最終日 Monochrome Collection 白黒の記憶、いつか…

 「お疲れ様」


 ノートパソコンの前で、僕は手のひらを組んだ両腕を上に伸ばし、自分でも満足のゆく笑みを浮かべながらため息をつく。そんな僕に、傍らの妻は微笑みながら労いの言葉をかけてくれた。


「せっかくだから、あとがきは挨拶も兼ねてやってみるのはどう?」

 僕は妻である由美さんのナイスアイデアを採用することにした。

 


 はじめまして、鯨武 長之介です。この度はご縁がありまして、拙作【モノクローム・サイダー】を読んでいただきまして、ありがとうございました。


 ワンダースワンとグンペイ(ここでは商標名を出します)から始まった、僕と妻こと、鯨武 由美との出会いと馴れ初めの物語はいかがでしたでしょうか? 


 思えば1999年の高校三年生の夏。学校の屋上で偶然出会い、この作品を手掛けた2016年現在まで、彼女と一緒に過ごすことになるとは、当時は思いもしませんでした。


「それは私も同じだよ。人生ってどうなるか本当に分からないね」 

 妻は変わらず微笑み続けながら言う。


 一部の心情や物語の運びを除き、ほぼ実録でお送りできるよう、最初にして最後、そして最大にして最高の作品のつもりで執筆をしました。


 思えば、普段はツイッターで1980年代~90年代のレトロゲーム関連の呟きを中心にマイペースで活動しており、去ること2016年2月8日、そろそろツイッターを始めて二周年を迎えるにあたり、特別企画などを考えていた時でした。


 ちょくちょく購読している『週刊ファミ通』様にて、たまたま『カクヨム』様の運営開始の広告が掲載されていたのを発見。僕は過去にこれまで、レトロゲームネタの合間に妻や娘などの家族話もツイッターで呟いておりましたので、じゃあ、それを物語にしようと「よし、やってみるか」と、その場の勢いで決めたのがキッカケでした。


 最初は、妻と当時の恋愛関係に至るまでの経緯や心情の変化を物語にして、最後に現在、結婚している相手という衝撃のオチを展開しようとも思ったのですが、すぐに諦めて最初からハッピーエンドを知らせた上でその過程を書く、自分にとって楽な方式に変更しました。


「正直、最初は無謀なこと始めるなとは思ったけどね」

 由美さんの言葉を否定できない。僕だって正直、ここまで書くことが出来るとは思わなかった。


 初めての小説で長編に挑むというのは、無謀かなとも思いましたが、素人がゆえに迷い無く、好き放題に執筆できたことが、何より楽しかったです。


 完成度や出来はともかく、創作活動の面白さを体験できたとともに、多くの読者様の目に届き、そして何より妻と当時を思い出しながら、色々と話し合う機会となったことが嬉しかったです。


 本作を通じて、読んでくださった方にとって、少しでも何かのプラスになれば至極、光栄です。


「自分も恋愛をしたくなったとか、奥さんを大事にしようと思う、って感想が貰えたのは嬉しかったね」

 その代わり『独身が読むには苦しすぎる』という意見も多く寄せられたけどね…。それでも読んでくれた皆様には、頭が下がるばかりです。


 さて、このあとがきを書いてるのは、2016年4月2日なのですが、あと数日で僕らに二人目の娘が生まれる予定です。物語の無事完結(?)とともに、新しい家族が増える時期を同時に迎えられて最高の幸せと感謝を噛みしめております。


 どうか妻と長女、もうすぐ生まれる次女、そして僕にとって、この物語が家族の絆になることを願うと同時に、いつか娘たちが大きくなったら、照れつつ恥ずかしく思いながらも、僕と妻の出会いを語り継ぐことができればと思います。


「黒歴史にならないようにしないとね」

 確かに妻の言うとおり、このエピソードを成長した娘が誰かに話したり、僕らの身近な人にバレたりしたら『あれがモノクローム・サイダー夫婦』とか指差されて、恥ずかしく広まる可能性がある。


「そうじゃなくて、百万歩譲って、私たちがもし離婚とかしたらさ?」

 冗談でも勘弁してください。


 まだまだ書きたいエピソードは山ほどあります。もしかしたら、今後も特別編や番外編を追記するかもしれません。本作を見かけた時は、ひっそりと覗いてくれると幸いです。


 読んでくださったすべての皆様。評価やコメント、妻のイメージイラスト、ツイッターなどで応援してくださった皆様。カクヨムを始めるキッカケとなった週刊ファミ通様、そしてそして妻と娘たち家族に、心からありがとうを込めて、拙作の最後とさせていただきます。


「最後に私からもお礼を申し上げます。どうか、これからも不幸がない家庭が築き続けれたらと思います。主人が今の気持ちでいる限り、きっと大丈夫です。皆さん、ここまでお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました」

 

2016年4月2日  鯨武 長之介・由美


モノクローム・サイダー  ~ After confession ~ (終)



追 記

2016年4月7日 午後5時26分


無事に第二子(女の子)が誕生しました。

母子ともに健康です。


生まれてきた赤ちゃんにありがとう。

産んでくれた妻にありがとう。


支えてくれた多くの皆さんにありがとう。

そして、今日という素晴らしい日にありがとう。



2016年6月1日

続編 【パステル・プロムナード】 を公開しました。



2016年9月30日

「エッセイ・実話・実用作品コンテスト」にて受賞作となりました。

https://kakuyomu.jp/contests/essay_contest/result


2017年2月23日

KADOKAWAより、書籍化となりました。

https://kakuyomu.jp/publication/entry/2017022001

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モノクローム・サイダー 鯨武 長之介 @chou_nosuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ