インスタ映え?写真だけみてもらって終わり?


「何これ、インスタ映え〜〜」


お店の中に滅多に聞かない女子高生の声が響いた。

母親と一緒に買い物に来た制服の女の子、節分用の鬼の顔と金棒の形をしたパンを見ながらキャッキャ笑っている。


その後、母親にねだってそのパンを購入すると店を出て行った。


「インスタ映えねえ、、そういえば最近テレビでも良く聞くなあ、、今度三木が来たら聞いてみるか」


次の日、三木が店にやってきたので、開口一番インスタ映えのことを話した。


「そうですね、スマホに変更したことですし、フェイスブックもツイッターも大分慣れてきたみたいですし入れてしまいますか、、インスタ、、正式にはインスタグラムといいます。ツイッターやフェイスブックと同じSNSの一つですね。

特徴としては文字のみは不可で写真または動画をつけないと投稿できません。また、基本的にはスマホでしか投稿できません。


海外セレブから火が付いて、おしゃれであるとか、写真の世界観を大事にしているとか、そういうのを好む人、、、主に若い女性とかの利用が多いです。

写真か動画を必ず使うSNSでイメージに訴えかけることになるので、そうなるんでしょうね。


まあ『百聞は一見にしかず』といいますし、ダウンロードしてみましょう。」


三木に言われたとおり、アプリをダウンロードして登録作業を始める。

プロフィールはしっかり書いて下さいねという言葉に従い、店名などもしっかり書く。


三木は一緒に画面を見ながら話し続ける


「インスタグラムの情報を取得する方法は基本的にはツイッターと同じです。気になったら『フォロー』すればいいだけです。そうすると、そのフォローした人の投稿が流れてきます。

逆に自分達の情報を見てもらうには、これもまたツイッターと同じ、『フォロー』をすると”フォローを返してくれます。”」


表示されている『フォローする』ボタンを押して、何人かフォローすると、沢山の写真が表示された。


「これが一番重要なのですが、インスタはツイッターのリツイート、Facebookのシェアにあたる拡散する機能がありません。投稿全てがフォロワーに表示されるわけではなく、アルゴリズム、、いつだったか話したから解りますよね?いわゆる表示順番を決めるための計算式はありますが、基本的にはフォロワーの数がイコール基本的に見られる数であり、あとは『ハッシュタグ』になります。」


「『ハッシュタグ』ってあの『#』をつけて投稿するやつ?」


「はいそうです。口で説明しても難しいのと思うので、この方の#フードというところをタップしてください。」


スマホに映し出された料理の写真には#グルメ #食べログ #食べスタグラム #インスタフード #instafood #food #フード #食べ歩き #東京グルメと、沢山のハッシュタグがついていた。その中の一つの#フードを言われたとおりにタップすると料理の写真ずらっと表示された。


「この中でなにか気に入った写真があったらタップしてみてください。」


言われた通りに表示された中の一つ。美味しそうなカレーの写真をタップすると、文章も含めた投稿全体が表示された。


「これでこのカレーの写真の投稿はフォローワー以外に、一郎さんに見られたということになります。」


「なるほど、こう言うこと、、、」


「はい、それでですね、この方のユーザー名の所をタップしてください。」


これまた言われた通りにタップすると、カレーの写真を投稿した人のプロフィールといままで投稿した写真が表示される


「このプロフィールや写真をみてフォローするかどうか決めたりします。」


「なるほど、だからプロフィールをしっかり書けってことね。」


「はい、それだけではありません。確かに『インスタグラム』はフォロワーがすなわち表示数です。だからみんなフォローワーを増やすことに執着しがちですが、ただフォロワーを増やせばいいというものではありません。


『ツイッター』と一緒でフォローボタンを押すだけという簡単さで『情報』を得ることができる。その結果取得する『情報量』が多くなり、その中で取捨選択する。『ツイッター』はリストがあるのでそれができます。


リストの中にある人達は、接触回数が多くなるので、覚えてもらえる確率が高くなります。


けれど、『インスタグラム』はリストがありません。なので、フォロワーを増やしたはいいけれど、あまり興味の無い写真たちが流れてくるという現象になります。


そうすると、たぶん、先ほどのようにハッシュタグをタップして、自分の興味のある写真にだけにします。


先ほどの例でいうと#フードをタップする、、、つまりこれはイコール食べ物に興味がある人ということであり、もし、食べ物屋さんがこのタグをつけて投稿していたら、興味のある人にアプローチできたということになります。


食べ物に興味がある人なら、気に入った写真を投稿した人がどんな人かプロフィールを見て確認する可能性が高くなる。芸能人でもないかぎり、アカウント名を一回で覚えるなんてことはないので、アカウント名を覚えるまで、これを何度も繰り返すと思って間違いがないです。


情報を出しているのは写真を見てもらいたいからではありません。柳原ベーカリーに来てパンを買ってもらいたいから出しているのです。


写真を見てもらって終わりではありません。なので、その次に繋がる情報をしっかりしておくことは大事です。でないと、骨折り損のくたびれもうけになります。」


なるほど、、情報発信と言うとつい発信して終わりだと思いがちだが、情報は発信して終わりではないということを痛感する。


「また、人をフォローするのではなく、タグをフォローするというのもあります。今回の場合#フードというのもフォローできます。

みんなが思いつくハッシュタグはフォローされる確率が高いので、表示を一回でも増やす為には投稿にどれだけハッシュタグをつけられるかがポイントになります。


これも説明するより一回投稿してもらったほうが早いですね、下の真ん中の『+』ボタンを押してみて下さい。」


言われた通りボタンを押すと、自分が撮った写真が表示された。


「これで写真を選択すればいいって事ね?」


「はい、そうです。」


了解と言いながら写真を選択した後『次へ』を押すと、下に色味の違う写真が並べられていた


「なんだこれ?」

とつい口に出すと、三木は


「これは写真にフィルターをかける場所ですね。レトロ調にしたり、青みを抑えた感じにしたり、、おしゃれを好みそうな人が好きそうでしょ?」

と笑いながら言った。


つられて笑いながら更に『次へ』を押す。


「この画面が最後ですね。最後にキャプション、、、つまり写真を説明する文章を書きます。そして忘れてはいけないハッシュタグを打ちます。試しに#パンと打ってみて下さい」


言われたとおりにやると、#パンの横に投稿223万7800と書いてある。

そしてその下は#パンケーキ 投稿244万4356


「この数字がこのハッシュタグタグが付いた投稿数になります。

ハッシュタグで見つけてもらわなければならないので、みんなすぐ思いつくであろう#パン、#breadは絶対つけておく必要がありますね。#パン屋もですね。

この#パン部、#パン活 #パン作りもつけておきましょう。


#パン、#bread、、、これで全国のパン好きは見てくれる可能性がありますけれど、どこで売られているか場所が解らないですよね。この街の名前、、そして、この商店街の名前のタグも打っておきましょう。店名も打たないと、、、あと、フランスパンの写真を撮ったら#フランスパン、あんパンの写真を撮ったら#あんパンをつけるのを忘れてはいけません。」


「なんか、なんでもタグにするんだな。」


「はい、『インスタグラム』のキャプションはタグしか打たない人も珍しくありません。

『#仕事終わりでクタクタ』、とか『#なのに2駅歩いて来た』とか、『#だからビールがうまい』とか、感情もタグにしてしまう人も珍しくありません。


そうそう、投稿する前に位置情報で柳原ベーカリーも選んでくださいね」


「なんか、一つ投稿をするのに結構大変だな」


「そうですね、だからこのタグの部分で良く使うところは単語登録してしまいましょう。『いんたぐ』と売ったら、#パン、#bread、#パン屋、#パン部、#パン活 #パン作りそしてこの街とこの商店街、柳原ベーカリーのタグに変換できるようにしておきます。」


「そんなことできるの?」


「はい、ちょっとiPhoneをお貸しいただけますか?」


三木にiPhoneを手渡すと、こちらに画面を向けながら説明を始めた


ここですね、iPhoneの設定から一般をタップして、キーボードをタップ、そしてユーザ辞書、右上の『+』をタップして『単語』の所に表示したいタグ、#パン,

半角あけて#bread、そしてまた半角開けて#この街の名前、、、、、

そして、『よみ』のほうに『いんたぐ』といれて保存、、、、、、はい、これで出来ました。


やってみてください。


再びインスタグラムの画面に戻り、”いんたぐ”と打つと、ハッシュタグの羅列が表示された。


「すげえ!」


「最後に連動ですね、下のフェイスブックのところと、ツイッターのところをオンにしてください。」


オンにすると連携していいかの画面が出てきて、連携を許可した。

ボタン部分が緑色に変わる。


「これで連動できるってこと?」


「はい、そうです。」


「連動は大事です。インスタグラムは先ほども話しましたが、『ツイッター』のリツイート、『フェイスブック』のシェアにあたる拡散する機能がありません。

そうすると、手軽に発信する分母を増やすということができないので、その機能の部分を他のSNSにゆだねざるを得ません。


以前お話ししたとおり、一人に依存する情報発信のスタイルは昔のやり方で、SNSの『情報』の出し方としては正しくありません。

『100人が100人に対して出す』複数の人間が『情報』をだすから意味があるのです。私が覚えていて欲しいと言ったキーワードを覚えてます?」


「『ファン』と『仲間』だろ」


「そうです。このインスタグラムでも『ファン』と『仲間』は出来ると思います、しかしながら、たとえばフェイスブックなら遠方に住む『ファン』も『仲間』も、シェアと言う形で情報拡散を手伝うことができます。


けれど、その機能がないインスタグラムの場合、発信する分母を増やすためには、ここにこさせてパンを買ってもらい、写真を撮ってもらわなければいけない、、、つまり、、『集客』がいる。

集客に使いたいのに、最初に集客がいるって、なにかおかしいですよね、、、


そういう意味では『インスタグラム』だけで使うと、商業的にはあまり使い易いツールではありませんね。


ただ、『インスタグラム』は先ほども話したとおり、若い女性が利用していることが多いですし、これはフェイスブックを使っている層より若いのでより多くの人に情報がアプローチできるということになります。


フェイスブックは連動しているので、同じ情報が載せられるし、発信ツールが一つ増えるわけですから、やっておいて損はないですね。


ただ、これで『ツイッター』、『フェイスブック』、『インスタグラム』と三つのSNSを管理することになります。大変にはなりますが、返事だけは確実にしてくださいね。


いつも言っていますが、このインスタグラムの先には『人』がいます。

小売店は『人』の扱いが軽い大手と逆なことをしなければならない、つまり『ファン』を作るために投稿しているわけですから、それを忘れてはいけません。


投稿はスマホでしかできませんが、返事はPCからでもできます。」


そういうとPCでインスタグラムと検索し、ログインをすませた。

PCの画面には投稿のボタンこそないけれど、スマホと同じ画面が映っていた。

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