろう。そこから先はわからないが……。
「まぁ……多分、そうですね」
「そのへんはかわってないぴよ」
「コカトリスならそれが一番効くんだぞ」
「ウゴ、とびきりのを用意しようよ!」
みんなも思い当たるところがあるのだろう。やはり今はこれしかなさそうだ。
「そうだな……」
俺はありったけの魔力を右手に集中させ、植物魔法を発動させる。今の時期に美味しい果物といえば……!
段々と魔力が俺の目的のモノを形成する。今やそれは人の数倍の大きさになりつつあった。
「……よし!」
出来上がったのは、超巨大イチゴであった。あの超巨大コカトリスからすれば小粒のイチゴかもだが。ほのかに甘い香りが周囲に漂っている。
「ぴよ! でかーーー!! ぴよ!」
「わふふ。このぐらいじゃないと見つけてもらえないんだぞ」
「はっ!? それもそーぴよね!」
「ウゴ、とっても真っ赤だから目立つね!」
「ええ……これならぴよちゃんも垂涎、大満足間違いなしです!」
そして超巨大コカトリスを見上げると――くむくむと首を動かしていた。やがて超巨大コカトリスはイチゴのほうにぴったりと頭の向きを合わせて、目を開く。
つぶらできらきらした瞳。それを見た瞬間、俺たちの夢は終わった。
♢
「んん、んー……」
「ぴよ! おきておきておきてー! ぴよ!」
ディアが俺の顔を優しくぺちぺちしている。
「……ああ、ディア」
いつも通りのベッド。パジャマ。そして村の朝。
「ふぁ……なんだか深く眠っていたな」
まだ頭がすっきりしない。夢を見ていたような気もするが、いまいち思い出せないのだ。まぁ、夢とはそんなものか。
「めずらしーぴよね。とうさまがおきたのさいごぴよ」
「そうか……祭りのアレコレで疲れていたのかもな」
ゆっくり半身を起こして伸びをする。見ると、他の家族は全員すでに活動を始めていた。本当に俺が最後だったらしい。
寝癖をブラシで直しているステラが言う。
「今日も片付けがありますからね。朝のうちはゆっくりしましょう」
「……そう言ってくれると助かる」
ふむ……なんだか妙な気分だ。妙に身体が疲れている。大きな魔法を使った後のように――でも魔力自体はきちんと回復している。魔法を使った感覚だけが残っているのだ。
「ぴよ。きいてほしいぴよ」
「なんだい?」
「きのー、ゆめをみたぴよ。みんなでおさんぽしたぴよ」
「おお、いい夢じゃないか」
「ぴよ! ひろーいはらっぱで、あつまってたぴよ!」
ディアがふんふんと羽を振っている。どうやら相当印象深かったようだな。お茶を飲んでいるウッドが頷く。
「ウゴ、俺も夢を見たよ。みんなで青空を見てた」
「それもいい夢だな」
「うん、綺麗な空だった」
ステラが小首を傾げた。
「おや、みんなで家族の夢を……? 私も実は昨日、夢を見ましたよ」
「どんな夢だった?」
「家族で超巨大ぴよちゃんと会った夢です。山よりも大きくて……とてもたっぷたぷでぽよんぽよんのお腹でした」
「そ、そうか……」
マルコシアスがベッドに飛び乗ってくる。
「我も見たんだぞ」
「マルコシアスもか……? どんな夢だった?」
「家族といて、父上がイチゴを作ってたんだぞ」
「……なぜ俺がイチゴを?」
「そこは覚えていないんだぞ。でも美味しそうだったのは間違いないんだぞ」
「いい夢ではあるが……謎が残るな」
だが話を聞いているうちに、なんだかさっき見た夢を思い出せそうになってきていた。妙なことだ。全員見ていた夢は違うはずなのに、同じ夢を俺も見ていた気になっている。
「エルト様は何か夢をご覧になられたので?」
俺は天井を見上げ、夢に沈んだ記憶を引っ張り出す。段々とそれは形になって――でも細かなところはぼやけている。しかし、ひとつだけ確かなことはありそうだった。
「うん、俺も家族一緒の夢を見たよ」
黄金色の草原の夢。覚えていなくても、それだけは心に残っていた。
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小説情報
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