第9話 膝を抱く夜

昔、15年一緒にいた女がいた。


その内の10年、あいつは癌との戦いだった。


髪は幾度となく抜けては生えた。肺に転移し、瘦せ衰えていった。


力なく微笑む姿に、思わず抱きしめ泣いた。泣くしかなかった。


夜中、俺が行きつけの店で独り呑んでいる時に、あいつは息を引き取った。


あいつが逝ってから、俺は毎晩のように呑んでいる。


膝をだいた。

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