第9話

 由香の葬儀にはたくさんの同級生たちが参列し、まるでちょっとした同窓会のようだった。


 あの日――車の中にいた由香を、私は見なかった。

 見たくなかった。

 もしかしたら誰か違う人が彼女の車を借りて運転していたのかもしれない。そう思いたかった。

 急いでその場を離れて会社に行き、予想以上に溜まっていた仕事を一心不乱に片付けているとき、携帯が震えた。

 仲良し三人組のもう一人、香織からだった。


 焼香を終え外で出棺を待つ間、同級生たちの話し声が耳に入ってきた。

 由香はその日の早朝、家族も知らない間に出掛けたらしい。車にはブレーキを細工した跡があったが、事件と自殺の両面から捜査している。車内には仕事に行く鞄と着替えの服、そして桜色の傘があった、と。

 自殺のはずがない。その着替えは、仕事帰りに私と食事に行くために用意していたに違いない。

 そう思うと、今まで我慢していた涙が溢れてきた。

「仲良かったもんね。大丈夫? しっかりね」と同級生たちに慰められながら、由香の最期を見送った。

 そのときはまだ、自分が見た夢のせいで姉と友達が死んだとはまったく思っていなかった。

 次に母が死ぬまでは。


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