「今後もよろしくお願いします」
「こちらこそ」
あるダンジョン公社の取引所で、この取引は行われた。
商品は俺たちが作った魔道具で、『水に入れると中に入れてあるインクで水が赤く染まり、それがワインに変わったと錯覚させる魔法がかかった魔道具』である。
作るための素材は安いもので、近くのダンジョンの最浅層に出てくるヤギ型のモンスターのツノと、また別のダンジョンの悪魔型のモンスターの爪、そして市販品の食紅だけだ。
ツノに爪を合成して幻惑系の魔道具にして、色付きの水が高級なワインの味と匂いがするように感じるように細工をする。
魔道具師の腕前に応じてワインの味は変わるため、それなりの腕前の俺たちが作ったものはそれなりに高く売れる。
「そういえば最近、偽物の素材が出回ってるみたいですから気をつけてくださいね」
受付の人はそういうと魔道具を片付けるために奥に戻っていった。
俺たちは素材収集から制作までを全て自力でこなしているため、関係はないのだがな。
工房に戻ると、いつもより少し騒がしかった。
「何があったんだ?」
近くにいたサポーターの一人に声をかける。
「なんか、公爵級?の悪魔を倒せたらしくてその素材をどう使うかで言い争いになってるらしいです」
普段の研究や魔道具制作で使っているのは公爵級の3〜4つほど階級が低い悪魔のものを使っているので、こんなふうになるのは必然ではある。
話を聞いていると、武器の制作のために使うべきと主張するものや、実験のために使うべきだと主張するもの、果てには悪魔の召喚の実施を主張したり食べてみようと主張するものさえもいる。
埒が開かないので工房にいる全員で多数決を取った、武器の製作に決まった。
そして、余った素材を多数決で票が多くはいったところから順番に取っていった。
ツノは武器に使われ、目と内臓は魔道具製作に使われ、骨は防具や機材に使われ、肉は食べられた(悪魔召喚は国から禁止された)。
最後には爪の先がほんの少し残った。
爪の先っぽは悪魔が切り裂いて倒した色々なものの悪意が詰まっており、武器として使うのも素材として使うのも憚られるのだ。
しかし、魔道具に使うと幻惑系の効果が強く現れるので、先っぽは爆弾などの使い捨ての武器で多く使われる。
しかし、俺は好奇心からあのワインの魔道具に使ってしまった。
できたものは白ワインの味と匂いを錯覚させるようなもので、今までに作ったものの中で最も優れているものだった。
しかし、妙な中毒性を感じたため俺自身で何回も使う気は起きなかった。
できたものはどんな危険物であろうと公社に報告しなければいけないのでとりあえず持っていったが、受付の人は危険物であるとは微塵も思っていないようだった。
しっかりと危険物であるだろうと注意して上で公社に販売したが、ちゃんと伝わっているのだろうか。
その後、その魔道具はオークションに出され、今のところは世界で唯一の白ワインの幻惑の魔道具としてかなりの高値で落札された。
しかし、その落札した金持ちはそれを使い始めて数日で死んでしまった。
それなりの年だったためそこまで大きな話題にはならなかったが、その次の所持者