EvangeliumCoste~ウチの魔王がすみません!

にーりあ

Magi's Kaleido Online EP.03 EvangeliumCoste

ウチの魔王がすみません!

プロローグ

「なぁ、昨日お前が持ってきたやつデバッグしたんだけどさ」


 八時二十分。朝のHR開始まで後十五分のタイミングで隣のクラスのダンは僕を教室の外へ呼び出した。


「テイルトゥディストラクションをラ・カームで消すって中々考えたじゃんって昨日は思ったけどさ、よく考えたら核熱は酸素奪っても意味ないじゃん。あれって炎無くなるだけだろ」


「え、そこ厳密にするとこ?」


「するだろ。だって厳密に空気なくなって火が消えると思ったから面白かったわけじゃん」


「んー。その辺は浪漫設定って感じでいいんじゃないのかな」


「無理。これじゃシナリオ書けない。やり直し。あと俺今日昼休みはプロレスの予定だから直したの明日見るな」


「ちょ、ちょちょちょい、待った。昼はりんごちゃんと打ち合わせだろ」


「いいのいいの。りんごちゃんとは今日の夜しっぽり打ち合わせするから」


「猿かよ! この変態野郎」


「お前さ、それりんごちゃんがビッチだって言ってんのとおんなじだからな?」


「お前が無理強いしてるからりんごちゃんが断れないんだろ」


「マジかよ初めて聞いたわ。じゃあそういうことで」


「ちょいー!って、最悪だアイツ」


 わがまま放題で夜はやっほいかよ、最悪だな。


 時刻は八時三十分。そろそろHRが始まる。


 僕は自席に戻りながらも、りんごちゃんのあられもない姿を想像しちょっと歩きづらくなった。

 そして椅子に飛び込むように座り込み、椅子から立ち上がれない状態になりつつも、ダンがちょっと羨ましいと本気で思っていた。






「きいてよみっきー!ダンくんったら最近いやらしい事ばっかしてくるの!」


 ログイン早々りんごちゃんが僕に言った言葉がソレだ。


「おっとぉ、なんだ? りんごちゃんいきなりですか」


「もうね、ひどいんだよぉ。[出会って五秒で合体]とかいってキスしてくんの! 馬鹿だよね? ほんっと馬鹿! ねぇみっきー? アイツ頭おかしいんだよぉ」


「でもキスしちゃうんでしょ?」


「えー? えー? やだぁ。みっきー」


「はいはいわろすわろす」


「いきなりりんご殿の惚気で開幕てござるか。拙者ブラバしてもよいでござるか?」


 そこにログインしてきたのは歴女ならぬ忍者女、ゆいゆいだ。


「ちゃー! 待って! 待ってゆいゆい! 貴方がいないと世界のキャラがのっぺらぼうになっちゃうから!」


「やっほー、ゆいゆいー! ねぇ聞いてぇー、ダン君がー――」


「聞こえたでござるよ。五秒接吻ルールでござるな。忌々しくも拙者の脳内過去ログに焼き付いているでござるよ」


「うんー、それもなんだけどぉ、その後ねぇ、次は[出会って五分で合体]とかいってアタシのスカートの中に手を入れてくるんだよぉ、もう最低」


「そりゃ最低だなアイツ」


「ねぇ、みっきー!そう思うでしょ! 『イキナリ王は取れんぜよ!』 っていってやってよ!」


「ええ! そっち!?」


「順序の問題とは。りんご殿。お主やはりビッチであろう」


「ひどいー! ゆいゆいひどいー! ビッチじゃないから! 」


「え、あ、はい。にんにん」


 泣き真似をするりんごちゃんを形だけフォローするゆいゆいをみて、僕はゆいゆいが[ホントはクソビッチだと思ってるんだろうなぁ]と内心で思った。






「ねえいいじゃん。ちょっとだけ」


「やだよりんごちゃん、誰か来たらどうすんの! それに口調が「ダン」になってるよ」


「大丈夫だよ、鍵してるから」


 そこは放課後のクラブ室。

 僕とりんごちゃんは開発中のゲーム[フレンドリィ]を作る為作業をしていた。


「ダメだって! 鍵してたら余計に怪しまれるでしょ!」


「そっかー。 じゃあちょっとズボン脱いでみて!」


「ちょ! どこが「そっかー」なの! どのへんが「じゃあちょっと」なの!?」


「いいから、天井のシミを数えてる内に終わるから」


「終わらせないで! いやむしろ初めないで! って、一体誰からそんな古風な言い回し聞いたの!?」


 プログラミング中、りんごちゃんは後ろから僕に抱きついてきた。

 何かの悪ふざけだろうと思って無視していたら、どうもそれを何かしらの同意と思ったらしく、りんごちゃんは僕を椅子から引きずり下ろして馬乗りになってきたのだった。


「小学生の内は女子のほうが力があるって知ってた?」


 りんごちゃんはまるで柔道の縦四方固め宜しく僕の上半身を決めると、靴を脱いだ足で僕の腰のあたりから下半身ジャージの中に足を器用にいれてきた。


――なんだこれ! プロなの!? 職人なの!?


 あっという間の下半身パンツ一緒下げ技で僕の息子さんが一瞬の内に外気の元へ晒された。


「ダン君ならもう一人で立っち出来るのに、みっきーの子はネンネでちゅねー」


「おっさん入ってるよ!? りんごちゃん、キモいおっさん言語がインストールされてるよ!?」


「入ってないよ、まだ何も入ってない。まだ、ね?」


「意味が変わってるッ!?」


 りんごちゃんは天才だ。彼女の音楽センスはきっと大人でもかなわないと僕は思う。

 しかしちょっと頭がおかしい。

 ちょっとおっちょこちょいで天然で、少しわがままで欲望に流されやすい困ったちゃんである事は皆が知っている事だ。


 この前も駄菓子屋さんでお菓子欲しさに駄菓子屋さんの店員におっぱいを揉ませていた。それで本当にお菓子をゲットしていた。そういう恐るべき子なのである。


 そんな子が、普段はすっごく不器用なのに足だけ世界レベルで器用というのはやはり天才ギャップに通じるものがあるといえようか。つまりそういう動きをそういう風にそうしてそうしたらそうされたのである。


「あは、意外とカチカチですね―。じゃあお服はぬげるかなぁ」


「やめて! りんごちゃん! これ以上は洒落になんなはぅっ!!」


 激痛。何のかは敢えて言うまでもない。僕はそういう事はした事が無かったのだ。


「お! だめだよぉみっきー。 これは30までにやっておかないと悪い魔法使いになっちゃうんだよ?」


「いてててて、やめて、痛い痛い! りんごちゃん!」


「何言ってるのぉ、これからでしょみっきー。暴れたら騒いじゃうよ?」


「いや無理無理無理痛い痛い痛い! ちょっ! ぱんつ! ぱんつズレてる! りんごちゃんのパンツずれちゃってるよ! 直さないと恥ずかしいでしょ!?」


「んもうぅ、みっきー。見ないでよ。――ずらしてんの」


「ああああああ、やだああああ神様ごめんなさい許してえええええ!!!」


「いっただきまー……すっ!うぅん!!」


 りんごちゃんの今まので声色とは全く違う甘い声と共に、僕の下半身にそびえ立つ基礎柱の様な屹立は、りんごちゃん像を建立する大黒柱宜しく一体化の楔にされた。



――その時、僕は異世界へ飛んだ。

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