第3話 浪人生のお勉強

アサノがプルプルと震えている。

先日受けた模試の結果が返ってきたのだった。

「よっしゃぁ!偏差値10上がったでぇ!」

うれしさのあまり両拳を突き上げているが、大したことはない。

国語の偏差値38から47へ上がっただけであった。

「お前マーク試験やから偶然当たっただけやろ。」

そういうタチバナも偏差値50もない。

この二人、同じ高校の出身であるが、実は入学時の偏差値はなんと67である。

「タチバナって昔めっちゃ賢かったのになんで成績落ちたん?」

偏差値を10伸ばして頭がお花畑のアサノが傍若無人に聞いてくる。

「うるさいわ!それはお前も一緒やろが。」

全くその通りであるが彼らについてはここでは語らないことにしよう。

そこに一人の女性が通りかかった。

「おっ、ハシモトやん。模試どうやったん?」

アサノは人の結果が気になって仕方がないようだ。

「そんなん言わへんわ。」

「なんでやねん。どうせええ結果出てるんやろ?」

「アサノくんよりかはいい自信はあるけどね。」

ニヤニヤしながら返す。

「うっわ、腹立つ。偏差値10上がったもんね。」

アサノはもうこれしか言い返せることがないようだ。

ハシモトはアサノの中学時代のクラスメイトである。

違う高校に進学したが、予備校で再会した。

「ハシモトいつも数学の点いいけど、どんな勉強してんの?」

その質問にはたまらずタチバナも反応した。

アサノ、タチバナは数学を大の苦手としていたからだ。

「せやなぁ、アサノくんらは文系やろ?

 しかもかなり苦手ぽいからやっぱテキストからコツコツやるしかないで。

 ある程度できるようになってから、市販の問題集やってみ。」

「ほんと頼りにしてます。姉さん。

 今度質問に行きます。」

「先生んとこ持っていけや。」

アサノのしょうもないボケに突っ込まざるを得ないハシモト。

浪人生の生活は今日も平和であった。

 

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浪人生活 こまいくみ(20代 男性) @koma193

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